「病院に行くほどではない不調」を改善する
null午後さんの最新刊は漢方とそのレシピについて、ていねいに紹介しているコミックエッセイ。「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載されていた作品をまとめたものです。これまでもレシピやお片付けなど、暮らしに役立つちょっとしたお話を描いていた午後さんですが、今回の作品を描くきっかけは何だったのでしょうか?
「“病院に行くほどではない不調”に年中悩んでいるのですが、それに悩んでいる人はきっとこの世にたくさんいるはずで、じゃあみんなで少しでも良い方向に行けたら……という気持ちが動機です。また、編集担当さんに企画をご提案いただいたことも大きなきっかけでした」(以下「」内、午後さん)
これまでの作品でもレシピを紹介されていましたが、今作は薬膳に大きくフォーカスしています。午後さんが考える薬膳の魅力とは?
「身近な食材の新たな魅力やパワーに気づくことができることだと思います。今までは栄養学の側面からしか食材を見ることができていませんでしたが、それ以外にも実はたくさんの効能があることを知り、世界の解像度がまたひとつ上がりました」

オオカミの姿の理由
null午後さんは自画像をオオカミの姿で描いています。
「佐々木マキ先生の『やっぱりおおかみ』という絵本が子どもの頃から大好きなのですが、おそらくその影響を大いに受けた結果だと思います。人間の姿ではない自画像を描くとしたら……となんとなく描き進めるうちにこの姿になりました」
オオカミの姿で料理をしたり、食事をしたり、寝たり、悩んだりしている午後さん。それは老弱男女問わず、幅広い層の読者に響くようです。
午後さんの描く世界は、ライフスタイルであれ料理であれ「自分を大事にする」というメッセージが常に感じられます。「薬膳」はその最たるもの、食べるもので自分を大事にする……そういった部分が、最近の「ご自愛」ブームとマッチしているのかもしれません。
子育て世代のママパパへ、おすすめ薬膳
null最後に午後さんに、子育て中でストレスマックスなママパパ向けのおすすめ薬膳をうかがいました。
「まず、子育て本当にお疲れさまです……忙しい日々の中で、小さな命を懸命に守り育てていること、本当に素晴らしいことだと思います。
私は薬膳の専門家ではないので、お答えするのが恐縮ではあるのですが……連載の中で取り上げた食材の中では“バナナ”がおすすめかなと思います。
バナナは“寒性”の性質を持ち、体にこもった熱を冷ます効果や、体内の毒素を排出する効果があるそうです。ついイライラしてしまう、便秘がち、なんだか体がカッカとする……などのお悩みがある方に向いている食材なのだそうです。また、バナナは皮を剥いてそのまま食べられますし、忙しい日々の合間に比較的摂りやすい食材かと思います。
しかし、大きなストレスに苛まれている時は、まず自分の日々の頑張りに着目し、“私はとても頑張っている”ことを認めることが大切かと思います。とはいえ気持ちに余裕がない時はなかなか難しい作業ではあると思うのですが……、繰り返しになりますが、幼い命を守り、懸命に生きていること、それは本当に凄いことなのだと私からはお伝えしたいです」

午後さん
午後(ごご)さん
作家・イラストレーター。x(旧Twitter)でエッセイ漫画が話題となり、日々の料理や心の機微を綴った『眠れぬ夜はケーキを焼いて』(KADOKAWA刊)は現在3巻まで発売中。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」で『午後のおいしい薬膳日記』を連載中。@_zengo