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ダウンはOK? 現代版・葬儀で着る「喪服用コート」のマナーと現実

/ [最終更新日] 2022.03.03

寒い時期の葬儀ではコートが必要になります。礼装用コートは売っていますが、突然のご不幸にすぐに用意するのは難しいことも。では、寒い冬場の葬儀にはどんなコートを着用していけばいいのでしょう? 葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントの吉川美津子さんに教えていただきました。

礼装用でなくてもいい? 喪服用にできるコートの種類

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実際に葬儀で着用されているコートの色と種類

寒い冬の葬儀ではコートが必要になります。冠婚葬祭マナーでは一般的に、コートの色は黒、濃紺、ダークグレーで、光沢のある素材のものやカジュアルなダウンコートは避けたほうがいいとされています。

シンプルな礼装用コートを着用すれば間違いはありませんが、使用する機会がほとんどないのであれば不経済になってしまうかもしれません。

昨今、実際の葬儀では黒のダウンコートを着ている人は多く、このほかトレンチコート、フード付きのダッフルコートも葬儀の場でよく見かけられます。

デザインがかなり派手、革や毛皮のコートしか持っていないといったことがなければ、手持ちの冬コートで参列してもいいでしょう。コートの色が明るく、周囲から目立つことを避けたい場合は、会場の外で脱いでしまえば問題ありません。

ただし社葬は、礼装用のコートかそれに準じるシンプルなデザインのものを着用したほうがいい場合があります。あらかじめ職場の人などに確認しておくといいでしょう。

葬儀専用のコートはあるの? 礼装用コートについて

葬儀専用のコートはありませんが、ブラックフォーマルの1アイテムとして必要な場合は、礼装用コートを揃えてもいいでしょう。

デザインはステンカラーなどのシングルタイプ、着丈はひざ下とやや長めなのが主流です。素材はシワになりにくいポリエステル混などで、オールシーズンタイプがほとんど。冬に温かく着用できるように、取り外しのできるライナーが付いているものもあります。

なかにはセレモニースーツに合わせて着用できるように、サテンなど光沢の強い素材のコートもありますが、たとえダークカラーでも葬儀には不向きなので注意しましょう。価格は1万〜2万円程度から10万円以上と幅があります。

葬儀で礼装用コートが必要であれば、レンタルする方法もあります。またリサイクルショップでも取り扱いはありますが、喪服のように流通量が多くないため在庫がないことも。

リサイクルショップで探したい場合は、あらかじめ問い合わせてみるといいでしょう。

喪服用のコートを選ぶときのポイントと注意点

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遺族は礼装用コートも準備したほうがいいの?

遺族は参列者よりも格が上となり、正喪服もしくは準喪服を着用します。そうなると、コートも正式な礼装用を用意したほうがいいと考えがちですが、実際の葬儀では、遺族は室内にいることがほとんど。葬儀場から火葬場への移動も車となり、コートを着るタイミングはほとんどないのが現実です。

礼装用のコートを新たに購入しなくても、とくに困らないケースが多いと考えられます。

春用コートでおなじみのトレンチコートは着用OK?

葬儀で着用するコートは黒、濃紺、ダークグレーがベターですが、ベージュやオフホワイトの春用コートを着用したとしても、マナー違反にはなりません。

ただ参列者の服装が黒一色に近い葬儀会場では、コートの明るい色味が目立ってしまうこともあります。

気になるのなら会場の外で脱ぐか、コートは着用せず、インナーの枚数を増やすなどほかの方法で防寒対策をするといいでしょう。

革・スエード・毛皮など殺生をイメージする素材はNG

葬儀で着用するコートの色やデザインに厳密なルールはありませんが、素材には注意しましょう。

「殺生を控える」といった意味から、革、スエード、毛皮は避けます。フェイクファーも着用しないほうがいいでしょう。襟元などに着脱式のファーがついている場合は外しましょう。

葬儀で着用するコートのサイズ選び

冬の喪服は、長袖・ジャケット・ボレロなどの組み合わせになります。その上からコートを羽織るので、細身のデザインだと、肩周りや腕周りがもたつく可能性があるのでサイズにゆとりのあるものを選ぶといいでしょう。

コートは会場で預かってもらえないことも考えて、かさばりにくいタイプのものだとベターです。

普段使いのコートで葬儀に参列するときの工夫

普段着用しているコートも工夫次第でシンプルに見せることができます。もしコートのボタンがゴールドやシルバーなどの目立つものであれば、葬儀用のボタンカバーを使用するのも一案です。

またフードやベルトがカジュアルだと感じるのなら、外してしまってもいいでしょう。

ダークカラーのストールを持っていれば、コートの上にかけたりコート代わりにする方法もあります。

雪の多い極寒地域ではマナーよりも寒さ対策が重要に

氷点下も珍しくないような寒冷地での葬儀では、冠婚葬祭マナーよりも防寒対策が重要になってきます。遺族側もその点は理解しているので、ダウンコートはもとより、ニットの手袋や長靴を履いて葬儀に参列することもあります。

寒冷地の葬儀に参列する際は、どの程度の防寒対策をするといいか周囲に尋ねても。無理をして参列者が風邪をひいたり体調を崩してしまっては、かえって心配や迷惑をかけてしまいます。

厳密なルールにはそぐわないかもしれませんが、現実的には喪服を着用するなど弔意を表す服装を心がければ細かいことは問われないことが多いでしょう。

 


 

【取材協力・監修】

葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント

吉川 美津子(きっかわ みつこ)

大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、専門学校にて葬祭マネジメントコース運営に参画。現在は葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントとしての活動に加え、医療・介護と葬送・供養の連携を視野に葬送・終活ソーシャルワーカー(社会福祉士)としても活動している。

共同監修『葬儀・相続 手続きとお金』(扶桑社)、共著『死後離婚』(洋泉社)、著書『お墓の大問題』(小学館)など。

葬儀ビジネス研究所

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