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赤のルージュをまとい政治を動かす!「女神の見えざる手」【月イチ映画のススメ】

こんにちは、映画ライターの此花さくやです。仕事に家事にと分刻みに動いているkufura読者の皆さん。忙しさに時間を消費され、毎日があっという間に過ぎ去りますよね。

だからこそ、筆者は月に一度の映画鑑賞をおすすめします。映画館に行って現実から自分をシャットアウトし、疲れ果てた心に眠る喜怒哀楽を思いっきり吐き出したり、登場人物が発するなにげないセリフに救いを感じたり、私たちが生きる社会について考えたりすることは、疲労した心を癒して明日への活力につながります。そんな思いから、今月より皆さんと同じく働く主婦として、厳選した映画をご紹介していきたいと思います!

今回ご案内するのは、10月20日公開の映画『女神の見えざる手』。ワシントンD.C.で活躍する“敏腕ロビイスト”、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャスティン)が銃規制法案を巡って繰り広げるサスペンスドラマです。

アメリカの銃規制、ロビイストによる世論操作、“良心”にそって生きることの大切さを教えられる本作。手に汗握るストーリー展開のほかにも、母から子へ伝えたいメッセージが散りばめられています。同時に、エリザベスが魅せるファッションもステキなんですよ!

それではまず、物語のテーマであるアメリカの銃規制についてお話したいと思います。

銃規制が進まない国、アメリカ

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つい先日10月1日(現地時間)にも、ラスヴェガスで銃乱射事件が起こるなど、銃犯罪が後を絶たないアメリカ。国民の2割以上が銃を持っており、国民一人当たりの銃所持率は世界一といいます。事実、銃愛好家からなる“全米ライフル協会”は大きな利権団体となっています。

世界では日本を含め多くの国が銃を厳しく規制していますが、アメリカでは州によって銃規制の内容が異なります。痛ましい乱射事件が起こる度に国民や議会の間で争点となる銃規制法案。なぜ、アメリカでは銃規制がなかなか進まないのでしょうか?

それは建国以来、アメリカ合衆国憲法修正第2条が個人の銃保持を認めていると多くの人々に解釈されているから。イギリスによる植民地時代や西部開拓時代には市民が銃を持って立ち上がりアメリカという国を作り上げたという歴史的背景が、“銃をもつ権利=自由”という誇りを生み出したのかもしれません。

ちなみに、アメリカは住む場所によって銃に対する考え方がガラッと変わります。筆者が住んでいたマンハッタンでは銃なぞ見たことがありませんが、銃愛好家が多いテキサス州ダラス在住の友人によると、ブッシュ政権からオバマ政権に代わった2004年には、近所の人達が「オバマ政権になって銃規制法案が通ったら銃が買えなくなる!」と慌てて銃を買いに走っていたのだとか!

ネットやスーパーで銃が買える地域があるなんて、日本人からは考えられませんよね。

私的な政治活動を行う「ロビイスト」とは?

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映画『女神の見えざる手』の主人公であるロビイストのエリザベス・スローンは、「女性も銃をもつべき」というキャンペーンを立ち上げて新たな銃規制法案を廃止に持ち込むという仕事を銃擁護派団体から依頼されます。しかし、どうしてもそのプロジェクトが気に入らず、勤務していた大手のロビー会社を辞めて小さなロビー会社に転職。そこでの仕事は銃規制法案を支援すること。以前勤めていた会社を敵に回し、圧倒的に不利な条件で戦いを挑むことに……。

日本では聞きなれない職業ですが、ロビイストの業務内容は国会議員、政治家、政府職員にコンタクトを取り、クライアントの意向にそった政策を提言して政策が実現されるよう“私的な政治活動”(ロビー活動)をすること。多くのロビー専門会社がアメリカには存在しています。

ですが、ロビイストを雇う利権団体は往々にして政治団体に献金を行っていることから、政治家との癒着や買収を防ぐため、公務員以外でロビー活動を行うのは、登録されたロビイストだけと法律で決められています。

アメリカでは、ロビイストの多くは修士号や博士号を取得したエリート軍団という位置づけ。トップロビイストになると年俸は1億円を超えるのだとか! エリザベス・スローンはそんなトップロビイストのひとりなのです。

「働く女性の鎧」…ファッションにも注目!

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オスカー・デ・ラ・レンタ、アレキサンダーワン、イヴ・サンローランなどのハイファッションブランドでかためられたエリザベスの仕事着。さすがに私たちのような一般庶民は手が出せませんが、黒を基調とした洋服に15cmのピンヒールと真っ赤な口紅をあわせるスタイリングは、威圧感漂う美しさが圧巻。“働く女性の鎧”として勝負服のお手本するのはいかがでしょう?

黒ジャケット: Yves Saint Laurent 白シャツ: the Row 黒パンツ: Victoria Beckham
黒トップス: Alexander Wang 黒スカート: Oscar de la Renta 黒バッグ: Saint Laurent

世論の在り方に一石を投じた『女神の見えざる手』

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作中展開される熾烈なロビー活動からは、ロビイストが政治団体への献金によって政治家を動かし、メディアを操作して世論を形成していく様子がまざまざと映し出されています。

物語を追っていくうちに、はたして政治家は選挙以外のことを考えているのか、ニュースは真実を伝えているのか、そもそも国民大多数が共有する世論なんて存在するのか、といった疑問がとめどなく湧き出てくる本作。長い物に巻かれるのが人間の習性ですが、そうではなく、私たちは自分の頭で考え自分なりの答えを見つけなければいけない。それがこの映画の一番伝えたかったことかもしれません。

 

母親として、SNS社会に生まれた現代の子供たちに、情報の裏を見抜く力を培い自分の良心を信じて行動することを教えなければ……映画『女神の見えざる手』をみて、そんな想いがこみ上げました。皆さんは、この映画からなにを感じるでしょうか?

『女神の見えざる手』

10月20日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

配給:キノフィルムズ

© 2016 EUROPACORP – FRANCE 2 CINEMA

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