伝統の技法と素材を使った絵画「日本画」を観る
null日本画とは、日本の伝統的な技法や材料を使って描かれた絵画のこと。明治時代以降、西洋からやってきた油彩画(西洋画、洋画とも呼ばれます)と区別するために生まれた概念です。
主に鉱石を砕いてつくられる“岩絵具”や墨に、貝がらを焼いて作った顔料“胡粉(ごふん)”と“膠(にかわ)”をつかった接着材を混ぜ合わせ、紙や絹・木・漆喰などに絵や文様を描いて色づけていく技法が用いられます。
『山種美術館』の創設者は、日本画の大コレクターだった実業家の山崎(本来の漢字はつくりの上部が立の“ざき”、以下同)種二(1893〜1983)。昭和初期から相場師として活躍し、戦後には山種証券(現・SMBC日興証券)を創業しました。
日本画のコレクションは戦前からスタート。その収集スタイルは独特なもので、通常は画廊経由で作品を購入するところを、横山大観や上村松園、川合玉堂などの画家と交流を深めて本人から直接作品を購入し、独自のコレクションを築いていきました。
美術館創設のきっかけは、横山大観に「世の中のためになることをやったらどうか」と言われたこと。そこで買い集めた絵画コレクションを元に、1966年に美術館が開館しました。
さらに2代目館長の山崎富治が、重要文化財『炎舞』など速水御舟(はやみぎょしゅう)の作品を一括で迎え入れるなどして、収蔵品はますます充実。現在は、明治時代から現代までに描かれた日本画を中心に約1,800点を収蔵しています。
現在の『山種美術館』は、2009年に移転オープンしたもの。展示室は、日本画の色鮮やかさや繊細な風合いを引き出すため、クロスや調光、ケースのガラス、照明なども計算されて最適な状態で鑑賞できるよう工夫がなされています。
2018年9月6日(木)まで開催されている企画展「水を描く―広重の雨、玉堂の清流、土牛のうずしお―」では、日本画における水の表現に着目。
荒々しい龍の作品で知られる川端龍子が描いたのは、鳴門海峡の渦潮。まるで生きているように波がうごめいています。
そのほか、さわやかな川や静けさを感じさせる湖、しとしと降る雨など、様々な表情を見せる“水”が描かれた日本画をたっぷりと鑑賞できます。
カフェでも美術鑑賞! 美しいオリジナル和菓子を楽しむ
nullそして『山種美術館』で必ず訪れてほしいのが、併設されているカフェ「Cafe 椿」! メニューの和菓子は、青山の老舗和菓子屋・菊家が製造したもので、展覧会に合わせて毎回5〜6点のオリジナル和菓子が登場します。
上記写真の青と白のコントラストが目にも涼しい和菓子は、川端龍子の作品『鳴門』の海をイメージした『白波』。白い淡雪羹(あわゆきかん)とブルーの錦玉羹(きんぎょくかん)で表現されています。海の上を飛ぶ鵜(う)もあしらわれていて、食べるのがもったいなくなるほどの美しさ!
鑑賞を終えたあとにリラックスしながらゆっくり味わってもらえるよう、通常の和菓子よりも大きめのサイズに作られているため、満足感も十分。
セットのドリンクは抹茶以外に、京都の人気店「スマート珈琲」の豆で淹れたブレンドコーヒーも選べるのがうれしいところ。和菓子とコーヒーの組み合わせ、じつは相性がいいのです。のんびり落ち着ける椅子とテーブルは、イタリアのカッシーナ・イクスシー社製。
ちなみに「Cafe 椿」では、にゅう麺もオススメしたいメニュー。しっかり食べたいときにどうぞ!
季節の移ろいや自然の美しさを描く作品のほか、抽象的な作品やモダンな作品など、日本画の画題は画家によってさまざま。いろいろな日本画を鑑賞できる『山種美術館』、ぜひ訪れてみてください。
【施設情報】
『山種美術館』
東京都渋谷区広尾3−12−36
開館時間:10:00~17:00
※ 入館は16:30まで
休館日:月曜(月曜が祝休日の場合はその翌平日)、年末年始、展示替え期間
最寄り駅:JR・東京メトロ日比谷線「恵比寿駅」徒歩10分
東京・青山の「美術館通り」を散策しよう
null青山の「六本木通り」から「骨董通り」までの新しい道路が開通され、『山種美術館』から『国立新美術館』までの美術館が1本の道路でつながる、通称「美術館通り」が誕生したのは2012年のこと。
1km弱のこの通りを歩くだけで、いくつもの美術館に出会うことができます。しかも、すべての美術館に素敵なカフェが併設されているので、筆者オススメのお散歩ルートで1日かけて美術館&カフェめぐりなんていかがでしょうか?
徒歩にかかる時間はあくまでも目安なので、参考程度でお考えくださいね。
美術館&カフェめぐり!「美術館通り」お散歩ルート
「恵比寿駅」を出発
↓ 徒歩約10分
『山種美術館』
先述の『山種美術館』では、“もうひとつの美術館”としてミュージアムショップのアイテムにも力を入れています。山崎妙子館長プロデュースのかわいらしい一筆箋やクリアファイルのほか、企画展限定のオリジナルグッズも充実!
↓ 徒歩約10分
『岡本太郎記念館』
大阪の『万博記念公園』内にあり48年ぶりに内部が一般公開されて話題の『太陽の塔』や『渋谷マークシティ』に展示されている巨大壁画『明日の神話』などで知られる現代美術家・岡本太郎のアトリエ兼住居をそのまま残した美術館。
建物は、ル・コルビュジエの弟子としても知られる建築家・坂倉準三の設計。美術館の中はもちろん、バショウの大木が生える庭などには太郎の作品がいっぱい! 敷地内には、料理研究家・大川雅子がオーナーのカフェ「a Piece of Cake」も。
↓ 徒歩約5分
『根津美術館』
日本と東洋の古美術品はもちろんのこと、庭園や建築も楽しめる美術館。「毎年1度だけ!圧巻の国宝“燕子花図”が観られる“根津美術館”へ」でもご紹介しました。
庭園の眺めもすばらしい「NEZU CAFÉ」では、涼しさを感じながら青々とした自然を楽しむことができます。しかも、蚊にさされる心配もなし!
↓ 徒歩約10分
『国立新美術館』
建築家・黒川紀章設計の『国立新美術館』では、常に注目の展覧会が開催されています。館内には至るところにデザイナーズチェアが置いてあり、自由に座ることができるのも魅力。すべての階にカフェやレストランが用意されており、お腹の好き具合でお店を選べるのがうれしい。
↓ 徒歩約5分
『サントリー美術館』
『東京ミッドタウン六本木』内にあり、「美を結ぶ。美をひらく。」をコンセプトに日本美術を中心にした展覧会を開催する美術館。
慶応元年に創業した金沢の老舗・加賀麩不室屋(かがふふむろや)がプロデュースしたカフェでは、展覧会限定メニューや麩を使ったメニューをいただけます。
↓
「六本木駅」に到着
少し涼しくなって秋の気配が感じられるような日に、のーんびりと歩いて楽しんでみてくださいね!
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(※ 情報は2018年8月現在のものです)