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なぜ女は転びそうで転ばなかった話をするのか?

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家庭や職場で絶え間なく起こっているのが、男女間の誤解やすれ違いだ。その原因は実は脳の構造の違いにある、と説く黒川伊保子先生(株式会社感性リサーチ代表取締役)の講座は、いよいよ男女の脳の特性の違いに踏み込んでいく。

男は転んだ話をする、女は転びそうで転ばなかった話をする

AI(人工知能)の研究の過程で男女の脳の違いに気づいた黒川伊保子先生は、研究を深めれば深めるほど、あらゆる領域で大きな差があることがわかってきた。「男女の脳は全く別の装置」(黒川先生)とも言い切っている。

もちろん個人差は大きく、男性であっても女性脳型の人もいれば、その逆もある。例外はたくさんあるのだが、”群”として見た時、その差は歴然としているという。

黒川先生がひとつの例としてあげるのが、”共感”の違いだ。

女はなぜ、転びそうになって、転ばなかった話をするのか?」。1990年代、黒川先生が働き初めて数年が経ったころの経験だ。
新人の女性社員が朝出社して、「さっき階段でつまずいて落ちそうになっちゃったんです。怖かったー」と声をあげると、リーダーになったばかりの男性社員は「で、何段落ちたの?」と聞いた。女性社員は「落ちてませんけど」と下を向き、なにやら冷たい空気が流れた。

「転びそうになって転ばなかった話って、情報量ゼロ。何の意味があるの?」。男性脳の典型的な反応だ。

だが、女性脳は全く違う。「それは怖かったわねぇ」と共感する。数人の女性がいれば、新人女性の話をきっかけに「先端がとがった靴はころびやすい」などとさらに話題は広がる。

女性は手すりのそばを歩くように

人間の女性はほ乳類の雌として子どもを身ごもって育ててきた。その歴史の中で、まず、自分の身を守るための情報に敏感になった。特に自分や子どもが危険にさらされる情報に耳をそばだてる。共感とはそのひとつの形だ。

情報として受け取るだけでなく、共感して感情として採り入れることで、将来、自分が同じ危険に遭った時、素早くその情報を取り出し、対処できるようになる。新人社員から「怖かった」話を聞いたほかの女性たちは、無意識のうちに階段では手すりのそばを歩くようになるという。

女性にとって、おしゃべりは決して無駄な時間ではないのだ。

共感してもらう側にもメリットがある。怖かったという信号が入力されたままでは脳はいっぱいだ。話すことで出力して脳を解放する。もし、その後の女性社員の仕事の効率を上げたければ、上司は「そうか、怖かったんだねえ」と共感するのは必須事項。「共感は、女性脳にとって脳を正常に走らせるために大事なハンドリング」(黒川先生)だという。

逆に、もし共感しなければ、女性社員のうっぷんはたまり仕事の能率を著しく下げるだけでなく、さらに……。

男性社員は明らかに失敗した。が、それに気づいてもいない。ありふれた光景ではあるが、深刻なミゾに発展しかねない。男性も共感を学ぶべきなのだ。

〔講師profile〕黒川 伊保子(くろかわ いほこ)●(株)感性リサーチ代表取締役。人工知能研究者/脳科学コメンテイター、随筆家、日本感性工学会評議員。脳科学の見地から「脳の気分」を読み解く感性アナリスト。大塚製薬「SoyJoy」のネーミングなど、多くの商品名の感性分析に貢献している。宣伝会議のコピーライター講座で講師も勤める他、「男女脳差理解によるコミュニケーション力アップ」を目的とした講座も人気。

◆取材講座:「男女脳差理解と感性マーケティング」明治大学リバティアカデミー(2017年1月26日、2月2日、9日、16日)

文/本山文明 写真/黒川伊保子先生、(c)Monet – Fotolia2017年1月26日取材

(初出 まななび  2017/04/27)

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