個性的な声だからチャレンジ出来たヴィラン役
nullこの映画の敵役、ヴィランであるジンクス。アニメーションらしく表情を豹変させたりテンションが急に上下したり高笑いしたり、声を吹き替えるのはいかにも難しそうな役ですが、MEGUMIさんはイキイキと演じられています。声だけを聴くと、こんなに特徴的だった?と驚きますが、ご自身の声について、どんな思いを抱いてきたのでしょうか。
「むしろ、普段から特徴的である気がします。顔より、声で私とバレることが多いです。低くてイヤだな……とコンプレックスでもありました。もっと高い声に生まれたかったなと」(以下、「」内MEGUMIさん)
ジンクスは、ショービジネスを目指しながらも挫折して犯罪グループの一員になるという陰を抱えた役。その低い声がピタリとハマります。
「敵役がフィットしていると、私も思います(笑)。声に抑揚のあるキャラクターなので、自分の声を活かし、これまでにやったことのないようなチャレンジが出来たことが面白かったです。ヴィランって楽しいです。実写の映画やドラマとはまたぜんぜん違い、台詞も実写ではありえないものだったりします。自分とはかけ離れた人格、まあねこなので‟ねこ格”なのかもしれませんが、だからこそそれを演じるのは面白い。
それでいて、フランス語で歌うシーンは難しかったです。フランス語の台詞なんて初めてでまったくしゃべれなくて追い込まれました。こういう口の開け方なんだ! そんなところから未知のことが多すぎて……。とても勉強になりました」
ジンクスという役について、どう解釈して演じたのでしょう?
「若い頃の挫折みたいなもの、思っていたことと違ってしまうというのは誰にでもありますよね。良くも悪くもそこを原動力にし、次の世界に行こうとする。
ジンクスの場合、こじらせて復讐に進んでしまいますが、分かるかも……という面もあります。別に悪人だからではなく、傷ついて、次に行こうとしている。そこを大事にしたいと思いました。その人間味、というかねこ味を。チャーミングだったり、いい奴じゃん!というところがあったり、ちょっと間抜けでカワイイじゃん!というところも大切に」
ガーフィールドはとにかく怠惰な怠け者、運動不足でラザニアが大好き! 食べたあとはうとうとと寝てしまう……。人間に置き換えたら、かなり問題がありそうな生活スタイルです。美の専門家でもあるMEGUMIさんなら、どんなアドバイスをするでしょう?
「ガーフィールドに、アドバイス!? ……なるほど。まあ酵素を飲んでいただいて。朝起きたら檸檬水を飲み、たまに運動していただければいいかも!」
突飛な質問に笑いながら、大真面目に乗ってくれるMEGUMIさん。
「ガーフィールドって、実写で人間が演じようとしたら現実味がなくて、作品にしづらいキャラクターだと思うんです。アニメだと、究極に怠惰なところもカワイイ。ジンクスも復讐に手を染めるけれど、やっていることは、ミルクをあげない!とか言ってなんかカワイイ。アニメーションだからこそ描ける物語ですよね」
緻密なスケジュールとコツコツとした地道な努力の両立
nullMEGUMIさんもいわば働くママ。家事に子育てに仕事に、圧倒的に時間が足りないなか、‟自分のために”という思考は後回しになりがち。そんなワーママに向けて、美のために出来ることを聞きました。
「運動がいいと思います。朝ヨガのYouTubeを何も考えないでやる――。面倒くさいなんていわず、そんなふうにただ習慣づけて体を動かすと、朝のその5分で一日が劇的に変わります。本当に変わるので、是非やっていただきたいです」
忙しい朝でも5分ならなんとか捻出出来そうですが、難しいのはそれを続けることだと感じます。
「そこはもう、腹をくくっていただくしかないです(笑)。もちろん出来ない日があってもいいのです。それで、出来た日との劇的な違いを感じてもらえれば。すると運動出来た日は、ついでに片付けもしちゃう!? とトントン拍子で進み、結果的にやらなければいけないことが早く終わるはず。そうして朝5分の運動の効果を実感したら、それをルーティン化します。
みなさん、歯を磨かない日はないですよね。しかも20分やって!という話ではありません。寝る前でも昼間でも夕方でもいい、5分ちょっと体を動かすだけで変わるのです。特に朝、固まった体を動かしてちゃんと空気を入れる。血流を促すと、うわ動ける!と実感できますから。毎日がMax、キャパ超えの日々で、それでも毎日を走りつづけなくちゃいけないママには、運動がいちばんの処方箋です」
シートマスクなどのスキンケアやマッサージ、その前にまず運動の必要性を説きます。
「もちろんそれらもやってほしいのですが、根底には、元気じゃないと美容液もぬれません」とMEGUMIさん。そんな彼女自身、人一倍忙しいはずのワーママでありながら、1,000を超える美容を試み、厳選したものを実践し続けている。そのエネルギーに圧倒されます。
「おかしいんですよ、頭が。自分でもスゴイと思います(笑)。スケジュールを見ていただけるとわかると思いますが、朝8時からあれやってこれやってという感じで。好きなんです。マネージャーも引いてます(笑)。
さっきもお化粧しながら英語の勉強をし、打ち合わせをして、美顔器を使っていました。ご飯を食べたあとで針に行ったり、今朝もYouTubeでヨガをやり、その前に企画書を書いてきました。もう気持ち悪いくらいに動いてます(笑)。もちろん休みたいときはありますし、そういうときはちゃんと休みを取り、一日に何回かお風呂に入ったりします。走るために休む、整える時間ですね。
大事なのは、スケジューリングです。3週間後までも細かく、鍼灸はこの日、ここで台詞を覚えて、洗濯を干すという予定を携帯に書き留め、それをひたすらにこなす。一日の予定を、その日に考えることはありません」
子離れしてからの方が、人生は長い
null超人的に思えるこのバイタリティは、緻密なスケジューリングとコツコツとした努力に裏打ちされたもの。子どもが15歳になって離れて暮らすいま、改めて自身と向き合うことになったそうです。
「私の場合、息子が通った幼稚園の先生が‟子どもが離れてからの人生の方が長いのだから、ちゃんと考えてね”と父母会でおっしゃったことが、そのときの自分に刺さりました。
まだ子育てが大変な時期で、それが永遠に続くように思え、先々のことなんて考えられなくて。でもそのときに初めて未来を想像して。ああそうか、いつか子どもから手が離れるんだ!と。
確かに70歳、80歳まで生きたら、子離れしてからの方が人生は長い。それで少しずつでも、働きながら子どもを育てる方が、自分のその後の人生のためにもベストじゃないか。出来ることから仕事を頑張っていこう!と思ったんです」
子育てを経験し、何十年も園長を務めてきた先生だからこその、実感がこもった言葉に心を動かされたそう。
「子どもが小さいときは、子育てしながら自分の将来のことを考えるなんて無理!と思いますけど、子どもが幼稚園や保育園にいっている間にでも少し、自分の人生を考えて何かを始めるのは、とてもいいことだと思います」
そんなMEGUMIさんが目指すのはイタリア人女優のモニカ・ベルッチと、世界的建築家の安藤忠雄。優雅でゴージャスな女優が、MEGUMIさんの歩む‟美のカリスマ”の道のその先にあるのは想像に難くありません。でも十代でプロボクサーとしてデビューし、建築を独学で学んで、文字通りに世界のトップまで昇りつめ、80歳を超えたいまも現役で戦い続ける。生きながら伝説のような建築家の、どこに心をつかまれたのでしょうか?
「すべてなんですけど……独学で建築家になられたところがまずそう。しかもその作品は唯一無二で、本当に格好いい。大病を経て五臓六腑のうちのいくつかは切除しながら、80代のいまも最前線でガンガン建築をつくりまくっています。『こども本の森』という子ども向けの図書館を私費で建設し、自らスポンサーを見つけている。やっていることのすべてに、きゃ~先生、格好いい!という感じで(笑)。
安藤さんも40代で海外に出ていったので、私も40から海外に。先生の動きにならいたいと思ってチャレンジしているところです」
文/浅見祥子 撮影/田中麻以(小学館)
【PROFILE】
MEGUMI
1981年生まれ、岡山県出身。俳優・タレント。2020年『台風家族』『ひとよ』でブルーリボン助演女優賞受賞。最近の主な出演作は『映画 おいハンサム!!』、ドラマ『季節のない街』『おいハンサム!! 2』『東京タワー』等。プロデューサーとして『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』『くすぶり女とすん止め女』等を手掛ける。昨年刊の『キレイはこれでつくれます』(ダイヤモンド社)は48万部を突破、今年『心に効く美容』(KODANSHA)を発売。
映画『ねこのガーフィールド』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)
監督:マーク・ディンダル(『チキン・リトル』)
声の出演:クリス・プラット、サミュエル・L・ジャクソン
日本語吹替版:山里亮太、MEGUMI、花江夏樹ほか
8月16日(金)より全国の映画館で公開
(あらすじ)
飼い主のジョンに愛されて、親友の犬オーディと‟幸せ太り” な毎日を送ってきた家ねこのガーフィールド。ラザニアが大好きで、月曜日とお風呂は大嫌い。そんなガーフィールドの前にある日突然、生き別れた父さんねこのヴィックが現れた! ずる賢いボスねこ・ジンクスに追われているというヴィックを渋々助けるために外の世界へ飛び出すガーフィールド。ジンクスとその仲間の狙いは? 涙あり、爆笑あり、わんぱくモフモフなニャンダフル・アドベンチャー。
映画ライター。映画配給会社勤務を経て、フリーランスに。二児の母。
『ビーパル』(小学館)、『田舎暮らしの本』(宝島社)などの雑誌、「シネマトゥデイ」などのWEB媒体で映画レビュー、俳優&監督インタビューを執筆。
『バカ卒業 ~映画「釣りバカ日誌」のハマちゃん役を語ろう~』(小学館)、『芸能マネージャーが自分の半生をつぶやいてみたら』(ワニブックス)を担当。