死亡保険金にかかる税金の種類
死亡保険では、被保険者・保険料の負担者・保険金受取人の3人が登場人物となります。この3人が誰なのか、どんな組み合わせなのかによって、死亡保険金に課税される税金の種類が異なってくるのです。
具体的には、所得税・相続税・贈与税の3種類のどれかに該当します。それぞれ税率や非課税の制度も違うため、同じ死亡保険金額でも納める税金の額が異なります。
申告漏れを防いだり、税金を少なくするために、死亡保険金にどのような税金がかかるのかを知っておくと、いざというときに役立ちます。
具体例でみる3つの課税関係
課税関係を分かりやすくするために、具体例を3つ挙げて説明します。登場人物は、父・母・息子の3人で、大黒柱の父が亡くなったとします。
(1)被保険者・父 保険料負担者・母 保険金受取人・母
保険料負担者と保険金受取人が同一の場合、所得税が課税されます。
(2)被保険者・父 保険料負担者・父 保険金受取人・母
被保険者と保険料負担者が同一の場合、相続税が課税されます。
(3)被保険者・父 保険料負担者・母 保険金受取人・息子
被保険者と保険料負担者と保険金受取人のすべてが異なる場合、贈与税が課税されます。
順に見ていくと、保険料をお母さんが払っていて、死亡保険金もお母さんが受け取るような(1)のケースでは、死亡保険金であっても所得税が課税されます。
お父さんが自分で保険料を払っていて、死亡保険金をお母さんが受け取るという(2)のケースの場合、相続税の課税対象になります。
(3)のような、息子さんが受け取る場合には、保険料負担者のお母さんから息子さんへの贈与があったものとして、贈与税が課税されます。
どのケースでどの税金がかかるのか、イメージはできましたか? では、次は税金のかかり方を見ていきましょう。
“所得税・相続税・贈与税”それぞれの課税の違い
では、死亡保険金に所得税・相続税・贈与税がかかる場合、税金はいくらになるのでしょうか? すでに加入済の契約や、これから加入しようとしている契約が、(1)〜(3)のどれに該当するのか確認しながら参考にしてみてください。
(1)所得税がかかるケース
死亡保険金は“一時金”と“年金”の、2つの受け取り方法があります。
一時金で受け取るときは、一時所得として申告します。一時所得の金額はイコール一時金の受取額ではありません。
受け取った保険金総額からすでに払い込んだ保険料を差し引き、さらに一時所得の特別控除額(最高で50万円まで)を差し引いた残りの金額です。課税対象になる金額は、この2分の1です。
年金の場合は、雑所得として、受け取った年金の額から払い込み保険料を差し引いた金額に対して課税されます。
(2)相続税がかかるケース
法定相続人(民法で定められている遺産を受け取れる可能性がある人)が受取人の場合、死亡保険金に非課税限度額が設けられています。被相続人が亡くなったあとの、家族の生活を保障するという保険の目的に一定の配慮がされている制度と言えます。
この非課税限度額は、原則として“法定相続人の数×500万円”までです。相続税の対象になる保険への加入を検討している方は、非課税限度額を利用するといいですね。
また従来、年金払い形式の生命保険は、相続時と年金受取り時に、それぞれ相続税と所得税が課税されていました。ですがこれを二重課税と認める判決が出たため、年金支給初年は全額非課税になるなど改正が行われています。このように、税金面でのデメリットは解消されています。
(3)贈与税がかかるケース
贈与税は、暦年で110万円までの非課税枠があります。
また、年金の場合、支給初年は全額非課税になるなど、相続税と同じ配慮がされています。
いかがでしたか? 保険の契約時や保険金受給前の予備知識として、ご参考になさってください。
お父さんが保険料の支払いと契約をしていてお母さんが受け取るというように、法定相続人が受取人になる場合は、現金で残すよりも保険金で相続したほうが有利になるケースもあるので、これから加入する方は利用してみるのも一案ですよ。
【参考】
2017/5/24 WooRis掲載
執筆/大津留ぐみ