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なぜ女性に「言ってくれればやったのに」は禁句か

家庭や職場で絶え間なく起こっているのが、男女間の誤解やすれ違いだ。その原因は実は脳の構造の違いにある、と説く黒川伊保子先生(株式会社感性リサーチ代表取締役)の講座では、男女の脳の特性の違いに踏み込んだ。

無意識にタンクを満タンに

以前、当サイトでは、黒川先生が解説した「共感」が女性にとっていかに大事であるかについて触れた。共感によって女性は他人の体験を自分のものにし、共感されることで安定する。女性にとって共感とはごく自然なことだ。

そして共感と同様、「察する」ことでも男女の脳は大きく違う

女性は「察する」天才だ。

小さな子どもに絵本を読んであげて寝かしつけ、スヤスヤと眠る姿にほっとして自分も床につく。だが、翌朝、子どもは熱を出し、頭を冷やさなければと冷蔵庫を開けると、なぜか氷がいつもよりも大量にできあがっている。無意識に子どもの異変を感じ、前日からタンクを満タンにしていたのだ。

だが、男性はそうではない。

長らく狩りをしてきた歴史の中で、男性にとって危険は日常茶飯事。危険に遭遇しても信号はすぐに沈静化し、次の危険に備える。共感や察することは二の次だ。

3年目で心疾患の死亡率が跳ね上がる

女性は、あらゆることを察し、察してもらえれば自分が愛されていると感じる。逆に察してもらえなければ深く傷つく。「言ってくれたらやったのに」。家庭で夫に言われてムッと来る言葉の代表だが、これもそのためだ。

リタイア後、夫婦2人で顔をつきあわせた生活が始まると、3年目の女性の心疾患の死亡率が跳ね上がるという。共感や察することがされない生活は女性にとって命に関わる大問題だ。

察する能力は職場でも大いに有効だ。特に女性が大切に思うことについてはことさらその能力は発揮される。

店舗をチェーン展開するある経営者は、悪条件にも関わらず売上が落ちない店があることに気がついた。コンサルタントに調査を依頼してもっともらしい結果を得たが、どうもしっくりと来ない。だが、現場へ行くとすぐに理由がわかった。女性スタッフたちが店を大切に運営していたのだ。

人事部で働くある女性は、優秀なエンジニアがヘッドハンティングされていると部長に告げるが「根拠は?」と問われ「直感です」と答えて相手にもされなかった。

だが、ひとりふたりと転職を言い当て、それが3人4人と続くと、ようやく部長も彼女を認めざるを得なかった。それでも「根拠は?」と言い続けていたという。

男性とはそういうものなのだ。

〔講師profile〕黒川 伊保子(くろかわ いほこ)●(株)感性リサーチ代表取締役。人工知能研究者/脳科学コメンテイター、随筆家、日本感性工学会評議員。脳科学の見地から「脳の気分」を読み解く感性アナリスト。大塚製薬「SoyJoy」のネーミングなど、多くの商品名の感性分析に貢献している。宣伝会議のコピーライター講座で講師も勤める他、「男女脳差理解によるコミュニケーション力アップ」を目的とした講座も人気。

◆取材講座:「男女脳差理解と感性マーケティング」明治大学リバティアカデミー(2017年1月26日、2月2日、9日、16日)

2017年1月26日取材

文/本山文明 写真/黒川伊保子先生、Abobe Stock

(初出 まななび 2017/04/19)

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