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睡眠不足からアルツハイマー型認知症に?その理由はなんと…

高齢の認知症患者数がすでに500万人を越えたとされる日本。その半分を占めるのがアルツハイマー型認知症だ。アルツハイマー型認知症発症のリスクを高めるものに、睡眠不足があるという。NHKスペシャル「睡眠負債が危ない」等の睡眠情報番組にも多数出演し、『4週間でぐっすり眠れる本─つけるだけで不眠が治る睡眠ダイアリー』(さくら舎刊)の著者である早稲田大学人間科学学術院の岡島義先生に訊いた。

睡眠時間が短いのを自慢するのはもう終わり

「眠る時間は少なくても深く眠ればよい」と思っていないだろうか。6時間未満の睡眠でも問題なく心身ともに健康的に活動がこなせる人をさすショートスリーパーなる言葉もあるくらいだ。

しかし近年、ごく一部の人を除いて大多数の人にとって、睡眠の質だけでなく、絶対的な睡眠時間も心身の健康に非常に重要になることが明らかになってきた。

睡眠時間が短いと、免疫力が低下し、肥満、生活習慣病、うつ、がんなどのリスクが高まるといわれている。それだけではない。アルツハイマー型認知症のリスクも高まるというのだ。

日中の活動で脳にはアミロイドβがたまっていく

アルツハイマー病の発症原因はいまだ明らかにはなっていない。しかし、アルツハイマー病患者の脳にアミロイドβというタンパク質が集まって老人斑(アミロイド斑)を形成していることから、このアミロイドβがアルツハイマー病発症の引き金になっているのではないかと言われている。

アルツハイマー病にならないためには、アミロイドβをためない、あるいはアミロイドβを排出させる、これがカギとなる。

しかしアミロイドβは日中の活動で生み出され、脳に蓄積するものなので、完全にその蓄積をゼロにすることはできない。では排出させるしかないが、最近までその仕組みが明らかになっていなかった。

脳を除く全身には、老廃物を除去するためのリンパ組織が広がっているのだが、脳にはリンパ組織はないのである。

脳は睡眠時に老廃物の大掃除をしていた

近年、睡眠時に脳が縮み、老廃物を排出させているとの仮説が有力視されるようになってきた。脳には脳脊髄液があるが、脳が睡眠時に縮んで隙間ができると、老廃物が脳脊髄液に染み出して排出されるのだという。

つまり睡眠時、脳は休息していたのではなく、夜間の大掃除を行っていたのだ。この大掃除の時間が短くなると、老廃物がうまく排出できず、結果として脳に蓄積するとみられている。

つまり睡眠不足になると、蓄積したアミロイドβが排出しおおせなくなり、結果としてアルツハイマー型認知症になるリスクが上がるというわけである。

絶対的な睡眠時間は必要

このように、最先端の睡眠の科学の現場では、かつての「短くても睡眠の質さえよければよい」から、「ある程度の睡眠時間は必要だ」という方向に変わりつつある。

睡眠時間は脳をはじめとする臓器にとっても、大きな意味のある時間。何時間あればよいのか、長すぎてもいけないのか、質は関係ないのか、中途覚醒の場合はどうなのか……まだまだ深い解明はこれからだが、脳の大掃除にはある程度の時間は必要だろう。

2017年のノーベル生理学・医学賞は、体内の時計遺伝子とそのメカニズムを発見したマイケル・ロスバッシュ博士、ジェフリー・ホール博士、マイケル・ヤング博士に授与された。

眼の奥に中枢時計があり、そこが眠気物質のメラトニンを出すことは古くから知られていたが、時計遺伝子の発見は人間の体が概日(がいじつ)リズムで動かされていることの大きな証左となった。

現在、さまざまな臓器も体内時計を持っているのではないかとされ、それらの研究が盛んになってきていると、岡島先生は語る。臓器が時計遺伝子を持っているのなら、たとえば食事時間と生活習慣病との関係なども今後解明されてくるかもしれない。

人間の1日、いや人生の3分の1から4分の1を占める睡眠。このメカニズムを学ぶことは、人生100年時代を充実して生きることに深くかかわってくるのである。

〔あわせて読みたい〕

著書『認知行動療法で改善する不眠症』『4週間でぐっすり眠れる本』本を持つ岡島先生
取材・文/まなナビ編集室(土肥元子)

(初出 まななび 2018/03/11)

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