1:「先生には子どもがいないから」
著者の津久井氏が全国の幼稚園・保育園でリサーチを行ったところ、どこの地域の先生でも“保護者から言われて一番ショックだった一言”としてまず挙げるのがこの言葉「先生には子どもがいないから」なのだそう。
<だいたいが先生側が主張する正論に対し、保護者が何とか自分の意見を押しとおそうとする流れの中で登場します。「そんなキレイごとだけじゃ子育てはできない。それがわからないのは、先生が子育てをしたことがないからだ」というわけです。>
園の先生のなかには、子どもがいないどころかまだ独身という人も少なくないでしょう。そうした若い先生と意見が食い違うと、「親の苦労もわからないくせに」なんて思いが頭をよぎるかもしれません。
しかし、先生たちは幼児教育や保育のプロ。専門的な教育を受け、日々現場で多くの子どもと接している先生たちに対し、「子どもがいないから」はお門違いのイチャモンにすぎません。
先生に対する不満があっても、これだけは絶対に言わないようにしましょう。
2:「先生、今年で何年目ですか?」
はじめに挙げた「先生には子どもがいないから」に次ぐNGフレーズだそうです。新人の若い先生には「あなたは頼りなくて不安」というイヤミに聞こえてしまいます。
<もし自分の保育に自信を持っている先生に言ったら、「何でそんなイヤミを言われなきゃなんないの?」と腹を立てられ、保護者のほうがキラわれるばかりです。
反対に、自信をあまり持てないでいる先生に言ったら、余計に萎縮させてしまいます。次に何か失敗をしたら、「ほら、やっぱり」「だから経験が少ないと……」という言い方で責められるのが目に見えているからです。>
子どもを預けていて不安がある場合、先生の能力を疑うような発言は控えましょう。
「先生、うちの子ちょっと●●なところがあるのですが、園での様子はどうですか?」など、あくまで“子どもについて相談する”体で不安を打ち明けてみては? そのほうがきちんと対応してもらえるでしょう。
3:「他の先生は●●なのに」
ときどき「去年の先生は」「隣のクラスの先生は」「以前通っていた園の先生は」など、何かにつけて他の先生と比較する発言で不満をぶつけてくる保護者がいるそうです。
<これは逆の立場で考えてみるのが、一番わかりやすいと思います。もし担任の先生から、
「去年、受け持ったクラスの子は、もっと優秀だった」
「ここに来る前の園では、保護者がみんないい人ばかりだった」
と言われたら、あなただったらどう思いますか。>
先生から悪印象をもたれて、かえって事態が悪化することにしか、なりかねませんよね。
「もっと●●してくれたらいいのに」という要望があるなら、「先生、●●していただけるとありがたいのですが」とお願いしてみましょう。
それでも問題が解決しないなら、主任や園長先生に相談してみるのもアリです。他の先生と比較する発言は、百害あって一利なしだと心得ましょう。
4:「うちの方針は違うんです」
各家庭によってしつけや教育の方針はさまざまでしょう。ただ、自分の家庭のルールを園の先生に押し付けるのはご法度。
<先生たちの多くは、子どもたちに「社会的な生活習慣を身につけさせる」ことも園の仕事の1つである、という自覚を持っています。したがって、各家庭のルールや価値観に基づいた主張によって、園の約束ごとが乱されることを、基本的にとてもキライます>
たとえば、「うちでは子どもをのんびりした人に育てたいので、あまり急かさないでください」とか「夜、よく眠れるようにお昼寝はさせない主義なので、その時間は違う遊びをさせてください」など、保護者が口々に主義主張をふりかざすようになると、園の運営がなりたちません。
もちろん、「アレルギーがあるのでおやつを配慮してほしい」など、特別な事情があるなら別ですが、基本的には園のルールに従いましょう。
5:「ウチではできるんですけどね」
「○○ちゃん、ちょっとお着替えが苦手みたいですね」と言われて「ウチではできるんですよ!」。
「お友達とケンカになりました」という報告に対し、「ウチではケンカなんかしたことありません!」。
そんなふうに、園の先生に反論してしまったことはありませんか? この発言、保護者の側に悪気はなくても、先生たちにとっては誤解を生みやすい要注意フレーズだといいます。
<先生の側からすると「ウチではできているのに、それが園でできないということは、あなたたちの保育に問題があるんじゃないの?」と言われているように思えてしまうということです。
(中略)家ではできるけど園ではできないことが、もしあったとしたら、先生の話をよく聞いてから「なぜ園ではできないのか」という部分について、お互いに話し合うようにしましょう。>
実際、ウチと外で様子が変わるお子さんは多いことでしょう。その場合、わが子の本当の姿を知ってほしいという親心のあまり、つい「ウチでは●●なんです」と言いたくなるのも無理はありません。
でも、園の先生だって悪口を言いたいのではなく、お子さんの成長を真剣に考えるからこそ、気づいた点を指摘してくれているわけです。
先生を言い負かそうとするのではなく、「そうか、外ではそういう一面もあるのか」と素直に受け入れて、お子さんの問題を先生と協力して解決していきましょう。
以上いかがでしたか? いわゆる“モンスター・ペアレント”ではなくても、つい言ってしまいそうなフレーズばかりでしたよね。
幼稚園、保育園の先生は、お母さんの子育てをサポートしてくれる頼もしい存在。くれぐれもこうした発言で先生との信頼関係を壊さないようにしたいものですよね。
【参考】
津久井幹久(2010)『幼稚園・保育園 親が知らない本当のところ』(祥伝社)
2017/5/8 WooRis掲載
執筆/中田綾美