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美文字の人はここが違う!書道家が教える「てっとり早くきれいな字を書く」秘訣

「汚文字は恥ずかしい、何とかしなきゃ!」と一念発起してボールペン字の教材にチャレンジしたものの、結局、上達できないまま挫折してしまった経験のある人は多いはず。

やはり大人になってしまった今では、もう手遅れなのでしょうか? いいえ、諦めるのはまだ早い! 会員制書道サロン「書道のはな*みち」を主宰する書道家の髙宮暉峰(たかみやきほう)先生から、きれいな字を書くためのコツを伝授していただきました。今回は、“美文字”と“汚文字”の決定的な違いをご紹介します。

美文字になるための極意とは?

汚文字コンプレックスの人に向けて、巷には多くのノウハウが出回っています。もちろん、それらがまちがいというわけではありませんが、コツがたくさんありすぎて、正直マスターしきれないと思いませんか?

また市販の教材を試してみて、「お手本を見ながらじゃないときれいに書けない」という壁にぶち当たってしまった人も多いことでしょう。

ムシのいい話ですが、てっとり早く字の見栄えをよくするシンプルな方法……実はあったのです!

髙宮先生の著書『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』のタイトルにもあるように、美文字と汚文字の決定的な違いのひとつは“まっすぐな線が引けるかどうか”。

「もちろん、字は定規で引いたような直線で構成されているわけではなく、実際に書く際はほんの少し反った線などになりますが、“まっすぐな線が引ける”という基本ができているからこそ、バランスよくきれいな字を書くことができるのです」(髙宮先生。以下「」内、同)

なぜ“まっすぐな線を引く”ことができないの?

まっすぐな線を引くことなんて誰でもできるんじゃないの?……そう思った人は、実際に10cm~15cmほどの線を引いてみてください。

字がうまく書けない人は、かなり意識しないとまっすぐにはならないし、また自分ではまっすぐ引いたつもりでも、紙を上下逆にしてみれば、バランスが崩れているのに気づくのではないでしょうか? まっすぐな線を引くくらい朝飯前かと思いきや一体なぜ!?

「手首や指先だけ使って書こうとするからです。狭い範囲でちまちま書こうとすると、線が曲がってしまいます。

まっすぐな線を引くには、手先だけ使おうとするのではなく、肘を動かしましょう。もちろん、書道で筆を動かすように、意識的に大きく動かす必要はありません。

肘を固定してしまうのではなく、書いている線の長さだけ細かく動かすとよいでしょう」

肘の重要性についていまいちピンとこない人は、自分の身近にいる美文字の人に、「まっすぐな線を引いてみて」とお願いしてみてください。筆者も試してみましたが、本当に字がきれいな人ほど、肘ごと手を動かして、すがすがしくまっすぐな線が引けるんです!

きれいな字を書くための「正しいフォーム」とは?

“まっすぐな線を引くこと”、そのために“肘を使うこと”の重要性をおわかりいただけたかと思います。

この2つを心がけるだけでも、“線の曲がった汚文字”をかなり改善することはできますが、より上達を早めるには“正しいフォーム”を身につけることも大切です。

「書道は道具を使ってからだを動かすという点で、スポーツに通じるところがあると思います。たとえば、野球の練習方法の1つに“素振り”がありますが、まちがったフォームのままバットを振り続けても、なかなか上達しないばかりか、変なクセが身につくおそれもあります。

字を書くのもこれと同じで、正しいフォームで練習することが必要です。市販の教材は、どれもよくできていると思うのですが、まちがったフォームでひたすら字を書き続けても、“無駄振り”になりかねません。まずは、きれいな字を書くための正しいフォームを身につけましょう。

正しいフォームは、1つ1つの字をきれいに書くだけでなく、全体のバランスをとるのにも役立ちます」

(1)椅子に座って書く際は、足の裏を床につける

「下半身をしっかり固定して、上半身を柔軟に動かせる状態にするのが、きれいな字を書くための基本姿勢です。足の裏を床にしっかりつけましょう。もちろん足を組むのはご法度です。

もし、会社など家の外でスカートを履いているような状態でなければ、両足はできれば肩幅くらい開きましょう。そのほうがより下半身が安定します」

(2)机とお腹の距離は“拳骨1つ分”開ける

「お腹を机にくっつけた状態で字を書く人がいますが、机とからだの距離が近すぎると、視界が狭くなって、書面の全体が見られず、バランスよく書くことができません。

机とお腹の間に拳骨1つ分の距離をとりましょう」

(3)肘(前腕)と机の角度は45度

「手首や手先だけを使って字を書く人は、縮こまった姿勢になりがちで、肘(前腕)と机の横の線の角度が30度くらいになっています。肘(前腕)と机の横の線の角度が45度くらいになるように調整しましょう」

(4)紙を少しずつ動かして、目線を一定に保つ

「全体のバランスをよく書くためには、目線を一定に保つことが望ましいです。

ただ、字を書き進めていくと、どうしても目と手元の距離が変わってきます。目線を一定に保つために紙を動かすようにしましょう。たとえば、縦書きなら少しずつ上にずらします。

通常は4文字を目安に、大切な書面で丁寧に書きたい場合は、2文字書くごとに紙をずらして適切な位置で字を書けるようにしましょう」

(5)肘は机に乗せてもいいが、すべりやすい状態にする

「肘を使って字を書くためには、肘を固定させず、自由に動かせる状態を保つことが大切です。とはいえ、これは“肘を机から浮かせた状態にしなければならない”ということではありません。

肘は机に乗せても大丈夫です。むしろ上記(1)~(4)を守れば、自然と肘が机に乗ることもあります。

肘が机に乗った状態でも、机の上で肘をすべらせることができればOKです。たとえば、長袖でなめらかな素材の服を着るなどして、肘をすべらせるようにしましょう」

 

まっすぐな線を引く。肘を動かす。正しい姿勢を保つ。てっとり早く字をきれいに書けるようになりたいなら、まずはこの3つをぜひ押さえましょう!


【取材協力】

髙宮暉峰・・・5歳より書道を始め、24歳で読売書法展初入選。書道師範になる。楽しくカンタンに字をキレイにする書道教室「書道のはな*みち」を運営。著書に『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』、『「まっすぐな線」から始めるペン字練習帳』などがある。

【参考】

髙宮暉峰(2006)『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』(日本実業出版社)


髙宮暉峰(2014)『「まっすぐな線」から始めるペン字練習帳』(日本実業出版社)

 

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