何も大きな公園や大自然のある山に遠出しなくたっていいのです。近所の小さな公園にだって、出会いと発見はいくらでも落ちているものです。……あ、でもちょっと待って。出かける前にこの絵本を読めば、「魔法のスパイス」が効いて、小さなお散歩が大冒険に変身してしまうかもしれませんよ。
自然の中を自由に歩く楽しみが詰まった絵本『14ひきのぴくにっく』
『14ひきのぴくにっく』(童心社) 作/いわむらかずお
今日は、なんていい天気。14ひきは家族みんなでピクニック!おにぎりと水筒を入れて、リュックをしょって出発です。森には春の光があふれています。ほら、えながのあかちゃん生まれたね。見て!すみれの花も見つけたよ。野原に出ると、どこまでも青くて広い空。たんぽぽのフワフワ綿毛、どこいくの…?
「おとうさん おかあさん
おじいさん おばあさん
そして きょうだい 10ぴき。
ぼくらは みんなで 14ひきかぞく。」
そんなフレーズで始まる、いわむらかずおさんの代表作「14ひき」シリーズ。本作の舞台となっている季節は春。明るい陽射しの下で発見できるのは、ぜんまい、やまぶき、ふでりんどう。そして、ちょうちょやバッタ、ヒキガエルにかえるの卵!ページをめくるたびに驚きの連続、まるで本当に一緒にピクニックに出かけているみたい。そして、お待ちかねのお昼はたんぽぽのはらでお弁当。もちろん14ひき家族で輪になって。なんて気持ちの一日なのでしょう。
発売から30年以上も経った今も、ずっと子どもたちを夢中にさせているのは、何と言ってもその美しい風景! 優しい光を浴びた森の木々や、一つ一つ形も色も違う草花。そして、その風景のここかしこに隠れている愛らしい生き物たち。それらを、子どもたちは、まるで自分で発見したかのように得意気な顔をしながら教えてくれるのです。その臨場感の秘密は、小さなねずみ達の視点で描かれているということ。言葉はシンプルに、絵の中へ誘導する役目を負っているのみ。子どもたちは、思う存分、その絵の中の風景を満喫します。
自然の中での暮らし、大家族で過ごす日常。当たり前だったこの景色も、今では「憧れの生活」になっているのかもしれません。でも、だからこそ、14ひきのシリーズを読んだ体験は、子どもたちの心の中に残っていくのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※『絵本ナビ』より引用
【読者の声(『絵本ナビ』)より】
春を体で感じてみよう
「14ひき」シリーズは、何度読み返しても楽しい絵本です。
このピクニックで描かれているのは春。今の季節にピッタリの絵本です。
14ひきは、お弁当を持って、野原へ出かけます。季節は春、野原に行く途中も、春を感じさせる自然が一杯です。息子も「ここにカエルがいる! ここにはテントウ虫が隠れているんだよ」と昆虫を指さして、自慢げに教えてくれます。
子どもに、この絵本のような自然を体験させてあげることは、無理かも知れませんが、虫や植物、日常のほんの小さなものでも、季節を感じることができることを教えてくれる絵本だと思います。
(ウルトラのぱぱさん 40代・パパ 男の子5歳)
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すぐお散歩に出かけたくなる絵本『じっちょりんのあるくみち』
『じっちょりんのあるくみち』(文溪堂) 作/かとう あじゅ
団地のすみに住んでいる小さな小さないきもの「じっちょりん」。彼らは花びらや葉っぱを食べるけど、種だけは食べないでとっておきます。そして、その種をコンクリートの隙間や電信柱の根本などに植えてまわるのです。ああ、散歩の途中、あんなところに、こんなところにそっと咲いていた雑草を楽しめるのはじっちょりんのおかげだったのですね。こんなお話を読んでしまったら、今度のお散歩の時には細かく細かく色んなところを覗いてしまうに違いありませんね。
ちょっと視点を変えるだけで、いつものお散歩が大冒険に! 愛らしく咲くお花やたくましい雑草たち、そして春が来て喜んでいる小さな生き物たちがきっと話しかけてきてくれるはずですよ。
【参考】