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脱ストレス会議!プロが伝授「決して忘れてはいけないこと」【踊らず進む!会議のお作法】vol.1

「あぁ、また会議か。自分の作業を進めたいのになあ……」なんてため息を漏らしつつ、今日もとぼとぼと会議室へ向かうそこのあなた。はなから会議そのものをムダだと決めつけて参加していませんか?

本来、どの会議も“目的”があって行われているはず。では目的を達成して有意義な時間にするためには、メンバーそれぞれがどのような気持ちでのぞめばいいのでしょうか。

【踊らず進む!会議のお作法】では、会議を“意味あるもの”にするための基礎知識や覚えておきたいことをチームビルディング・コンサルタントの尾方僚さんに教えていただき、おさらいしていきます。初回は、大小問わずすべての会議において「決して忘れてはいけないこと」です。

会議の舵取り“船長”が「決して忘れてはいけないこと」2つ

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突然ですが、ここでクイズです。会議を1隻の船に見立てていますので、ぜひ考えてみてくださいね。

東京から出発してパナマ運河を渡り、メキシコを目指す船があります。乗組員は50人、運輸するものは原油。

Q.あなたがその船の船長だった場合、決して忘れてはいけないことが2つだけあります。それは何でしょうか?

「人命を守る」「安全を確保する」「航路を確認する」など、さまざまな要素が頭をめぐりますが、答えは……?

A. ズバリ、「到着時間」と「目的地」の2つです。

「定刻通り」に船を「目的地へ到着させる」こと、それが船長の使命なのです。

会議は「主題を明確に」「時間通りに」達成させることが第一

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上記クイズの運輸物は原油です。腐るものではないけれど、1日で価格が暴落することも考えられるため、必ず“予定通り”に“目的地に到着”させることがまず第一!

そして、この目的を達成するために必要なのが“乗組員の“人命”“安全”“航路”などになるのです。

これは会議においても同様で、船の船長は会議の“主催者”または“司会者(主催者を兼ねることが多い)”。主題を明確にし、意識をもって時間内に達成することが、“会議をすることによって知的生産性を上げる”ための重要なポイントになります。

日本ではよく「ではそれぞれ議題を持ち帰って」という発言を耳にすることがありますが、これは目的地への到着を先延ばしにしてしまう行為。

先ほどの1隻の船の例でいうと、原油価格が暴落するなどの予期せぬアクシデントがあった場合に、遅れたことによって多大な損失を招く恐れがあるのです。

全ての参加者が「会議で忘れてはいけない基本」3つ

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では次に、船長である主催者や司会者のもと、会議に参加する人たちの心得、および忘れてはいけないことは3つ見ていきましょう。

(1)「なぜ会議が行われるのか」を明確に共有する

会議の目的はさまざまですが、おおよそ次の3種類に分けられます。

・「物事を決めるため」の会議

方針などの懸案事項を決定する目的で行われます。

・「情報共有をするため」の会議

社内人事やプロジェクトの進行状況など、情報の共有を目的に行われます。

・「アイデアを出し合うため」の会議

ブレインストーミング(通称・ブレスト)と呼ばれる、商品開発やプレゼン企画・イベント実施などの新規案件について、アイデアを出し合う目的で行われます。

事前に参加者全員が把握しなければならないのは、“会議の目的”と“最終的なゴール”です。

そのため、会議を主催する人は、「どんな目的で行うのか」「今回のゴールをどこに設定するか」を明確にしておくことが不可欠です。この部分をあいまいにしたまま実施すると、結局どこの目的地にも到着できず、漂流して幽霊船になってしまうことにもなりかねません。

(2)「なぜ自分が参加するのか」を認識する

目的をはっきりさせたら、次は参加者1人ひとりへの共有と、それぞれの役割分担、本人への認識づけが肝要です。

会議に参加する人には、いくつか役割があります。司会進行(※主催者を兼ねていることが多い)、発表者、書記、雑務・オブザーバー、議長などがそれにあたります。

意外と多いのが、呼ばれるがまま、ただ同席しているだけの参加者。会議に招集されるということは、その場に呼ばれた何らかの目的があるはずです。

発言をするだけでいいのか、書記をしてほしいのかについて、主催者は各参加者に事前に伝えるべき。そして参加者は、たとえ役割が明確にされなかったとしても、自らの役割・立場を自分なりに解釈して、会議にのぞむようにしましょう。

(3)発言しないことは最大の罪…何かしら「発言する」

実際に会議が始まったら、参加者全員が心得ておくべきことは“必ず何らかの発言をする”こと。仕事の知的生産性を上げるための会議で、発言しないことは“仕事をしていないこと”と一緒であるとみなされるのです。

もし、発言するタイミングを逃してしまった場合は、途中や最後のまとめの時間にどこかで「Aさんと同じ意見なのですが」と伝えたり、質疑応答の際に「質問ではないのですが」とひと言付け加えるなどして、自分の考えを述べるのがベター。

ただし、主題からそれてしまうような見当違いの発言は、自分自身が“できない人”と思われてしまうだけでなく、会議という“船”を漂流させる“離反者”となってしまう可能性があるので、注意しましょう。

【進む会議Tips】会議を行う「組織の特性」を知っておく

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そして最後にひとつ、“会議が行われる組織”について知っておくとよい豆知識をお伝えします。

仕事以外でも、マンションの管理組合や町内会、お子さんがいる方は学校のPTAなどの会議に参加することがあると思います。そんなときについ、慣れている会社の会議と比較して「PTAはなかなか懸案事項が決まらない」「管理組合はみんな口々に好きなことを言って困る」などと、不満を持ってしまったことがある方もいるのでは?

しかし、そもそも職場である“会社”と、PTAやマンション管理組合とでは組織の成り立ちが違うのです。ドイツの社会学者フェルディナント・テンニースによると、組織は以下の2つに分類されます。

「ゲゼルシャフト」・・・会社・国家・プロスポーツチームなど、ある決まった目的によってつくられた組織

「ゲマインシャフト」・・・家族・PTA・サークル・町内会など、自然発生的につくられた組織

前者の「ゲセルシャフト」は“利益”面や“機能”面が、後者の「ゲマインシャフト」は“人間関係”が最重要視されます。なので、PTAの会合が毎回“漂流”していたとしても、効率を優先的に求めていない以上、それはある程度仕方のないことなのです。

この前提を理解しておくと、「ゲマインシャフト」組織で行われる会議に参加したときに不要なストレスが軽減されるので、覚えておくことをオススメします。

 

社会人経験が長くなるにつれ、意外と“会議の基本”を「忘れてしまっていた」、もしくは「何となく会議に参加していた」という方もいたのでは?

時々初心に帰り、基本的なことを思い出してみることも大切ですね。

 


 

【取材協力・監修】

チームビルディング・コンサルタント

尾方僚

大手就職情報会社に9年間勤務した後、コンサルタントとして独立。大学や企業人事担当者向けの講演を数多く行い、企業の採用コンサルテーション・研修に従事する。現在、日本女子大学リカレント教育課程 講師、日本工業大学、デジタルハリウッド大学の非常勤講師としてキャリア系科目を担当。著書は『プレゼン以前の発表の技術』(すばる舎)、『100人の前でもキチッと話せる本』(インデックスコミュニュケーションズ)など多数。

【参考】

尾方僚(2011)『プレゼン以前の発表の技術』(すばる舎)

尾方僚(2007)『100人の前でもキチッと話せる本』(インデックスコミュニケーションズ)

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