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映画「カメ止め」主演俳優・濱津隆之【独占インタビュー】「これからもブザマに生きていきたいと思っています」

映画『カメラを止めるな』、通称 “カメ止め”。2018年、その映画は突如として社会現象となり、その現象は劇中の重要ワードにかけ「ポンデミック」と呼ばれることになるー。

わずか300万円で製作されたこのワークショップ映画は、映画監督も出演者もほとんどが世間に名を知られていなかった。初公開は2017年11月、期間限定で公開されるはずだったこの作品はあれよあれよという間に、2018年6月に本格的に公開が決定、するとTwitterを中心に火がつき、日本映画史上稀に見る大ヒット作品となるのである。

kufuraでは、3月1日に行われる日本アカデミー賞の主演男優賞にもノミネートされている俳優・濱津隆之さんを直撃! 日本中を、世界中を魅了し始めた、彼の魅力にせまります。

4カ月前まで、朝からラブホテルの浴槽を洗うバイトをしてました

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——日本アカデミー賞の主演男優賞のノミネートおめでとうございます。今のお気持ちは?

濱津:いや、とんでもないことになったな……と。ノミネートされている方は、舘ひろしさん、役所広司さん、リリー・フランキーさん、岡田准一さんと、日本を代表する方々ばかりじゃないですか。当日、自分がどうなっているのか想像もつかないです。しかし、本当にノミネートいただいて感謝しかないですね。

——激動の1年だったと思います。ちなみにに1年前の今日は何をされていましたか?

濱津:1年前の今頃はちょうど「カメ止め」の上映が讃岐映画祭であった時期ですかね。まだ客席はまばらだったんですが、観てくださったお客さまから「面白かったよ」と言っていただけて、ホッとしていたのを覚えています。

——濱津さんの知名度はかなりあがったと思います。「売れた」って思う瞬間はありますか?

濱津:いや……(笑)、売れたなって思った瞬間は一度もないです。そういう感覚にはなったことはないんです。しいて言うのであれば、色々、幅広いお仕事いただけるようになったなぁと。

——ラブホテルでのアルバイトもお辞めになられたと伺いました。

濱津:そうなんです、去年の10月いっぱいでようやく辞めることができました。

——10月というと、もうすでに世間にカメ止め旋風が吹き荒れているころかと思うのですが、バイト仲間の方は役者・濱津隆之をきちんと認識していましたか?

濱津:バイト仲間のおばちゃんたちも、ラブホテルの支配人の方も映画も観てくださったんです。いや、ほんとにありがたかったです。

——どんなバイトだったのですか?

濱津:ラブホテルのお風呂場の清掃が主な仕事でした。浴槽をきちんと洗った後に、薄めたワックスを吹きかけて、最後はきれいに水滴を拭き上げるというのが基本工程。腰がいたくならないように、がっつり浴槽の中に入って掃除するというのが僕流です(笑)。

——なぜ、清掃バイトをしようと思ったんですか?

濱津:「そのヒゲいいね」って言っていただけることが多くて、役者をやる上でヒゲを基本形にしたかったんです。でも、ヒゲOKのバイト先ってあまりないんですよね。清掃業など、人にあまり会わない仕事だとヒゲがOKなところが多くて、で、なんとなくです。役者として食べていきたかったので、いつか辞めたいとは思っていましたが、このバイトはこのバイトでそこそこ楽しかったです。

人に笑われたり、人を笑わせたりするのが好きだった

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——大学卒業後は、NSC(吉本総合芸能学院)に入学されますよね。芸人を目指そうと思ったのはきっかけがあったんですか?

濱津:とりわけ芸人を目指してよしもとに入ったわけではないんです。大学生のときに学園祭で司会進行を担当していて、その4年間の経験がとても楽しくて、心地よかったのが忘れられなくて。人を笑わせたり、人に笑われたり、人前で何かする仕事に就きたいと思っていました。

——憧れていた芸人さんはいたんですか?

濱津:『さまーず』さんの番組はよく観ていましたが、「こうなりたい」と目指していた芸人さんというのは特にいなかったですね

——その後、お笑いから、DJとして音楽の世界に飛び込むわけですが、ここにも理由があったんでしょうか?

濱津:昔、深夜にダンス番組をやっていたのをよく観ていたんです。地元のローカル局では、ダンス大会の予選の中継なんかもやっていて。そんな流れで、ブレイクダンスというものを知り、「なんだこれは!」と。本格的にやったわけではないんですが、知り合いに教えてもらったりしていました。

その後、腰を痛めるので随分長い間ブレイクダンスはお休みすることになるんですが、あるときふと「DJもいいな」と思ったんです。元々音楽にはすごく興味があったのですが、なにせDJのやり方もわからなければ、クラブにだってほとんど行ったことがなかった。実際に初めてみたら、すごくおもしろかったんですが、やはりこれでは食べていけないな、と。

——濱津さんは、挑戦するときも、諦めるときも、行動が早いですね。

濱津:興味があって、経験できるなら経験しておきたいなってのがずっとあって。だから、興味をもったら、まずやってみるっていうのはあるかもしれません。

——「後悔したくない」とよくおっしゃっているのもそういう意味があるのですね。

濱津:後悔しかしてきてないんですよ、今まで。最初から「役者」って決めてこの道を生きている人はいいなと羨ましくなることも多いですよ。ただ、後悔を繰り返してきたからこそ、今があるというのもどこかで感じてはいます。

——色々経験してきたつながりの中で、今の役者が出てきたんですね。役者に腰をすえようと思ったのはいつからですか?

濱津:ここ何年かですかね。最初は、エキストラ会社に入ったんですけど、そのころは、役者のやの字もわかっていなかった。なので、エキストラ会社で発声の練習とか習いました。そこを出てからはずっとフリーで活動しています。

——最近、事務所の所属が決まりましたよね。今の事務所にきめた理由は?

濱津:直感です。それでしかないですね。直感というのは、「これは何かのご縁だな」っていうのを感じたというか、心が動いたというか。結局それがなければ、ずっとフリーでやっていこうと思っていました。

とりつくろわず、身の丈をふまえて、ずっと役者をやっていきたい

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——毎日習慣にしていることはありますか?

濱津:なんにもない日でも8時ぐらいには目覚ましをかけるようにしています。朝ごはんは、菓子パンとヨーグルトと牛乳です。

——平和な朝の風景が目に浮かびました。ちなみに、運動はしていますか?

濱津:してないですね。ただ、昔から少しだけヨガには興味があります。本格的なものでなくてもいいのですが、いつかやってみたいなと。ヨガの精神的な世界観にも興味があります。

——運動部経験は?

濱津:少年野球はやってましたが、補欠でした。運動神経はないと思います。

——よく見るテレビ番組は?

濱津:タモリさんとさまーずさんの番組は録画しています。先日、さまーずさんの「クイズプレゼンバラエティ Qさま!!」(テレビ朝日系)にゲストで呼んでいただきました。三村さんに「濱津〜」って呼ばれたときは感動しました。

——本は読みますか?

濱津:小説はよく読みます。文庫本ですけれど。今読んでいる本は小山田浩子さんの『工場』。裏のあらすじをざっと見て選ぶこともあれば、タイトルに惹かれて選ぶことあります。本は本屋さんで買いますね。よく行くのは、新宿の紀伊国屋。読書は基本的に移動中の電車の中です。

——1日お休みができたらどういう風に過ごすのが理想ですか?

濱津:でかけたい派です。本屋行ったり映画に行ったり、平凡に過ごすのが理想。普段も、誰かを誘うことはないので、ほとんどの休みは、たいていひとりで過ごします。

——kufuraだけに教えてくれる濱津さん情報を教えてください。

濱津:なんでしょうか……(笑)。あ、コーヒーは好きです、それも缶コーヒー。ブラックはあんまり得意ではないので、微糖を選びますね。外で飲む缶コーヒーが好きで、駅まで行く間とか缶コーヒーを飲むことが多いです。

——では最後に、濱津さんがこれからの人生で「こうありたい」と思うことがあれば教えてください。

濱津:できた人間ではないので、とりつくろったりせず、身の丈をふまえて、ずっと役者として生きたい。

ブザマなくらいが、自分にはちょうどいいかなと思っています。

取材/皆川彩乃 撮影/黒石あみ(小学館)

 

3月8日、映画『カメラを止めるな』が金曜ロードショーで放送決定

「カメ止め」がついに地上波初登場! まだ観ていないという方はもちろん、普段なかなか映画館に行けないママやもう一度見たいという方も、3月8日はテレビの前でスタンバイを。ゾンビ映画ではありますが笑って楽しめる親子映画でもあります。開始直後のゾンビ映画シーンで止めてしまわず、ぜひ後半まで、最後まで観てください!

必ずやホロっとしたり元気になったりできる映画になっています。オンタイム放送はもちろん、録画も忘れずに!

濱津隆之

1981年8月25日 埼玉県出身。大学卒業後、NSC東京校に11期生として入所。その後、DJに転身するも、4年で活動停止。30歳のときに、役者活動を開始。「カメラを止めるな」では主演の日暮隆之を演じる。3月23日に放送されるNHKドラマ「詐欺の子」に出演予定。

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