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ダイバーシティへの切り札!多様さ包み込む「母性」のチカラ|猪熊真理子さん(株式会社OMOYA代表取締役)

『BizLady』では、各界で輝かしく活躍している女性のみなさんに、ゲストライターとして寄稿いただいています。今回のゲストライターは、”女性が豊かに生きていくために自由に学ぶ”をコンセプトに、女性なら誰でも参加できる学びの場『女子未来大学』を設立した、株式会社OMOYA代表取締役の猪熊真理子さんです。(編集部)

前回は、“女性が男性化(オス化)しないと活躍できない社会”から、“女性が女性らしさやその人らしさを活かして活躍できる社会”へと向かっていくために、あらためて“母性”という価値観に注目してみようというお話をしました。

では、この“母性”的な価値観というものは、いったいどういうものなのでしょうか? なぜこれからの時代にこそ必要なコンセプトといえるのでしょうか?

多様な価値観を受け入れる“母性”のチカラ

ソーシャル化やグローバル化が急速に進んでいる今、時代はどんどん“多様化”の方向にむかっていくと言われています。企業の中でも、女性活躍に取り組む部署やプロジェクト等に“ダイバーシティー”という言葉が使われることが良くありますが、これも“多様性”のことを意味しています。

女性は昔から“コミュニティ”の中で生活をしてきたと言われます。きっとみなさんも、学校や職場のコミュニティだけでなく、女子会やサークルやボランティア活動、働く女性たちやママのコミュニティなど、何らかしらの共通項をもつ集団(=コミュニティ)で集まり、“共感”をベースにコミュニケーションを取っていることが多いことでしょう。

ただ、本当の意味で“多様な価値観”を理解するためには、共感の力だけでは難しい。時に“共感”は、同一でない他の価値観を排除してしまうことがあるからです。

本当の意味で、一人ひとりが多様な価値観を理解できるようになり、社会のダイバーシティー化を進めていくためには、“母性”こそがきわめて重要なコンセプトになるのではと考えています。

“ひとりで悩んじゃう”女性たちが増えている

私はこれまでたくさんの女性たちと出逢ってきましたが、その中で、社会人になってから「友達がほとんど増えていない」という女性たちに出逢うことがよくあります。仕事が忙しく、職場と自宅とを行ったり来たりの毎日で、学生時代の友達はいるけれど、社会人になってから友人が一人も増えていない……と。そういう女性たちは、自分自身のライフプランやキャリアについても、一人で悶々と悩んでいることが多いように思います。

自分でない誰か(=他者)は、自分自身を見せてくれる“鏡”のようなものです。自分と似ている人とも、自分が全く共感できないような人とも、たくさんの人達と出逢うことによって、自分はどういうオリジナリティや強みや弱みを持っているのかを知ることができるからです。

その一方で、人生や生き方に不安や迷いを抱えている人は、たいてい「一人で悩んでしまう」ことが原因としてあると感じています。コミュニティの希薄化やコミュニティの偏りが、一人ひとりを孤立させ、悩ませ、弱くしているように思うのです。

とくに社会人になってからは、日々の中で “人と出逢う”機会を創ろうとするか、出逢いを通して“自分が学ぶ”機会を創ろうとするかには個人差があり、その差は時間とともに大きく開いていきます。いわゆる“経験格差”が生まれてしまうんですね。

とはいえ、学びにつながるような良質な“人と出逢う“機会をつくるのは、働いている女性にとって簡単なことではない、というのも事実です。

自由に学ぶ=豊かに生きる

私が代表を務めている株式会社OMOYAでは、社会人女性の学びの場である『女子未来大学』を運営しています。この『女子未来大学』は、女性たちが自分と異なる多様な価値観に触れ、自分と違う世代の人たちとも交流でき、共に学び、共に成長し合えるコミュニティを創りたいという想いで、同じ想いを持つファウンダー二人と一緒につくりました。

女子未来大学のコンセプトは、 “女性が豊かに生きていくために自由に学ぶ”ということ。

“豊か”とは、自己の可能性を最大化できること。そして“自由”とは、自分の可能性に限界を設けないこと。そう定義したうえで、自らの人生を主体的に歩むことができる女性たちを支援し、相互に学び合えるコミュニティを提供できることを目標にして、日々の活動に取り組んでいます。

女子未来大学では、キュレーション授業という形で、特別な講師の方をお招きし、セミナーや講演、ワークショップなどの授業をイベント形式で開催しているのですが、たまたま興味があるテーマで集まる参加者の皆さんは、OLから主婦の方、経営者、お仕事をお休みしている方など17〜49歳くらいまでの多様な女性たちです。職種も年齢も価値観も様々。普段あまり出逢わないような方とも一緒になることが多々あります。

そうすると、普段出逢わない価値観に出逢うので、不思議と相手のことをもっと知りたいと思うようになるんですよね。そして相手のことを知りながら、一度受け入れる。受け入れながら、自分との共通点や違いを確認することになる。「全然違うお仕事をしてるのに、この人は自分と似ているな」とか、「こんな考え方もあるんだ」という発見が学びになり、結果的に“多様性”を理解する集団としてコミュニティが機能し始めるのです。

脱リーダーシップ時代のキーコンセプト

母性の持つ力の一つとして、“受け入れる”力があります。ありのままを受け入れる。自分と違う価値観を受け入れる。自分の“正しい”が誰かにとっては“正しくない”こともあることを受け入れる。

“多様性”のない組織や集団では、時にマジョリティ(多数派)にとって都合の良いことが、一つの正義や通念としてまかり通ってしまっていることがあります。例えば、日本の働く環境の多くは、まだまだ“仕事を中心に暮らせる人”を中心に、組織や働き方が決まっています。そうすると子育てや介護や病気など、様々な事情で、“仕事を中心”に暮らせない人とのギャップが生まれ、仕事を中心に暮らせない人は活躍できる機会を失ってしまうのです。

経済が急成長していく時代には、強いリーダーシップがあり、構築する力がある組織の方が強く、早いスピードで経済や事業を構築していくことができました。でも今のように飽和した時代においては、スピードや効率性だけでは新しいものを生み出すことができません。消費者の価値観も多様なので、企業も多様なニーズに応えられる必要があります。そうすると一人のリーダーの価値観だけでは、どうしても乗り越えられない壁が出てくるのです。

そういった時にこそ、多様な価値観を“受け入れる母性の力が、新たなイノベーションを牽引する可能性をはらんでくると考えています。

“母性”は、“受け入れる”だけでなく“生み出す”“育む”という力があることも重要です。母性的なマネージメントやリーダーシップにより、多様なマーケットのニーズを受け入れ、そういったマーケットの多様性も理解した上での新しい価値観を“生み出し”“育む”ことができる。そんな時代の到来が、いよいよ見えてきていると言えるのではないでしょうか。

 

以上、今回は“母性の時代”が時代に求められている理由についてお伝えしましたが、いかがでしたか?

次回は、組織や事業において、実際に“母性”的なマネージメントやリーダーシップを活かすための具体的なコツについて触れたいと思います。

【筆者】​​猪熊真理子(いのくま・まりこ)

株式会社OMOYA 代表取締役社長。東京女子大学文理学部心理学科卒業。学生時代に女性の自信形成に興味を持ち、心理学を学ぶ。2007年(株)リクルートに入社。ブライダル情報誌「ゼクシィ」で編集や企画の経験を積み、美容サロン検索・予約サイト「Hot Pepper Beauty」で事業戦略、ブランドプロモーション戦略、マーケティングなどに携わる。2011年から「女性が豊かに自由に生きていくこと」をコンセプトに、心理学・美容・ファッションなどの観点から商品やサービスの企画・PR・女性支援などを行い、Fashion&Beauty Bloggerとしても活動。2014年2月にリクルートを退職し、3月に株式会社OMOYAを設立。2015年は「人がより良く生きる、より豊かに生きるために」をテーマに、経営・ブランドコンサルティング、企画・マーケティング、女性活躍推進事業などを行っている。

2015/7/2 BizLady掲載

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