夜寝る前にスマホやパソコンを見るのはやめましょう、とはよくいわれる話です。目の奥には中枢時計があり、覚醒を抑制し寝入りやすくするホルモン「メラトニン」を分泌しています。しかし強い光が目に入ると、メラトニンの分泌が妨げられ、その結果、寝つきにくくなってしまいます。
これはスマホやパソコンだけではなく、テレビや白色灯でも起こります。寝室はできるだけ間接照明にしたほうがよいでしょう。
また、メラトニンの分泌を抑えてしまうのは「明るさ」だけではありません。人間の体は夜間、副交感神経が優位になることでリラックス状態に入ります。しかし、サッカーで応援するチームが勝った!とか、ひどい事故が起きたとか、そうした感情を揺さぶる情報が入ってくると、交感神経が刺激されて覚醒(興奮)状態に入ってしまいます。
夜寝る前にスマホやメールを見ると眠れなくなる原因のひとつには、興味のあるものを見たり、友人とのメールに心が揺さぶられたりして覚醒度が上昇する影響も大きいのです。
光だけではなく、こうした脳を刺激する情報も夜には触れないほうが、質のよい睡眠をとるには大切です。
また、時計も要注意です。夜中に起きると、つい時計で時間を確認してしまう人も多いと思いますが、「もう○時なのに起きてしまった……」などとかえって心を不安にさせてしまいます。
答えは、A・B・Cすべてです。
よい睡眠のために布団に持ち込んではいけないもの
●スマホを布団に持ち込むのはやめましょう。光が目に入って眠気を誘うメラトニンの分泌が妨げられるだけでなく、ドキドキする情報に触れることで感情が高ぶって眠れなくなります。
●同様の理由で、新聞やドキドキするようなサスペンス小説なども避けたほうがよいでしょう。
●時計を近くに置いたり、トイレに置いたりしないようにしましょう。夜間目が覚めた時やトイレに行った時、思わず時間を確認してしまい、「こんな時間に起きてしまった」と不安になって、かえって不眠の原因を作ってしまいます。「就寝したら朝になるまで時計は見ない」を徹底しましょう。
メラトニンは暗くなると出てくる性質があります。どうしても夜に仕事でパソコンを使う場合は、ブルーライトをカットするパソコン用メガネをかけるなどの予防措置を取ったほうがよいでしょう。
また、テレビをつけたまま寝るのは厳禁。深く寝入ったつもりでも、視覚や聴覚が刺激されて深い睡眠になりません。
寝るときはしっかり暗く静かに、起きるときは朝日を浴びて。この、メリハリが質のよい睡眠に一番必要です。
◎この記事は、岡島義(おかじま・いさ)先生(早稲田大学人間科学学術院助教)の著作『4週間でぐっすり眠れる本─つけるだけで不眠が治る睡眠ダイアリー』(さくら舎刊)をもとに、岡島先生へのインタビューを交えて構成しています。岡島先生がNECソリューションイノベータと開発したスマートフォンアプリ「睡眠日誌」も無償で提供されていますので、ぜひ本を見ながら睡眠記録を取りましょう。
早稲田大学人間科学学術院助教 臨床心理士・専門行動療法士・産業カウンセラー
1979年東京生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業、北海道医療大学大学院心理科学研究科博士課程修了。博士(臨床心理学)。公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、同研究所附属代々木睡眠クリニック心理士、東京医科大学睡眠学講座兼任助教、医療法人社団絹和会睡眠総合ケアクリニック代々木主任心理士等を経て現職。睡眠障害や気分障害、不安症を認知行動療法により改善する研究を行っている。著書に『4週間でぐっすり眠れる本』(さくら舎)、共著に『認知行動療法で改善する不眠症』(すばる舎)、『不眠の科学』(朝倉書店)。NHKスペシャル 「睡眠負債が危ない~“ちょっと寝不足”が命を縮める~」を始め睡眠番組への出演も多数。
取材・文・写真/まなナビ編集室(土肥元子)
(初出 まななび 2018/03/21)