熱帯夜の「切タイマー」使用には注意が必要
nullエアコンの使い方は、住まいの環境や好みに応じて様々。その一環として、睡眠時に4割近い人がエアコンの切タイマーを使っていることも明らかになりました。エアコンが切れると室温は上昇します。そのため、寝苦しさを感じるだけでなく、特に気温が高い日には熱中症リスクが高まることも考えられます。
ダイキンが行った比較実験によると、マンションの寝室に設置されたルームエアコンを用いて、睡眠時にエアコンをつけっぱなしにした場合と3時間の切タイマーを設定した場合の「室温」と「暑さ指数(WBGT ※2)」の変化は以下のようになりました。
その結果、切タイマーを設定すると、エアコンが切れた後にはWBGT値が時間の経過とともに上昇、明け方には熱中症への警戒が必要とされるWBGT値である25℃ほどに! 外気温や住環境によっては、WBGT値がさらに高まることも考えられます。
日中だけでなく夜間においても熱中症リスクの軽減は大切です。
熱中症に詳しい医師の三宅先生によると、
「本格的な猛暑が到来する8月以降は、日中の暑さだけでなく、熱帯夜にも注意する必要がある」として、 熱帯夜の睡眠時にはエアコンを切らずにつけっぱなしで使うことを推奨しています。
以前に比べて、日中の最高気温だけでなく、夜間の最低気温も高い日が増えています。これまでのエアコンの使い方の習慣を見直すことも必要になってくるかもしれませんね。
気を付けたい「時間差熱中症」
null暑い環境で過ごした際の熱ストレスが原因で、熱中症の症状が時間差で現れる「時間差熱中症」にも注意が必要です。
東京消防庁のデータ(※3)によると、東京都で令和4年6月~9月に救急搬送された人のうち、約6分の1にあたる1,000人以上が午後6時~午前6時の間に救急搬送されています。
三宅先生「日中と比べて気温が下がる夜間にも熱中症で搬送される方はいらっしゃいます。暑い場所にいることで発症する熱中症だけでなく、時間差で症状が現れる『時間差熱中症』にも注意が必要です。
夜間に発症する時間差熱中症は、自宅で緊張がほぐれる夜に日中の熱ストレスが原因で発症するものです。日中、暑い環境で過ごした時は、夜間も熱ストレスをケアするためにエアコンを使って涼しい環境の中で過ごすよう心がけましょう」
熱帯夜にも役立つ上手なエアコンの使い方のヒント
null快適に感じる温度と湿度の関係
快適な空間づくりには「温度」だけでなく「湿度」を調節することも大切です。湿度が20%変われば、 体感温度は約4℃変わる(※4)といわれています。
ダイキンが実施したサーモグラフィを使った可視化検証試験実験では、温度28℃、湿度85%の環境で皮膚温度の上昇を確認した後、温度は変えずに湿度を60%にすると、12名中10名の手部や顔部の皮膚温度が顕著に低下しました。
特に熱帯夜の睡眠時には、冷房運転でエアコンを使用し、室温が28℃程度になるように調整することをおすすめします。
冷房運転により、室温とともに湿度も低下します。また、エアコンの種類によっては、温度と湿度を設定できるものもあります。
使用しているエアコンに湿度設定機能があれば、目標温度の設定とあわせて、目標湿度を50%~60%に設定すると快適な環境作りに効果的です。その機能がない場合は、除湿器などを併用し、湿度を調整するなどの工夫も可能です。
エアコンの風を水平にすると体に直接当たらない
エアコンの風が身体に当たるのが苦手という場合は、風向を水平にしてエアコンから吹き出る風が直接身体に当たりづらいようにする使い方がおすすめです。
また、風向を水平にすることで、節電にもつながりやすくなります。暖かい空気は上昇する性質があり、 冷房中は天井付近と床付近の温度に差が出る「温度ムラ」が起こりやすくなります。
「温度ムラ」による無駄な運転を抑えるには風向を「水平」にするのがおすすめです。
「温度ムラ」を抑えるには、そのほかに空気清浄機や扇風機、 サーキュレーターなどの活用もおすすめです。エアコンと向かい合わせに置き、床付近の冷気を、ななめ上、天井方向に持ち上げるようにしてみましょう。
切タイマーを使いたい場合は?
寝ている間にエアコンをつけっぱなしにしたくない場合には、切タイマーを3時間に設定すると、入眠直後の深い睡眠が温度変化で阻害されづらく、深い睡眠が2周期(平均的な睡眠周期は90分で1周期)確保でき、前半の深いノンレム睡眠が安定的に取れるといわれています(※5)。
気温や湿度を確認し、熱中症リスクに気をつけて使用しましょう。
いかがでしたか? ただでさえ日中の暑さで体力を奪われる夏、しっかり睡眠をとることで翌日に疲れを持ち越さないことは健康のためにもとても大切です。エアコン活用方法のヒントを、家族みんなの快適な睡眠に役立ててくださいね。
※1 調査概要
・調査名:夏の睡眠時のエアコン使用に関する意識調査
・調査期間:2023年7月21日~7月24日
・調査対象:全国の男女524名
・調査方法:スマートフォンリサーチ
※2 環境庁 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について」https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
※3 東京消防庁「熱中症に注意!」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/season/toukei.html
※4 ダイキン「サーモグラフィを使った可視化検証試験の結果」
https://www.daikin.co.jp/air/life/laboratory/heatstroke
※5 ダイキン「熱帯夜の困りごとと解決法」
https://www.daikin.co.jp/air/life/laboratory/sultry-night
【取材協力】ダイキン
【三宅 康史先生】
帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長・帝京大学医学部救急医学講座 教授。1985年東京医科歯科大学医学部卒業。さいたま赤十字病院救命救急センター長、昭和大学医学部教授などを経て、2016年より現職。日本救急医学会専門医・ 指導医・評議員、日本集中治療医学会専門医・評議員など。