わたし、ひとりでいける!『はじめてのキャンプ』
『はじめてのキャンプ』(福音館書店)作・絵 / 林 明子
小さい女の子、なほちゃんは何歳くらいでしょうか。なほちゃんの友達、お隣のともこおばさんのうちへ遊びに行くと、大きい子どもたちとキャンプのお話をしています。すると、なほちゃんは目をきゅっとつり上げて言うのです。
「わたしも いく!」
すると、大きい子たちは口々に言います。
「ちっちゃいこは だめ!」
ちっちゃい子は重い荷物を運べないし、すぐ泣くし、暗いところを怖がるから。そうだよね、なほちゃん。夜、ひとりでおしっこに行けるのかな?だけど、なほちゃんは言います。
「わたし、ひとりで おしっこにいける!」
そうして、みんなと一緒にキャンプに連れていってもらえることになったなほちゃん。重い荷物だって頑張って運ぶし、川で転んだって泣かないし、薪だって一生懸命探します。夜になると、楽しいキャンプファイヤー。そしていよいよ、寝る時間がきて…。なほちゃんは、約束通りちゃんとおしっこにひとりで行けたのかな?
小さいなほちゃんが大きな子に負けじと健気に頑張る姿。読んでいれば誰だって愛おしくなって、応援したくなるこのお話。強がっているなほちゃんですが、やっぱりまだまだ幼い女の子。本当は泣きたいし、怖いし、一人きりで出来ることもあんまりありません。でも、そんなことはみんなわかっているんですよね。大きな子たちも、ともこおばさんも。その上で、しっかりと見守り、さりげなく手助けしながら、なほちゃんに少しずつ自信をつけてあげているのです。
お話は少し長いのですが、全部のページに絵があって、言葉もシンプル。そして何より、なほちゃんの表情から心の動きがよく伝わってきて、なほちゃんと同じくらいの子どもたちでもきっと共感できるはずです。たった一日と一晩のお話ですが、林明子さんの手にかかればこんなにも心を捉まれる物語になってしまうのですね。もちろん、大人だって何度も胸がキュンとしちゃいますよ。
さて、なほちゃんにとっての「はじめてのキャンプ」がどうだったのか。それは裏表紙のなほちゃんの晴れやで自信に満ちた表情を見ればわかりますよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※『絵本ナビ』より引用
【読者の声(『絵本ナビ』)より】
4歳の娘にピッタリでした
お兄ちゃんと同じ事ができる!と信じてやまない、うちの娘。なほちゃんの気持ちが、すごくよくわかったのでしょう。最初っから最後まで、今までにない集中力で、絵本に入り込んでいました。 そうはいってもさすがに一人で夜のトイレに行くのは難しいミッションです。でも、なほちゃんはやり遂げました。暗いのが嫌いなうちの娘にとってこのなほちゃんの勇気ある行動は、自分のことのように嬉しく感動したに違いありません。読み終えた後、いつになくテンションが高く、興奮気味でした。 娘にこんなにもぴったりの本に出会えて、本当にラッキーでした。等身大の女の子の話、今後も探してみようと思いました。ページは多いけど、とっても読みやすい本でしたよ。 (ぽめらにーさん 30代・ママ 男の子7歳、女の子4歳)
ぼくだって、いけるもんと言ったけど…
小さい自分が、少し大きなお兄ちゃんやおねえちゃんと一緒にキャンプにいくことになった。我が家の息子も、「僕もパパとキャンプしたとき、大きな木を拾って、こうして折って、火をつけて…」となぜが、主人公の子にライバル心。夜になって、恐い話を始めた頃から、やはり「夜は、一人ではこわいなあ…。おしっこだって一人だし、暗いし…。」さて、我が家の息子も、さっきまで、この子のことを弱虫だの言っていたけれど…自分のことのように真剣でした。夜をひとりで制覇するのは、なかなか大変なようです。そして、テント内に戻ってきたとき、お姉さんが背中をぽんぽんとたたいて寝かしつけてくれた安心感。気が付くと我が息子は、私の膝の上。まだまだ、他人の中でキャンプデビューするのは、早いようです。 幼稚園で、先生に読んでもらったことがあり、知っていた本ですが、どきどき感は、今も残っているみたいです。 子どもの成長が分かる本ですね。 (キヨタクンさん 40代・ママ 男の子5歳)
「おばあちゃんのおうちに ひとりで おとまりにいきたいな」
エイミーは、ひとりでお泊りに行く事になりました。三泊も!大丈夫なのかな。
自分のかばんに荷物と、それから大事な「たからもの」を三つ入れて出発です。
おばあちゃんのうちでは、古いおもちゃの棚を片付けたり、公園でアイスクリームを食べたり、大きなケーキをつくったり。なかなか楽しい時間を過ごします。
だけどやっぱり夜になると…ね。ちょっぴりさびしくなったエイミーは、家から持ってきた「たからもの」をそっと取り出すのです。
小さな女の子の初めてのひとりでのお泊り。
「自分ならできる」という強気な気持ちと、「やっぱりおうちに帰りたいな」という不安な気持ちの間で揺れるその心にちょこっと魔法をかけて、素敵なファンタジーのお話に彩ってしまったのは、イギリスを代表する児童文学作家のフィリパ・ピアスと人気絵本作家のヘレン・クレイグ。児童文学ファンなら胸が躍ってしまう組み合わせです。
「子どもだけに流れる特別な時間」というものをとても丁寧に大切に描き出しながら、日常の生活の中で、少しずつ、でも確実に成長をつづけていく子どもたちの背中をそっと押してくれます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※『絵本ナビ』より引用
「ひとりでできた!」この達成感、充実感こそが、次の成長につながる大事な感情ですよね。無理せずゆっくり、一つずつクリア出来るようにそっと見守っていくのが、私たち大人の大事な仕事です。
今回おすすめしたこの2冊。気になった本がありましたら、ぜひ読んでみてくださいね。
【参考】