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私たちは何ができる?「虐待について、教えてください」犬山紙子さんがトークショー で考えたこと

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東京・目黒で起こった児童虐待事件に端を発して、「♯こどもの命はこどものもの」のハッシュタグで虐待問題へのアプローチをしているエッセイストの犬山紙子さん。7月上旬、夫で漫画家の劔樹人さんと共に『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』の著書がある作家・石井光太さんを招いてトークショーを開催しました。

テーマは、「虐待について教えてください!」。犬山さんが語った“虐待事件について感じていること”は、多くの人が同様に感じていることかもしれません。トークショーの内容を一部ご紹介します。

「虐待のニュースを聞くたびに、無力感に襲われました」(犬山)

―多くの児童虐待の現場を取材してきた石井さんの、「加害者の親たちは“子どもを愛していた”と口を揃えて言うんです」の言葉に、首をかしげる犬山さん。

石井:虐待のあった家族の写真には、一緒にお風呂に入り、ケーキを食べたり……、普通の家よりも家族団らんしているんです。しかし、その3カ月後には、子どもをゲージに入れて閉じ込めて虐待し、死に至らしめています。

その背景には、本人が抱えている問題があり、成育歴だったり、常識のゆがみがある。精神疾患を抱える人もいます。

犬山:虐待のニュースを聞くたびに、無力感に襲われました。私も何かしたいけれど何もできないので、虐待した親に対して怒りをぶつけていました。

“こいつら鬼畜だ、同じ目に遭えばいいんだ”と……。児童相談所を責めたりもしました。

でもそれだけじゃ意味がないんですね。愛していたとしても、その愛し方がおかしかったわけで、方法を知らなかったわけで、頼れる人がいなかったわけで、適切な治療をうけてこれなかったわけで……。例えば親から同じようにされてきたら、自分もそれが正しいと思ってしまうこともある。もちろん犯罪であることには変わりない。でも虐待親を責めるだけでは解決しない。その人の背景にあるものを見なければいけない。

「人の暴力は形を変えて現れる」(石井)

―虐待という事象の奥にある事情は重く複雑で、人それぞれに違いがあり、そして、虐待をされた経験がある人が、またその子どもに虐待をしてしまうというケースもあるそうです。

自分が虐待されたというトラウマを抱えて生きる人も少なくないのです。

石井:僕は、虐待してしまうのは、ずっと持っていた爆弾が、なんらかの拍子に爆発してしまった結果だと思っています。不幸な境遇によって抱えてしまった爆弾は、さまざまな形となって周囲に現れます。

それが小学生なら、いじめ。中高校生ならば、暴力事件となって少年事件になる。成人したら、彼女や奥さんに向いて、デートDVやDVになるかもしれない。そしてそこに子どもがいれば、児童虐待になるわけです

犬山:ハッとしました。私たちは、その人の人生を横に切って、虐待はひどい、と叫んでいましたが、当たり前ですよね、人生ってずっと地続きで、ずっとそれまで何らかの問題を抱えていたわけですから、その事象だけをとらえて、その人が悪いとは言えないんですね……。

石井:社会福祉も同じで、今起こった事件に対して、一生懸命、絆創膏を貼っているような状態なんですよ。

犬山:対処療法でしかないんですね。

石井:虐待の根本的な解決になっていないし、虐待が減ったとしても、またどこかで、DVといった形で出てくるかもしれないのです。

 

-また石井さんは、虐待された人がまた虐待をするということでは決してなく、トラウマは変えられる、力強く話しました。その経験を当事者として語り、被害者を支える活動をしている方もいるといいます。

犬山:そう言った話を聞くととても勇気が湧きます。自分がが被虐者だったからこそ、何が支援で必要なのか見えることもたくさんありますよね。私も動くことで結果自己肯定感が高まりましたが、そうやって誰かを支えることで自分が救われるということもあるんですよね。

私たちにできることって何?

犬山:今危険にさらされている子どもたちを、危険から遠ざけ、その子たちが愛情あるところで育ってほしいけれど、その反面、リスクのある人たちの根本に対するアプローチをしていかなければいけませんね。選挙に働きかけで議員さんや国を動かすというのも、ありますが、私たちに今、できることってありますか?

石井:それぞれの人がそれぞれの立場で、子どもと向き合うことでしょうね。

例えば塾の先生は、子どもの成績を伸ばすことが目的だけれども、ひょっとしたらその子は何日も同じ服を着ていたり、親をいくら呼び出してもこない。そんなときは虐待が疑われるケースもある。虐待防止は児童相談所や警察がやればいい、ではなく、隣人や周囲の人たちが当事者意識を持ち、虐待情報がスルーされることなく、みんなで共有できるようにしたらいいと思いますね。

劔:しかし他人の生活に首を突っ込むのって難しいですよ。僕が子どもに声をかけたら警戒され通報されるかもしれません。

石井:確かにそうです。でも一人一人がやるしかないのではないかと思っています。

犬山:その人にあったやり方もあるはずですね。PTA活動をやっている人なら、そちらの活動で社会とつながる。Twitterで“やばい!子どもをなぐりそう”などという投稿もあったりします。児相には電話できないけれど、SNSでは書けるという人もますよね。みんなが時代に合った方法を使ってSOS発信する人もいる。それを得意な人が拾って、その人の話を聞いて、行政に繋げることができるかもしれない。

私の場合はメディアで情報発信して広めていくことができるので、それで、たくさんの人に問題意識や必要な知識をリーチしたい。

 

痛ましい事件のニュースを見るたびに「何かできることは?」と思いながらもなかなかアクションが起こせないまま……という方も多いかもしれません。でも、この問題についてまずは理解しようとしたり、大きな活動ではなくても、自分の生活の中で気づいたことをだれかに共有したり。そうした小さな一歩を積み重ねていくことが、私たちにまずはできることなのかもしれません。

 

構成/樋田敦子

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