夫や子ども、パートナーと化粧品を共有する「シェア美容」。ハーバー研究所が行ったコロナ禍での「家族やパートナー間でのシェアに関する調査」(2021年3月)では、家族や同居男性と「スキンケア商品をシェアしている」もしくは「シェアしたことがある」と回答した人は約40%に上りました。
また、20代~70代の女性2,239名を対象としたハーバー研究所の調査(2024年2月)では、女性家族(母・娘・姉妹)との化粧品シェアに「抵抗感がない」が44%、男性家族(夫・息子・兄弟)やパートナーとの化粧品シェアについても「抵抗感がない」が29%に。
「スキンケアまたはメイクのシェアどちらかに抵抗感ない」と回答したのが24%と、シェアへの抵抗感は薄いことがわかりました。
化粧品を家族で共有する人が増えている中、女性向けの化粧品を男性や子どもが使って大丈夫なの?と不安もあります。
シェア美容の正しい使い方について、ハーバー研究所 化粧品開発部マネージャー・国府田 淳さんにお聞きしました。
男性の肌と女性の肌に肌の違いはあるの?
null年齢や環境により違いはありますが、一般的に男性は女性に比べて皮脂量が2~3倍多いですが、肌の水分量は女性に比べて3~5割ほど少ないと言われています。
20代以降は年齢とともに男性も女性も皮脂量が低下していく傾向がありますが、男性は低下が少なく、特に鼻や額の皮脂量はほとんど低下しないといわれ、皮脂量は高齢になるほど男性と女性の差が大きくなります。
「男性はシェービングによって肌を保護する役割を持つ角質層表面を傷つけてしまう場合もあり、頬からあごにかけてのUゾーンは、特に乾燥しやすい傾向にあります。男性は皮脂量が多いので、一見うるおっているように見えますが、実は男性の肌は女性の肌に比べて乾燥しやすいのです」(以下「」内、国府田さん)
「肌がべたつくのがいやだ」と、洗顔後にスキンケアをしない男性も意外と多いですが、女性より乾燥しやすい男性の肌こそ、きちんとスキンケアが必要だといえます。
夫や子どもが自分専用のスキンケアを用意するのは面倒だと、家族と同じ化粧品を使うことも想定されますが、男性や子どもが女性向けのスキンケア化粧品を使っても問題ないのでしょうか?
男性や子どもが女性向けスキンケアを使っても大丈夫?
null【男性の場合】
男性と女性の肌では、皮脂量や水分量の違いなどはありますが、肌の基本構造に関しては同じとされています。
「男性も女性同様、乾燥しやすい、脂っぽいといった肌状態が人によって異なります。しかしながら肌の基本構造は男女で違いありませんので、自身の肌状態をきちんと理解していれば、男性が女性用のスキンケア商品を使うことに問題ありません。乾燥ケアや日やけ止めなど、それぞれの肌悩みに応じて試してみるのもよいでしょう。
例えば、奥様の美容液をご主人が使っても差し支えありません。男性は年齢を重ねていくと肌に弾力がなくなって硬くなる傾向が強いという報告があるものの、この違いで美容液の肌への馴染みが大きく異なるといったことはありません。皮脂量が多い男性でも美容液は油分量が少ないものが多いため、油分量が多い化粧品が苦手な方でも抵抗は少ないと思いますし、男性が美白やシワ改善のための美容液を使っても女性同様の効果が期待できます」
【子どもの場合】
「お子さんの場合は年齢にもよります。基本的に化粧品は大人の肌に使うことを前提に開発されています。特に小さなお子さんですと、皮脂量が少なく、保湿機能、バリア機能が弱く非常にデリケートですので、大人用の化粧品やメイク品を安易にシェアすることは避けた方がよいでしょう。
10歳くらいから皮膚バリア機能が大人に近づくといわれますが、目安としては中学生以上のお子さんで、最初に腕など目立たない場所に少量で試して、特に問題なければ使っていただいても大丈夫かと思います」
美容ニーズが低年齢化してきて、女子の場合、小学校高学年ぐらいから母親の化粧品をシェアしているケースも増えています。アンチエイジングなどの母親の高機能スキンケアをシェアしている子どももいます。
「高機能化粧品も基本的には大人向けに作られており、安全性の確認など子ども向けのテストを行っていない場合もあります。そのため一概に子どもに使用しても大丈夫とは言い切れません。
大人用の化粧品やメイク品を子どもにシェアされる場合には、子どもに使用することも想定して開発されたものを選択することをおすすめします。また、どうしてもご使用されたい場合は、発売元や皮膚科専門医の方にご相談されてからの使用が良いでしょう」
化粧品の注意事項が書かれた化粧箱や袋などを家族で共有することも大切だといいます。
「化粧品によっては使用時の注意事項が記載されているものがあります。表記スペースの都合もあり、化粧品容器本体ではなく化粧箱や袋に記載されていることが多いのですが、買った本人以外は化粧箱や袋まで確認しない方がほとんどだと思われます。
安心して使用いただくためにも、化粧品の注意事項が記載されたものを共有することも必要でしょう」
子どものスキンケアはいつごろから始めたらいい?
null「生まれたばかりの赤ちゃんのときからスキンケアは必要だと考えています。お肌を正常な状態に保つには、洗浄、保湿、紫外線ケアが大切ですが、これは赤ちゃんも同じです。赤ちゃんは汗っかきで、かつとてもデリケートなお肌であるため、汗やほこりなどの汚れを毎日、お風呂で清潔にしてあげる必要があります。入浴後は、スキンケア製品を使用して水分や油分を補い、肌荒れの原因となる乾燥からお肌を守ってあげることも大切です」
赤ちゃんの肌には、ベビー向けの化粧水、ワセリン、ミネラルオイルなどで肌に“ふた”をして乾燥から守ってあげることが大切だといいます。また、赤ちゃんも外出すると日やけするので、日差しが強い時はベビーカー用の日よけを使ったり、子ども用の日やけ止めを塗って日やけ対策をしましょう。
「キッズ用の日焼け止めは家族全員でも使えます。弊社の『UVキッズジェル』は紫外線を散乱させてカットする無機粉体を使用し、紫外線吸収剤を配合していないタイプで、やさしい使い心地です。お子さんから敏感肌の方までお使いいただけます。1歳以上から肌の様子を見ながらお使いいただくことをおすすめしています。
お子さんの場合、学校で手を洗ったり、タオルで拭いたりするととれてしまうので、汗をかいた後、タオルで拭いた後など、こまめにつけ直すのがポイントです」
ボディ用のクリームを顔に使ってもOK?
null男性の中には、使い分けるのが面倒だと、ボディ用のクリームを顔にも使ってしまうことも。ボディ用を顔に使っても大丈夫なのでしょうか。
「顔は体よりデリケートで、メーカーによってはボディ向けとして作っている化粧品もありますので、ボディ向けの化粧品を顔に使うには、事前に注意書きを確認するか、メーカーに問い合わせてからお使いいただくのがよいかと思います。
一方、顔に使えるものは、体に使っても問題ありません。乳液でしたら伸ばしやすいですが、オイルについては全身に行き渡りやすくするために、お風呂上がりに少し水分が残っている状態でお使いいただくとスムーズに全身に行き渡るようになります」
「シェービング等の影響で男性は乾燥しやすいので、入浴してしばらく経つとつっぱり感が出たり、冬場には粉をふいてしまう方もいます。しっとり感が強いクリームが好きではない男性には、油分が少ない乳液や美容オイルがおすすめです。
弊社の高品位『スクワラン』は、さっぱりした使用感ですので男性でも抵抗がなく使えて、肌を保護することができます」
年齢、性別、肌質を問わず家族みんなで使えて、全身に使用OK。ボディケア、ヘアケア、ネイルケア、妊娠中のお腹のマッサージやベビーマッサージにも使えるとのこと。「シェア美容」にピッタリですね。
刺激の少ない、シンプルなスキンケアなら家族全員で使うことができそうです。スキンケアはとにかく乾燥を防ぐことが一番、これから冷房で乾燥してしまいがちなお肌をしっかり潤していきましょう。
取材・文/阿部純子 撮影/田中麻以(小学館)
【教えてくれた人】
国府田 淳さん
株式会社ハーバー研究所 化粧品開発部 マネージャー。化粧品の研究開発に従事して20年。皮膚科学的なアプローチから日々、安全で高機能、肌にやさしい商品の開発に取組んでいる。
HABA/ハーバー https://www.haba.co.jp/