これからの受験は、自ら答えを生み出していく力が必要
登壇者は、「心」の代表として、こども国連環境会議推進協会 事務局長、社団法人 公共ネットワーク機構 理事などを務める井澤友郭さん。「技」の代表として、四谷大塚 教育事業本部 第一ブロック長 兼 お茶ノ水校舎長の成瀬勇一さん。「体」の代表として、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター副センター長、東北大学加齢医学研究所教授で、医師、医学博士である瀧靖之さん、以上3名。
さらに、コーディネーターとしてキャスターで常葉大学非常勤講師の榎戸教子さんが登壇しました。
まず、「技」の代表として成瀬さんが説明してくれたのは“センター試験の廃止”について。2020年度から、現在のセンター試験に代わり、新しい共通テスト『大学入学共通テスト』が導入されます。これまでの選択問題だけでなく記述式問題が加わる予定なのだとか。
「答えのない世界の中で“答えらしきもの”を見つけ、生み出していく力が中学受験でも必要になっていくのではないか」と成瀬さんは指摘しています。
親の役割は、子どもに問いかけ、一緒に考え、導く
次に「心」の代表、井澤さんのお話は、以下の3つについて。
(1)変わりゆく学び
(2)新しい賢さの定義
(3)親が子どもにできること
“所有”や“記憶”が重視された20世紀の学びに対して、21世紀は“共有”や“加工”が重視され、コラボレーションやコミュニケーションが賢さの定義としてより重要になってくると、井澤さんは言います。
また、かつては家庭や教科書が情報源でしたが、今は莫大な情報量を誇るインターネットが情報源になっていることを挙げ、そんな時代の中で親の役割は子どもに適切な方法で“問いかけ”を行い、一緒に考え、導くこと、とアドバイスくださいました。
子どもが興味を示したものに対して、本物を見せてあげる
続いて、「体」の代表として瀧さんは、脳科学の観点から学びについて、このように話しています。
「脳はまず情報の伝達を行う“道”を作った上で、よく使う“道”を高速に、逆に使わない“道”を撤去し、必要な情報に“特化”していきます」
また、幼少期に良い成績だった子どもが、その後さらに伸びたという家庭では、「子どもが何かに興味を示したら、すかさず本物を見せてあげる」という共通点があったそうです。例えば図鑑などで昆虫に興味をもったとして、その“道”を高速にするには、昆虫採集に連れていき、本物を見せてあげることが重要なのですね。
子どものスマホ使用、受験生にとってはどう影響する?
後半では、スマートフォンやタブレットなど、“電子デバイス”が子ども達にどのような影響を与えるか、という話題になりました。
成瀬さんは「受験において」という前置きをし、「百害あって一利なし」とバッサリ。
「連絡手段としてはいいですが、受験生になるとどうしても親に隠れてLINEしたり、ゲームをしたりというのが毎年問題になります。スマホは玄関に置くなど、ご家庭でルールを作るべき」(成瀬さん)
一方、井澤さんと瀧さんは、「必ずしもデメリットばかりではない」と言います。
「興味があることを調べたり、それを写真に収めたり、(デバイスを)コミュニケーションのツールとして使いこなすきっかけになる。ただ、それをいつ始めるのかというのが問題。
“危ないから与えない”というのは、中高生になり、いろいろな人と繋がって、自分の会いたい人に会いに行く、聞きたい人に直接質問をぶつけるという時に世界が狭まってしまうリスクがあります」(井澤さん)
「(電子デバイスが出てきてから)まだあまり時間が経っておらず、論文報告が少ないので、判断は難しい。ただ、現状ネガティブな報告が多く、直接的なコミュニケーション、運動、睡眠などが削られる“機会損失”が大きな問題として挙げられる。
ただ一方で、全てのものにはポジティブな面があり、これから情報のシェアリングが進む中で我々の社会が持続していくために、今まで伝統的に考えていた社会とのコミュニケーションだけではうまくいかないこともあると思う。早いうちからITリテラシーを高めるというプラスの側面もあると思う」(瀧さん)
親世代が子どもだった頃と今では電子デバイスの在り方がかなり変わっています。なかなか難しい問題ですが、こちらも家族内で慎重に協議していく必要があるのかもしれません。
登壇者3人から親に向けてのアドバイス
最後にお三方から、親に向けて応援・アドバイスをもらいました。
「理想と現実のギャップがあると思います。できることから。今は正解のない時代です。親が全部知っていなきゃいけないという気持ちからは解放された方がいいと思います。一緒に考え、調べ、言葉にしていくことが大事なのかなと思います」(井澤さん)
「お父さん向けに……。受験の直前になって、いきなり意見を言い、今まで塾とお母さんと温めてきたものを最後の最後に壊してしまうことを塾業界用語で“父乱入”と言うこともあります(笑)。
早いうちからお子さんに関わってほしい。1週間に1度とかではなく、毎日短い時間でも話をするとか」(成瀬さん)
「子どもに何をさせようかと思うと自分が頑張るしかないので、自分が頑張っている姿を見せるしかない。とにかく自分が忙しかろうが頑張る。そして子どもに何かを感じてもらう、そこに尽きると思います」(瀧さん)
教育、進路に“正解”はありません。この日も、さまざまな角度から、さまざまな考え方、行動が提示されました。親と子ども、そして夫婦で日頃からしっかりとコミュニケーションをとり、子どもにとってベストな道を選択できるようにしていきたいですね。