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焦らなくて大丈夫!専門家が教える「小学生の食べ物の好き嫌い」と上手に付き合う方法

子どもは大人と比べて食べ物の好き嫌いが多いものですが、小学生くらいになると徐々にそれも減ってくるといいます。ですが、「うちの子は小学生になっても、まだまだ好き嫌いが多くて……」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、小学生の食べ物の好き嫌いと上手に付き合う方法について、小児栄養学の第一人者である帝京科学大学教授の上田玲子先生にお話をうかがいました。

歯の生え変わりによる食べにくさも原因に

小学生になると偏食も徐々におさまってくる場合が多いと思いますが、それくらいの年齢になっても、まだ好き嫌いが多い子どもがいるのはなぜでしょうか?

「子どもは原始反射として、“腐敗”の味である酸味と“毒”の味である苦味を本能的に嫌います。年齢とともに徐々にそれはなくなっていきますが、小学生くらいだとまだまだ好き嫌いが残っている場合が多いもの。また、トマトやナスなどのように食べたときにグニュっとする感触のものも、腐ったときの食品形態と似ているため、このような感触の食品を嫌がることもあります」(以下「」内、上田さん)

たしかに、生のトマトが嫌いな子どもって意外と多いですよね。あのグニュっとした食感と酸味に、その理由があるのかもしれません。

「また、この時期は乳歯が抜けて永久歯が生えてくるころなので、意外と物が食べにくい時期でもあります。歯がなくてもうまくかみ切れるようにするなど、食べ物の調理形態を子どもに合わせて考えてあげることも必要です」

みなさんも子ども時代に経験があると思いますが、たしかに歯の生え変わる時期は、口の中がなんとなく気持ち悪かったり、固いものなどが噛みづらかったりします。

「食べ物は食べ続けることによって好きになるといわれています。少しずつでいいので、嫌いなものを食べ続けるような環境を作ってあげることも大切です。ただし、大体の子ども、特に男子の場合は、思春期の第二次成長期でグンと好き嫌いが減り、なんでもよく食べるようになるので、あまり心配しなくても大丈夫です」

子どもの好奇心を引き出す工夫が効果的

歯の生え変わりに合わせた調理方法や、嫌いなものを食べ続けさせるための環境づくり以外にも、小学生の好き嫌いを克服するための効果的な方法はあるのでしょうか?

「好き嫌いは、子どもによる差はもちろん、男女差もけっこうあるので、対処法はそれぞれの子どもに合わせるしかありません。ただ全体的には、調理法として、嫌いなものもカラッと揚げたりすると食べられるようになる子が多いようです。また、周囲の人が楽しく、好き嫌いなく食べる姿を見せながら、子どもといっしょに食卓を囲むことも大変効果的です」

ちなみに、過去の調査によると、子どもが嫌いな食べ物を食べられるようになったきっかけは、以下のとおりだそうです。

第5位・・・その他(5%)

第4位・・・友人のまね(10%)

第3位・・・大人のまね(17%)

第2位・・・強制(21%)

第1位・・・好奇心から(47%)

「食べられたきっかけの1位は“好奇心から”。嫌いな食べ物については、いっしょに料理をする、家庭菜園で育ててみるなど、好奇心を引き出すような工夫が有効です。大人のまねや友人のまねなどのモデリングも効果的なので、やはりいろいろな人といっしょに食べることが、子どもの好き嫌いを克服する方法として、とても効果があると考えられます」

「強制」も21%とけっこう多い割合でしたが、小学生になると自尊心もかなり強くなるため、嫌がっているのを無理に強制したり、嫌いなものを何かに混ぜたりしてごまかして食べさせようとすると、さらに嫌がってしまう場合もあるとのこと。小学生の場合は、子どもの様子を見ながら、心と体の年齢に合わせて上手に対応していく必要がありそうです。

様子を見ながら気長に待つのがいちばん

子どもの嫌いな野菜の筆頭でもある、にんじんやピーマン。みなさん、子どもは平均何歳くらいになると、これらの野菜を食べられるようになると思いますか?

上田先生によると、にんじん・ピーマン・玉ねぎ・納豆が食べられるようになるのは、平均で10.2歳。15歳の時点でようやく80%の子どもが食べられるようになるんだそうです。

「このことからもわかるように、子どもがある程度好き嫌いなく食べられるようになるまでには、意外に長い時間がかかります。基本的に、ほとんどの食べ物はいつかは食べられるようになるもの。親は焦ることなく、子どもが食べやすい環境を整えたうえで、じっくりと見守ることが大切でしょう」

 

いかがでしたか? 子どもがある程度何でも食べられるようになるまでには、思っていた以上に時間がかかることがわかりましたね。ですから、小学生になってまだ好き嫌いが多いという場合でも、親はそれほど焦らなくても大丈夫。

食事の際は、「これもちゃんと食べなさい!」と怒ってばかりいないで、まずは笑顔で「これ、おいしいね!」と言いながら、子どもといっしょに食卓を囲んでみましょう。きっと子どももそのうちに、嫌いなものも少しずつ食べてくれるようになるはずです。


【取材協力】

上田玲子

帝京科学大学教育人間科学部幼児保育学科教授、栄養学博士、管理栄養士。専門は小児栄養学、小児保健学。小児栄養学の第一人者として、テレビなどのメディアで幅広く活躍するほか、関連する著書の執筆も多数あり。「ヘルシーな食事と心豊かな時」を提案するブログも更新中。

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