子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

年賀状や履歴書、漢字と仮名の大きさ変えればキマる

手書き文字を書く機会は減っているが、年賀状や履歴書など手書きが必要なケースもまだまだ多い。どうしたら見栄えのよい、キマる字が書けるのだろうか。前の記事「年賀状を書く前にマスターしたい 美文字3つのルール」に続き、国士舘大学公開講座でペン字講師を務める小嶋帰心先生に美文字のコツを訊く。

この「日本の」、どっちがかっこいい?

小嶋先生は、実際の文字を見せながらどちらがよいか、わかりやすく説明してくれる。早速2つの文字が掲示された。

日本の」と書かれた2つのパターン。左はすべて同じ大きさで書かれたもの。右は「」が一番大きく、「」と「」が小さい。

「どちらがきれいに見えますか」と小嶋先生。もちろん右側がきれいに見える。

その理由はこうだ。

よく、平仮名は漢字より小さく書いたほうがかっこよくキマると言われるが、平仮名だけではなく、画数の少ない漢字も画数の多い漢字より小さく書いたほうがよいのだという。

なぜかというと、文字には空間が大切だからだ。

画数が多い字は画数が少ない字より大きく

空間というと、私たちは文字の周りの空間ばかり考えがちだが、文字の中の空間も大切だと小嶋先生は指摘する。

つまり、「」と「」は線が少ないので、文字の中に広々とした空間がある。すると、文字が膨張して見えるのである。

それに対して「」は画数がほかより多いので、文字の中の空間が少ない。だからほかより大きく書かなければバランスがとれないのだ。

「文字は、字の中の空間で決まるのです。外枠の大きさではなく、文字の中の空間を同じ広さに近づけると、画数の多い漢字、画数の少ない漢字、そして平仮名がまとまってきれいに見えますよ」と小嶋先生。

たとえば年賀状。「という文字は名前より少し大きく書くとキマるという。画数が多いからだ。

また、「」はその上に相手の名前が来るので、名前が「」という座布団の上に安心して乗っかっているような感じで書くとよいという。

縦棒を意識して書くとキマる

字は画数が少ない字ほど難しいと小嶋先生は指摘する。画数が少ないと、1本の線の書きぶりが全体の印象に大きく影響するからだ。

逆に画数が多いと部分的に少しおかしくても全体がきちんと書けていれば、そう変にはみえないという。

また、中でも最も難しいのが、縦棒だ。など、縦棒が決めてとなる漢字は数多い。とくに名前に多いので宛名書きの時苦労している人も多いだろう。

縦画の縦棒は家の柱のような存在です。ぐらつかず真っ直ぐに書ける人は意外に少ないのです。多くの人は右利きなので右下に曲がることが多いですね。これが真っ直ぐに書けるようになると、字が伸びやかに見え、いきいきとしてきます」

縦棒を真っ直ぐに書くのは練習でできるようになるという。

縦棒だけではない、文字の中心のラインを意識すると、字がぐにゃりと曲がったりしなくなる。たとえば「」という字。

最後のハネは、交点の真下(中心線上)に来るように書くと、きれいに見えます。ハネを交点の真下よりやや左に書く人が多いですね」

平仮名は点の位置に注意

画数の少ない字のほうが難しいだけに、平仮名は難しいという。とくに点の位置

「『』『』の点を横線の中央に打つ人がいますが、右端に打つときれいです。また、『』の点はかなり右上に、『』の最後の線は離して打つべきです」

書き文字は伸びやかさが命

こうした平仮名や漢字の書き方は、小学校で十分に習っているはずだが、成長するうちに忘れてしまう。その原因のひとつに活字の影響があるのではないかと、小嶋先生は指摘する。

「活字は同じ大きさの中に、垂直・水平に漢字を押し込めています。そのため私たちは本来の字の形を忘れがちですが、書き文字の美しさはその伸びやかさにあります

窮屈なスペースに押し込めようとしないで、本来の形に伸び伸びと書いてください。そうすればとてもきれいに、バランスのよい字が書けるはずです」

小嶋帰心
こじま・きしん 書家、書道・ペン字講師。本名、小嶋憲次。
東京教育大学教育学部書道専攻卒業。國學院大學兼任講師。国士舘大学、國學院大學、カルチャースクール等で書道・ペン字講座を指導。著書に、「基本ペン字の書き方」「新書道講座」「初歩の書道教本」「たのしい習字」「臨書入門講座」他。

講座の後半では一人一人に丁寧に指導を行う

 

◆取材講座:「暮らしに役立つペン字講座」(国士舘大学公開講座)

取材・文/まなナビ編集室(土肥元子)  写真/まなナビ編集室(講座写真) taniho/fotolia(履歴書)

(初出 まななび  2017/12/21)

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載