新米は10月以降に出回る2便、3便が狙い目!
null新米の季節がやってくると、日本人のDNAにインプットされているのか「早く買わないと!」と、私はソワソワしてしまいます。でも、急ぐなかれ。西島さんは、「一部の産地や品種を除いて、そんなに急いで買わなくても大丈夫」と話します。それってなぜですか?
「1便は、今年新しく穫れたお祝いの米。出荷式でお披露目する必要などがあるため、出荷時期が決まっていることが多いんです。そのため、早刈りして、なんとか無理矢理にでもその時期に合わせることも。
だから、青刈りというか、ちょっと収穫時期が早いことが多い。その分、米の甘さや粘りなどが十分に出ておらず、味がしっかりのった実力のある米は、実は後から出てくるんです」(西島さん、以下「」内同)
とにかく1便は「早さ」が売り。“旬”というプレミアム感が尊重されます。その分、産地にもよりますが、9月頃から出回り始める1便の新米の多くは、まだ不安定な要素が高いとのこと。だから最初は、「今年も新米の時期が来たな」くらいの意識でいいそうです。
「狙い目は1便の半月後くらいに出てくる2便以降。2便以降になると、ちゃんと適切な稲刈りの時期に収穫して、乾燥をしっかりしたものが出てくるので、一気に味が出てきます。
だから10月以降に売り出される米を狙えば、どの米も大体間違いがない。10月に入ってしまえば、ほとんどの産地で2便、3便が出てきています。収穫が遅い産地では、10月が1便というものもありますが、10月なら早刈りせず適した時期に収穫しているので安心です」
だから、まさにいまこそ、おいしい新米を買うチャンス。新米の味がのってきているはずです!
新米と呼べるのは年内いっぱい。2月と6月で味が変わる!
nullちなみに、いつまで「新米」なのでしょうか?
「新米として販売できるのは今年いっぱい。12月31日の23:59まで。食品表示法の食品表示基準によると、秋に収穫してその年の12
つまり、年内で今年の新米は売り切らなくちゃいけない。そのため、発売時期が遅ければ遅いほど、新米を売る期間は必然的に短くなります。だからこそ、農家や販売店は最初の1便を大切に見ているという理由もあるのです」
さらに、米は2月と6月で味が変わると、西島さん。
「米には節目があって、2月と6月は味が変わる時期。これは産地や品種を問わず、米の性質的にそう感じています。2月頃になると米粒の水分が一粒一粒揃って安定してくるので、炊き上がりが変わってくる。
さらに6月になると気温も湿度も上がり、
また、全国には珍しい米の保存をしている産地もありました。
「新潟県北魚沼の雪を利用した天然の冷蔵庫“雪室(ゆきむろ)”では、1年間ずっと新米の味と品質をキープしながら保管できます。普通の冷蔵庫だとどうしてもエアコン臭は避けられず、15℃以下でも劣化が進んでしまいますが、不思議と雪の冷気だけは劣化が進まず、新米と古米を食べ比べても味がほとんど変わらないんです。
佐賀県は、一般的に玄米の状態で保存するところを、“もみ”のまま貯蔵するので有名です。
まさに米が鎧を着た状態で、流通させる直前に初めて“もみずり”をします。つまり、それまではほぼ新米の状態が維持されているのです。
梅雨になると米の味が落ちてくるのに、もみ貯蔵をしている佐賀県などでは、初めてその時期にもみをむくため、“夏に強い佐賀米”として有名なんです」
今年の新米に合うのは滋味深い「だしの味」
nullさらに、今年の新米に合うおかずについて聞きました。
ちなみに今年の新米は、戻り梅雨、猛暑、台風と温暖化した気候の影響を受けて、例年より水っぽくやわらかく感じやすいのが特徴。そんな米にはどんなおかずが合うのでしょうか?
今年の新米の詳しい記事はこちらを参考に→「2022年の新米」の特徴は?よりおいしく食べる方法を五ツ星お米マイスターが伝授します!
「例年とは違う炊き上がり具
米にパンチがない分、おかずは素材重視、優しいだし系が合いそうですね。ごはんとおかずのバランスがよくなって、両方おいしいと感じるはずです。
また、新米を楽しみたいなら、秋の食材も楽しむことが大切です。秋の食材をなくして、新米は語れません。
きのこ類、鮭や牡蠣、炊き込みごはんや鍋ものなど、秋の味覚があるからこそ、ごはんがより一層おいしく感じるんです。新米をおいしく食べるためには“旬”という言葉をぜひ思い出してください」
市販の濃い味付けよりも、自分でだしを取るなどして、素材の味を生かしたほうが、今年の新米には合うとのこと。
まさに新米の2便、3便が出回り始める時期。ぜひ、旬の食材とのマリアージュを楽しんでみてください!
取材・文/岸綾香
【取材協力】
西島豊造
五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しいお米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。