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「折り合いをつける」の正しい意味と使い方…夫婦仲・人間関係・交渉も円満に…

【仕事も人間関係も円滑にする大和言葉#25】

“折り合いをつける”という言葉は、さまざまな場面で使える便利な言葉です。一方で、あいまいさを含んでいるので、使う時にはちょっとした注意も必要です。

“折り合いをつける”という言葉の意味やNG使用例について解説して頂いたのは、『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「折り合いをつける」の意味は?「譲歩する」との違いは?

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“折り合いをつける”は、交渉、調整の場面において、意見が違う人同士が双方受け入れられる妥協点を探すこと。つまり、「ここであれば同意ができる」という点を探ることを指します。

“折り合い”と似たような言葉には“妥協や“譲歩”があります。“譲歩”は自分の主張を下げて相手に譲ったような印象を与えることがあり、“妥協”は互いにゆずり合って、低い結果に甘んじたニュアンスが出ます。

一方で“折り合い”は、もう少しあいまいで含みがある言葉。「あきらめて譲って決着をした」「強引に主張を通した」ということをボカすこともできる、使い勝手の良い言葉だと言えます。

「折り合いをつける」はどんな時に使うといい?

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“折り合いをつける”は、人間関係から交渉事まで幅広いシーンで頻出する言葉です。ビジネスシーンにおいては、調整に時間がかかっていた交渉ごとの決着をつけようと考えた時や、ようやく交渉の妥協点が見つかった時などに使われています。

また、人間関係の対立をうまく調整して話をまとめる時にも使うことができます。

私生活であれば、町内会やPTA、家族間のちょっとしたもめ事が起こった場合、うまく話をまとめていく過程で使われることがあるでしょう。

「折り合いをつける」の例文は?

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続いて例文を通じて、“折り合いをつける”の使い方をマスターしていきましょう。

【交渉現場での「折り合いをつける」】

・取引先との交渉は概ね折り合いがついた

・来月までに価格交渉の折り合いをつける必要がある

【人間関係の「折り合いをつける」】

・あの2人は仲違いしていたが、なんとか折り合いがついたようだ。

・社員の背景は多様化しているため、みなが折り合いをつけていく必要がある。

【プライベートの「折り合いをつける」】

・新居の間取りについて夫と意見が食い違っていたが、ようやく折り合いがついた

・金銭面で折り合いがつかず、新車の購入は見送りました。

「折り合いをつける」の使い方の注意点は?

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前述したように、“折り合いをつける”という表現は、あいまいさがある婉曲的な表現です。あきらめて譲って決着した場合でもそのプロセスをボカせる点は、長所でもあり、短所でもあります。

例えば、部下や後輩に指示を出す時に「なんとか折り合いをつけてきて」といった言い方ではその本意が伝わりにくいのではないでしょうか。

【「折り合いをつける」のNG表現例】

・(上司が経験の浅い社員に対して)そのあたりは君の判断で担当者と折り合いをつけてよ

→具体的に言わないと、相手に指示内容が伝わらないことがある。

「折り合いをつける」を言い換えると?

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続いて、“折り合いをつける”の言い換え表現をご紹介します。

(1)譲歩し合う

“譲歩”は、自分の主張を下げる意味が強いのですが、“譲歩し合う”とすることで、お互いに求めた条件を下げるという意味になります。

【「譲歩し合う」の例文】

・先方とは譲歩し合うことが必要だ。

(2)着地させる

本来は、空中から地面に下りるという意味ですが、長引いている交渉ごとを“終わらせる”ことの比ゆ表現として使われています。

【「着地させる」の例文】

・協議をなんとか着地させることを目標としよう。

(3)歩み寄る

双方の条件や主張を近づけるという意味。人間関係において、仲が悪い人たちが仲良くなったり和解したりする時にも使います。

【「歩み寄る」の例文】

・意見が食い違うこともあるでしょうが、プロジェクトを円滑に進めるには、両社の歩み寄りが必要だと思います。

(4)妥協点を探る

交渉ごとなどで、双方が納得できるところを探ること。

【「妥協点を探る」の例文】

妥協点を探っていかなければならない。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんにに“折り合いをつける”という言葉について解説をして頂きました。

“折り合いをつける”は、妥協とも譲歩とも言わない、しなやかな大和言葉です。上手に使うことで、円満な人間関係を築くことに役立てていきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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