2016年から「電力自由化」がスタート。実際のところ、私たちの生活にどんな影響がある?
Q1. まずは「電力自由化」について教えてください。
A1. 2016年4月から、地域の電力会社以外の会社が参入できるようになりました。
「これまでの電気料金は国の認可制だったので、電力会社が自由に値付けをすることはできませんでした。2016年4月から地域の電力会社以外の会社が参入できるようになり、電力自由化がはじまりました。
これは、政府の認可制をやめて自由な競争をさせることを目的にしたものです」
Q2. 電力自由化によって、電気代が安くなるのでしょうか?
A2. すぐに電気代が、劇的に安くなるわけではありません。
「2017年10月現在、新しく参入した電力会社は自前の発電所を持たず、既存の電力会社から電気を買って販売をしている会社も多いので、電気の利幅はそれほど大きくはありません。
つまり、すぐに劇的に電気代の節約になるかというと、そうとはいいきれない部分があります」
Q3. 私たちの電気料金の仕組みはどうなっているのでしょう?
A3. 電気料金は段階ごとに別れています。
「たくさん使えばたくさん使うほど料金単価が上がる仕組みになっていて、新規参入の電力会社では、たくさん使う人にとっては割引幅が大きくなるプランを提供する会社が多いです。
なので、1人暮らしであまり電気を使わない人は、電力会社を変えることで逆に高くなるというケースもあるんです」
Q4. そうなると、私たちが新電力会社を選ぶメリットがあまり感じられないのですが?
A4. メリット、デメリットはそれぞれあります。
「新電力会社の別の事業とのセット割りがあり、ポイントが貯まったり、新しいサービスを提供していたりしています。
いまのところ、メリット・デメリットがそれぞれありますが、私たちが正しい選択をすること、自分の家の場合はどうなのかをリサーチすることで、従来の電力会社で買っているよりも安くなるケースが出てきます」
Q5. 電力自由化の「比較サイト」は使ったほうがいいですか?
A5. 比較サイトはひとつだけではなく、複数試してみてください。
「新電力会社を検討する際に、インターネット上の“比較サイト”などでシミュレーションすることができます。その際に注意したいのは、なるべく単月ではなく年間を通した電気料金で入力をすることをおすすめします。
サイトでは8月の電気料金が1万円と入力すると、他の月はいくら位と勝手に推測されてしまうのですが、それが自分のケースと合わない場合もあります。
比較サイトもたくさんあるので、できれば色々なサイトで試してみると、自分に近いシミュレーションができるかもしれません」
オリンピックだけじゃない! 2020年は電気にとっても節目の年
Q6. しばらくは様子見で大丈夫ですか?
A6. 本格的な「電力自由化」は2020年3月! それまでにしっかり調べておきましょう。
「かねてから私たちが使ってきた地域の電力会社は、“送電網”という全国に10社ある従来の電力会社が設置し、管理してきたものを使っているのですが、実はこれが2020年3月に分離することが決まっています。
これを“発送電分離”と言います。
つまり“電力自由化”は、2020年がとても大切な年になるのです。今も既に自由化はしていますが、本当の意味での完全自由化は2020年なのです。
私たちの生活にどう影響するかというと、今までの料金プランが使えなくなる可能性が出てくるかもしれません。
例えば、2020年4月から新プランに移行する会社が出てくると思います。その時に今まで使っていたプランと新プランを比べると、新プランの方が高くなる可能性もあります。
それまでの2年半の間に、我が家の電気プランはどうしたらいいか、しっかりと調べて考えておく必要があると思います」
Q7. 電気料金プラン以外にも、生活に影響が出てきますか?
A7. 正しい電気料金を私たちが作っていくことが大事です。
「個人の電気料金以外でも、社会全体で考えてみましょう。
色々な会社が自由化で参入してくるのはいいことですが、きちんと競争をしなくては、正しい電気料金がついていかないということになります。
もし私たちが電気に対して無関心だったら、結果的にダンピングが起きる可能性もあります。そうなると、逆に電気代が跳ね上がってしまったりする可能性もありますよね。
電力自由化を成功に導くためにも、私たち消費者が電気料金に無関心ではダメだということになります」
アンペア契約の見直しはしたほうがいい?
Q8. エリアによっては、「基本料金を下げるにはアンペアを下げるといい」と言われていますが、アンペアの見直しはするべきですか?
A8. アンペアの変更は、契約後1年間できないので注意が必要です。
「アンペア契約を下げると基本料金は下がります。工事費もかかりません。ただ、この時に注意しなくてはいけないのは、1度契約の変更をすると、原則として1年間は再変更できなくなることです。
例えば、現在40アンペア契約で、思い切って20アンペア契約に変更したとします。そうすると、これまでの半分しかないので、電気が足りなくてしょっちゅうブレーカーが落ちて生活が不便になるかもしれません。しかし、すぐに元に戻そうと思っても1年間は戻せないという状態になるのです」
Q9. 安易にアンペアの変更をすることはあまりよくないでしょうか?
A9. 節約モードになるのはいいけれど、計算してから下げましょう。
「“アンペア契約の変更をすることで節電しよう”“いっぺんにたくさん使うのを控えよう”など、制御しようとする気持ちはとても大切です。
しかし、安易に下げてしまうと不便になってしまいます。下げる前に、どのくらいの電力を使っているのか、ざっと計算してみることをおすすめします。
10アンペアはおよそ1,000ワットと考えることができますので、例えばドライヤーが1,200ワットであれば、約12アンペアを使うことになります。朝の支度の時間に何と何を同時に使い、いくら電力が必要になるかを計算するといいですね」
Q10. 働く主婦の場合、昼間は家にいなくて電気を使わないけれども、夕方から夜にかけて一気に電気を使う方もいますよね。
A10. 瞬間的に、電力が一気にかかる電化製品が増えているので要注意です。
「実は最近の電化製品は、瞬間的に電力がたくさんかかるものが増えています。電気ケトルや瞬間式の温水洗浄便座など、大きな電力が一気にかかるとブレーカーが落ちることもあるので、契約にある程度は余裕を持っておきたいですね」
聞いたことはあっても、我が家には関係ないかも……などと後回しにしがちな“電力自由化”についてでしたが、いかがでしょうか?
他人ごととは思わずに、もっとエネルギーを大切なものと考える良い機会かもしれませんね。ぜひ“我が家の電気”と向き合ってみませんか?
まとめ
- 既存の電力会社以外の会社が電力を販売できる「電力自由化」が2016年にスタート
- 比較サイトでシミュレーションが可能
- 複数のサイトで比べると有効本格的な自由化は2020年。それまでにしっかり対策を
- エリアによってはアンペア契約の見直しで節約も可能。ただし下げ過ぎには注意
(※この情報は2017年10月現在のものです)
【取材協力】
節約アドバイザー
和田由貴(わだ ゆうき)
日本女子大学家政学部卒業。消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、暮らしや家事の専門家として多方面で活動。2007年環境大臣より「3R推進マイスター」委嘱。著書に『和田由貴のシンプル節約術』ほか。2子の母で現役の節約主婦。