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ノロ感染多発…腸炎を起こすウイルス・細菌に要注意

年が明けてから、病院・老人福祉施設・保育園でのノロウイルス集団感染の報道が続いている。ノロ感染は下痢に先行して嘔吐が出ることが多い。こうした嘔吐や下痢で、とくに子どもは脱水症状を起こすことあるので侮ってはいけない(乳幼児の冬季下痢症に要注意。脱水から命を落とすことも)。では、こうした胃腸炎を起こすウイルスや細菌にはどんな種類があり、どんなことに気をつければよいのか。東京医科大学の公開講座「子どもの下痢と血便」で、同大主任教授で小児科科長でもある河島尚志教授に訊いた。

下痢が水溶性ならウイルス性胃腸炎

下痢の原因はウイルスか細菌だ。

ウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスは、冬季に感染が多発するノロウイルス、これから春先までがピークとなるロタウイルス、そのほか腸管アデノウイルスサボウイルスアストロウイルスヒトパレコウイルスなどがある。このほか、インフルエンザを引き起こすインフルエンザウイルスなどでも下痢症状が出ることがある。

ウイルス性胃腸炎の特徴のひとつに、水溶性の下痢がある。水のような下痢で、血便を伴わないことがほとんどだ。

血便や高熱を伴うこともある細菌性胃腸炎

こうしたウイルスの100倍くらいの大きさをもつのが細菌だ。細菌による胃腸炎はイコール、食中毒と言ってよい。

ウイルス性の胃腸炎と違い、細菌性胃腸炎とくに0-157などの腸管出血性大腸菌では、血便と高熱を伴うことがある

細菌性胃腸炎の原因菌は、発症が多い順に、サルモネラブドウ球菌腸炎ビブリオ病原性大腸菌(0-157もここに入る)キャンピロバクターウェルシュセレウスボツリヌスなどだ。この中のいくつかについて説明しよう。

ミドリガメなどの輸入爬虫類はサルモネラ感染率が高い

サルモネラの大きな感染源となるのが、ミドリガメなどの爬虫類だ。河島尚志教授によれば、ミドリガメの8割くらいにサルモネラ菌がいるという。

過去には小児重症サルモネラ症を引き起こしたこともあるため、とくに子どもは、ミドリガメや輸入された爬虫類にはできるだけ触らない、触ったら必ずその後に手を洗う、などを徹底したい。

ちなみに、サルモネラ菌は種類が多く、腸チフスを起こすチフス菌もサルモネラの一つだという。

また、生卵や加熱不十分な肉にも注意が必要だ。卵の殻にはブドウ球菌が付着していることが多く、生卵を食べてブドウ球菌に感染することがあるという。また、キャンピロバクターは牛、ブタ、ヒツジ、ニワトリなどの腸管に生息しており、加熱不十分な肉を食べることで感染することがある。

料理の作り置きで感染するウェルシュ、セレウス

では、加熱さえすればよいのかというと、熱に強い細菌もいるから、加熱=絶対安心とはいかない。その代表格が、ウェルシュ菌セレウス菌だ。

よく前日に作ったカレーを鍋に入れたままにしておき、翌朝温め直して食べたら食中毒になった、という事例があるが、これはウェルシュ菌によるものが多い。ウェルシュ菌は繁殖に適した温度が43〜47℃と他の細菌よりも高いうえ、高温の環境下では熱に強い芽胞となって生きながらえるため、加熱してもなかなか死滅しない。ウェルシュ菌の食中毒を避けるためには、調理後できるだけ早く食べる、作り置きする場合は冷めたらすぐに冷蔵庫に入れて早目に食べる、などの対策が必要だ。

セレウス菌は、とくに日本ではチャーハンなどのご飯ものやパスタなどの作り置きで感染することが多いという。毒素を産生するためしっかり火を通しても毒素が残り、これにより食中毒が起こる。この対策も、作ったらすぐに食べ、残すなら早めに冷蔵庫に入れることだ。

1歳未満にハチミツは厳禁。乳児ボツリヌス症に

昨年、ハチミツを混ぜたジュースを与えられていた生後6か月の男児が乳児ボツリヌス症で亡くなる事例が出た。

健康食品として知られているハチミツだが、自然界のものであるため微量のボツリヌスが含まれている。1才以上の離乳後であれば問題ないが、1才未満の乳児は腸が未成熟なため、ボツリヌスが繁殖しやすい。ハチミツの容器には必ず、1才未満の子には与えないことと注記されているが、気づかない人も多い。

ボツリヌス菌は自然界最強の毒素といわれるくらいほどで、高温になると芽胞となって生き延びる。ちょっと沸騰させたくらいでは死なないので、1歳未満の乳児には、ハチミツを加熱調理しても危険である。土壌などにいるため、過去には、死者9名を出した、からしレンコンによるボツリヌス中毒も起きている。

ブドウ球菌は食べてすぐ、ノロ・大腸菌は2日後に

胃腸炎の原因となるウイルスや細菌は、それぞれ症状が現れるまでの時間が異なる。

食べてからすぐ症状が現れるのが黄色ブドウ球菌やセレウス菌だ。もしあなたが生卵を食べて数時間後に下痢をしたのなら、原因は黄色ブドウ球菌である可能性が高い。また、セレウス菌の場合は嘔吐することも多いという。

6時間から16時間後に症状が出るのが、腸炎ビブリオやウェルシュ菌。

そして、2日くらい経ってから発症するのが、ノロや大腸菌だ。このように大腸菌は現れるまでに時間がかかる。

次回は、大腸菌の中でも特に怖い、0-157などの腸管出血性大腸菌について解説する

 

河島尚志(かわしま・ひさし)
東京医科大学小児科学分野主任教授、東京医科大学病院副院長、小児科診療科長
1985年東京医科大学大学院修了、同大学病院小児科臨床研究医、大月市立中央病院部長などを経て、現在は東京医科大学病院にて小児科診療科長を務める。専門は感染免疫、膠原病、栄養消化器肝臓疾患、川崎病など。

◆取材講座:「子どもの下痢と血便」(東京医科大学病院)

文/まなナビ編集室 医療・健康問題取材チーム 写真/東京医科大学病院提供、fotolia/chombosan

(初出 まななび 2018/01/17)

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