いますぐ温泉気分に浸りたい時には二つの方法
null暦の上ではもう春なのに、まだまだ街の色も着ている服も、気持ちの中でも冬真っ最中。
うんざりするような寒さの中で、今最も羨ましいのはフェイスブックなどのSNSで目にする友人たちの「温泉なう」だ。
個人的には街中の銭湯も大好きなんだけど、やっぱり大きな大きなお風呂や、大自然の中の露天風呂はいいよなあ(あと地酒やご馳走も)。
たっぷりのお湯に浸かって、「あーっ」と言いたいし、温泉上がりのあのよくわからないけれどすべすべした状態が長く状態はこの上なく幸せだ。
温泉ぐらいすぐいけるじゃない、とみんなは言うけれど、「温泉へ行く」は、何故かわたしにとって、ハードルがとても高い旅になる。
日本では「温泉」はとっても身近だからこそ「せっかく行くんだから最高の場所を…」という思いに邪魔されてなかなか計画が進まないのだ。「肌にとびきりいいところ」「ついでにロケーションもよくて」「ご飯が美味しくて」「お手ごろ価格で」なんていう贅沢なリクエストが自分の中で溢れて困る。
なんでだろう。
これが行ったことのない海外なら「どこでも大丈夫、とりあえず行ってみよう」という気持ちになるのに、温泉に関してはなんだかわがままになってしまうのだ。
その結果、その時の自分の希望を全部を満たす温泉を見つけるまでに時間がかかって気がつけばお休みがなかったり満室だったり。
それにわたしは車の免許を持っていない。だからもし「あまり人のいない、ひっそりとした山奥の温泉」に行きたくなったら、現地までの動線も色々と面倒だ。あ、あと猫がいるからあんまり遠くへは行けないし……。なんてそんな言い訳をたくさんつぶやきながら去年も今年も温泉に行けていない。
行こうと思えば簡単に行けるはずなのになかなかたどり着けない。わたしにとってそんな場所でもある。
でもやっぱり温泉は好きだ。
だからどうしてもいますぐ温泉気分に浸りたい時には二つの方法を使う。
一つ目は温泉の素を使う(みんなもそうだよね)。
ここは自宅のお風呂ではない……。どこか素敵な旅館の内風呂なのだ……。
灯りを落として、そんな呪文を唱えながら温泉の素の香りに集中してなるべく温泉気分になる。それはそれで案外癒される。なんてったって自宅にいながら日本の名湯巡りだってできちゃうのだ。
ただ問題は「温泉に入った後のあのすべすべ肌」の持続がないところだ(最近の温泉の素は、温泉成分とか保湿成分なんかも入っているけれど)。
二つ目は温泉肌になれる化粧水を使う
以前仕事先で会った美容ライターの友人に、「温泉が好きなのに行けない」自分勝手な悩みをモヤモヤと伝えていたら、同情されたのかとっておきの「温泉成分入り」の化粧水を教えてくれた。しかもものぐさなわたしにもぴったりな“オールインワンタイプ”。尊い。
オールインワンタイプにありがちなもったり感もなくて、保湿力が凄いのでお風呂上りにワンプッシュだけというのがありがたい。
わたしは美容ライターではないので、素敵な美容表現で書けないんだけど、温泉(特にとろみがあるタイプの温泉)に入った時って、思わず手のひらにお湯をすくって、何度も顔にぱたぱたと当てたりするでしょ? 普通のお湯と違ってなんかいい感じの成分が手のひらを通して肌にジュワッと染み込む感じ。あの感じが凄い近いかなー。
普通の化粧水みたいにペチペチするんじゃなくて、じーんわり肌に伝えたくなる感じというか。でも温泉同様にべたつく感じもなくて。
こんなきれいな水からできた美容液、というだけで肌にのせたときの気持ちが違う。
わたしの<今日は温泉に入ったぞ>という思い込み補正と、実際温泉成分が入った化粧水のおかげで冬の乾燥もちっとも怖くない。
今日も今日とて家で温泉気分をのんびりと味わい、肌に温泉を取り込んで、そうして湯上り卵肌のわたしは郷土料理の居酒屋さんで地酒でも少々いただく予定だ。
うん、悪くない1日になりそうだ(そして本物の温泉にはまだまだ行けそうもない)。
▶︎江原道HP
松尾 彩(コラムニスト/エッセイスト)
フリーエディターとして20年以上にわたりファッション誌、ライフスタイル誌、カタログ制作などに関わる。結婚を機に旅やライフスタイル中心のコラムニスト/エッセイストとして活動。小学館「しごとなでしこ」にて猫のコラム「ネコテキ(現在終了)」連載他、アーバンリサーチのウエブメディア「URBAN TUBE」にて”旅以上、移住未満”をコンセプトに旅エッセイを寄稿。子なし猫1匹あり。