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【谷口令の暦歳時記 5月】知りたかった「二十四節気と七十二侯」暮らしが豊かになる工夫とは

誰もが知る暦という言葉。ですが、いざ「暦って何?」と問われると答えられないものですよね。暦とは簡単にいうとカレンダーのこと。そして日本の暦には、日本の四季に合わせた二十四節気や七十二侯というものがあります。

これらは小さな季節の移り変わりを知らせるサイン。実は、この“サイン”は、暮らしを楽しむための大切なヒントといえます。これから毎月1回、国際日本文化協会理事で、風水心理カウンセラーでもある谷口令さんに、暦を意識した暮らしについて教えてもらいます。

二十四節気と七十二侯ってどんなもの?

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日本という国には、すばらしい四季があります。昔からその四季、つまり季節の移り変わりと寄り添いながら暮らしてきた日本人。ですからカレンダーに何気なく書かれている二十四節気や七十二候には、1つ1つ意味があるんですね。

さて、それでは二十四節気と七十二侯とは何なのでしょうか? 簡単に説明しましょう。

<二十四節気とは>

1年を24等分したもの。ひと月に2回あり、立春、立夏、秋分、立冬など24個の名称がある。

<七十二侯とは>

二十四節気をさらに細かく分割した期間のこと。二十四節気のように短い言葉ではなく、短文になっていることも特徴の1つ。

季節というのはいつも同じではありませんよね。春には春ならではの風と光、そして動植物があります。夏には夏の、秋には秋の……こうした季節ごとの事象を二十四節気も七十二侯も教えてくれるんです。

ではなぜこんなにも日本人は暦を気にして生きてきたのでしょうか?

暮らしが、心が、豊かになる暦

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極端な例えですが、真夏にダウンジャケットを着て出かける人はいませんし、真冬にTシャツ&ショートパンツで出かける人もいませんよね。やはり快適に過ごすには、その季節に合った服、家電や寝具を用意すること、つまり「季節に合った暮らしをする」ということが大切なのです。

季節と衣食住というのは、密接な関係にあります。だからこそ暦を知っていると、次の季節はこうだからあれを用意しておこうと準備もできますし、生活にリズムが生まれるんですね。

また、暦を大切にすることは、旬を楽しむことでもあるんですね。旬というのはすごく大切なんですよ。とくに食べ物は、旬の時季のものがいちばん栄養価が高いんです。だから暦は体にもいいんですよ。

なんだか難しいことを言っているように感じるかもしれませんが、二十四節気を季節のイベントと捉えてみればOK。季節のイベントというのは平凡な毎日の生活を活性化させますから、楽しいですよね。

七十二候は、ときに「鳥のきじが海に入り、大きなはまぐりになる」などありえない事柄も含まれていたりするので、暦初心者にはわかりにくい部分もあります。ですので、まずは二十四節気を意識した暮らしをしてみてはいかがでしょうか。

実際の季節とのズレは…

ただし、二十四節気と実際の季節ではズレを感じることも多いと思います。これには新暦と旧暦との違いなどさまざまな問題を含んでいますし、たとえば“今日が立夏だからその日からきっちり季節が夏に切り替わる”ものではありません。季節というのはゆったりと次の季節に移行していくものです。だから二十四節気の旬もとてもアバウトなんですね。でも、この大らかな季節の捉え方こそが、時間に追われる現代人の暮らしを豊かにしてくれるのではないでしょうか。

<5月の二十四節気> 

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5月5日立夏

二十四節気七番目の節、春が終わりに近づき、初夏の始まりを告げる立夏。ちょうど新緑が美しく、潮干狩りが始まる季節の到来でもあります。

梅雨入り前、風に湿度もなく、太陽の光と新緑が美しい季節。家中の窓を開け、新鮮な空気を入れてください。また、この時期、カーテンを洗ったり、暖房器具をしまう季節でもあります。新芽の植物が最盛期ですので、食卓に取り入れるのもいいと思います。

芍薬などは本当にこの時期限定の花ですので、ぜひ飾ってあの華やかさを楽しんでください。

<旬の植物>

菖蒲(しょうぶ)、かきつばた、芍薬(しゃくやく)、かたくり、皐月(さつき)など

<旬の魚>

いしもち、子持ちきびなご

<旬の野菜>

そらまめ、たけのこ

<季節の行事>

浅草・三社祭

5月21日小満

二十四節気八番目の節。立夏から15日目ごろのこと。陽気の良さが最高潮を迎え、万物の成長する勢いが天地に満ち始めることから「小満」といれるように。少しずつ暑さを感じるようになる時期でもあり、梅雨入り前の最後の気候がいいとき。だから晴天が続くときには布団の虫干しをしておくといいでしょう。

また麦が美しいグリーンに色づき始め、農家の人たちが順調に育っている様を見て安心する時期。田植えの準備をする時期でもあります。

小満は、西日本で「走り梅雨」が見られるのも特徴。走り梅雨とは、梅雨を思わせるようなぐずついた天気になること。この頃梅の実がなり始め、6月上旬には八百屋に並び、“梅仕事”の季節になります。

 

<旬の植物>

紅花、わすれな草、すずらん、ハマナス、アマリリス

<旬の魚>

キス、イワナ

<旬の野菜>

さやいんげん

<季節の行事>

全国各地のツツジや藤、芝桜の花祭り、あじさい祭り

こうして二十四節気を見ると、5月は春が終わりを告げ、夏に向けての助走が始まっているのがわかりますよね。この季節の変化を美しい言葉で表現した日本人って、すばらしい
感性を持っていると思いませんか。

さあ、来月はどんな季節でしょうか。

 


【取材協力/監修】

谷口令・・・国際日本文化協会理事、風水心理カウンセラー。学習院短期大学卒業後、東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)、日本IBM、第一生命保険などに勤務。OLの傍ら、風水気学の大家・宮田武明氏に師事。風水心理カウンセラーとして40年以上のキャリアを持ち、カウンセリング数は1万件以上に及ぶ。暦や着物など日本独自の文化を世界に伝える「国際日本文化協会」の理事でもある。

谷口令の風水学 http://www.taniguchirei.com/
谷口令の風水ブログ https://ameblo.jp/taniguchirei/

 

構成/児玉響子

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