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「我慢できずに離婚」も「我慢して結婚継続」も…。母親同士助け合いながら、がんばっていこうぜっ【ママはキミと一緒にオトナになる#32】

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コラムニスト・ライターとして活躍する佐藤友美(さとゆみ)さんが、10歳の息子との会話を通して見えてきた新しい景色、新たな気づきなどを伝えてくれる連載エッセイの第32回。

離婚したら、子どもがかわいそう

「離婚なんてするもんじゃない。我慢して、我慢して、なんとか添い遂げるのが、夫婦ってもんだよね」
と、目の前で飲んでいる先輩の男性が言う。

緊急事態宣言がとけ、こんなふうに集まって飲むのは一年ぶりだと言っていた。声が大きくなっているから、だいぶ酔いがまわって楽しくなっているのかもしれない。
「どうしてですか?」
と、私の隣の若い女性が彼に聞く。
「だって、離婚したら、子どもがかわいそうじゃない。お前の親は離婚したんだって、後ろ指さされるよ」
と、その男性は続ける。
隣の女性は、その回答を聞いてちらっと私の顔を見る。もちろん、この場にいる全員が、私がシングルマザーであることを知っている。

私はその話を、おもしろいなあって思いながら、ほくほく聞いていた。こういうクラシカルな意見は、普段、歳下の人たちとばかり話しているとなかなか聞けない。つい、取材者の気持ちになってしまい、よせばいいのに、口をはさんでしまう。

「そういうものですかねえ。息子の小学校のクラスにも、シングルで子育てしている人ってまあまあの割合でいるので、それほどレアな感じじゃないですよ。親の離婚って、みんな自然に受け止めているようですけれど」
というと
「いや、それは、たまたまだよ。僕の子どもが通っている○○地域の学校には、離婚した親はひと組もいないよ。だって、親が離婚したら、有名校を受験させるにもいろいろ不利じゃない?」
と、おっしゃる。
「なるほど、そういう考え方もあるんですねー」
と私が言ったので、その場はそれで終わった。私は、心底、「なるほど、そういう考え方もあるのか!」と、思っていた。

帰り道、後輩の女性が
「さとゆみさん、どうしてあそこで話をやめちゃったんですか?」
と聞いてきた。
どうしてだろう。

「意見が違う人と話しても仕方ない」と思ったわけではない。むしろ、酔っていなければ、もうちょっと話を聞いてみたかった。その方の価値観を支えているエピソードを知りたかったし、私自身の価値観も洗い出し直してみたかった。
「でも、いかんせん、酔ってたしねえ」と答えて、私はその日、帰宅した。

私たちは、似たり寄ったりの星に住んでいる

先日も似たようなことがあった。

そのときは、やはり私の離婚を知った知り合いが、「でも、さとゆみは離婚してよかったかもしれないけれど、子どもがかわいそうじゃない?」と言ったので、私の友人がブチ切れて、「親の仲が悪いって、いつも泣いてるあんたの家の子どものほうが、さとゆみの家の子どもよりもよっぽどかわいそうだ」と応戦し、軽く修羅場になった。

「子どもは意見できる立場にないのだから、親が我慢してでも家庭を守るべきだろう」
VS
「子どものためって親が我慢することが、本当に子どものためなのか?」
と、二人の話はとまらない。

槍玉にあがっている当の私はというと、「喧嘩をやめて〜。二人をとめて〜」という歌が頭の中をかけめぐり(古い)、ついくすっと笑ってしまったので、余計、二人を怒らせてしまった。

「あんたの話なんだよ!」
と、双方に睨まれ、「あ、ごめんなさい……」ってなったよね。
うん、ごめんなさい。
私〜のために〜、争わ〜ないで。もうこれ以上。

とまあ、冗談はさておき、こういう話になったときにいつも思うのは、「ほんと、いろんな考えがある」ということに尽きる。
私は私なりに考えて、シングルの道を選んだつもりだけれど、同じように真剣に考えて結婚生活を続ける人もいる。

この話を、もう少し考えてみたい。

「我慢できずに離婚 or 我慢して結婚継続」の二つは、近いところで見ると、まったく逆の意見に感じる。
けれど、少し離れた視点から見ると、「できるだけ幸せに生きていきたい。そして、自分の子どもも大事!」という点で、私たちは似たり寄ったりの星に住んでいると思う。

だから私たちは、それほど対立しているとは思わないし、子どもを育てる(できれば元気に幸せに育ってほしいなあって思いながら育てる)母親同士、いろいろ助け合いながら、がんばっていこうぜって思う。
こんなに子どもを大事に思っている母親同士、目の前の選択のたったひとつの違いで、敵対する必要なんかない。

うまく言えたかどうかわからないけれど、そんな気持ちを、伝えた。

ケーキが出てきたころには、すっかり穏やかなお茶会に戻っていて、
「あ〜あ。タイムマシンを使って10年後くらいに行ければいいのにな〜。そうしたら、何が正解かわかるのに」
と、一人が言った。

でも、多分、子育てに間違いも正しいもないんじゃないかなって、私は思う。
10年後、その子が幸せだったとして、20年後は? 30年後は? その子が死ぬ間際は?
いつの時点が幸せだったら、子育てが正解だったって、言えるのだろう。

子育てに間違いなんてないし、正解だってない

私は仕事がら、人にインタビューをすることが多い。それで思うのは、人は「過去を簡単に塗り替える」ということだ。

たとえば、挫折ばかりくり返しているときは、「こういう親に育てられたことが、自分の人格形成によくない影響を与えている」と語る。
でも、成功に転じたら、「そんな親に育てられたからこそ、人とは違った物の見方ができるようになった」と語り出す。

その逆だって、ある。
人生がうまくいっているときは、「親がたっぷりと愛情をかけて育ててくれた」と語っていても、あるとき大きな挫折を経験してそこから立ち直れなかったら「過保護に育てられてきたツケがきた」となったりする。

結局、過去が「正解だったか」「間違いだったか」を決めるのは、いつだって現在の自分なのだ。そしてそれは、しばしば、オセロをひっくり返すかのように、あっさりひっくり返る。

何が言いたかったんだっけ。
そうそう。だから、子育てに間違いなんてものはないし、正解だってないんじゃないかなって思う。
そして、それが間違ってるとか、私のほうが正しいとか、仲間たち同士で争う必要もないんだと思う。

ただ、いろんな意見を交換しあって、なるほどそういう考え方もあるのかって思って、自分の視界は広くしておきたい。そして、一度決断したことでも、違う考え方に触れて感化されたら、ほいほい尻軽に乗り換える適当さも持ちたい。

だからこれからも仲良くしてほしいし、私と違う意見もいっぱい教えてほしい。
って、小学校の女の子のようなセリフを言ったりして、その日は宴もたけなわ、お開きになったのでした。

青春か。

 

画・中田いくみ タイトルデザイン・安達茉莉

◼︎連載・第33回は11月28日(日)に公開予定です


佐藤友美(さとゆみ)

ライター・コラムニスト。1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経てファッション誌でヘアスタイル専門ライターとして活動したのち、書籍ライターに転向。現在は、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆する。 著書に8万部を突破した『女の運命は髪で変わる』など。理想の男性は冴羽獠。理想の母親はムーミンのママ。小学4年生の息子と暮らすシングルマザー。

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