子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「いたたまれない」の意味と使い方。お詫びシーンでの使い方も【仕事も人間関係も円滑にする大和言葉#23】

“いたたまれない”というのは、どんな気持ちを表すのでしょうか。今回は、意外と知られていないその意味をじっくりと掘り下げていきたいと思います。

解説して頂いたのは、『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「いたたまれない」の意味とは?「いたたまらない」との違いは?

null

“いたたまれない”は、漢字では“居た堪れない”と表記し、その場にいられないような気まずさや精神的に耐えがたい気持ちを表す時に使います。日常生活の会話の中では大きく分けて2つの意味で使われています。

(1)自分が失敗をするなどし、居心地が悪い

(2)相手がかわいそうな様子で見ていられない

ちなみに“いたたまれない”と“いたたまらない”は同義語です。

「いたたまれない」はどんな時に使うといい?

null

ビジネスシーンにおいては、自分が失敗をしたことに対するお詫びや反省の気持ちを表す場面で使われています。

また、その場にいない第三者の様子について言及する時に使うこともあります。例えば、誰かが失敗をしてひどく落ち込んだりしている様子を見て、こちらも辛くなってしまうような状態を表します。

「いたたまれない」の例文は?

null

続いて、例文を通じて“いたたまれない”の使い方をマスターしていきましょう。

【お詫びや反省の気持ちを表す「いたたまれない」】

・このような初歩的な失敗をしてしまい、恥ずかしくていたたまれない思いです

・ご迷惑をおかけし、いたたまれなくなって直接謝罪に参りました。

【共感してつらい気持ちを表す「いたたまれない」】

・営業部の新入社員が意気消沈している様子を見ていると、いたたまれない気持ちになる。

・今朝のトップニュースを見ていたら、いたたまれなくなってテレビを消しました。

「いたたまれない」の使い方の注意点は?

null

例えば、心が傷ついている相手に向かって“痛々しい”と言うと相手を余計に傷つけてしまう場合があるのではないでしょうか。同じく、辛い思いをしている人に直接“いたたまれない”と言うのは避けた方が良い場合もあります。相手との関係性にもよりますが、こちらは同情の気持ちを表しているつもりでも、相手にとっては侮辱されたような気持ちになる事態も想定されます。“いたたまれない”は、その場にいない第三者の様子を表現する時に使いましょう。

【「いたたまれない」NG例】

・落ち込んでいる様子がいたたまれないんだけど、大丈夫?

→“いたたまれない”は、できれば目の前の相手に向かって使わない方が良い。

「いたたまれない」を言い換えると?

null

続いて、“いたたまれない”の言い換え表現をご紹介します。

(1)顔向けできない

自分が失態をしてしまい、恥ずかしくて顔が合わせられない時などに使います。

【「顔向けできない」の例文】

・事前に注意されていたにも関わらずこのような事態になってしまい、先輩には顔向けできません

(2)穴があったら入りたい

穴があったら、その中に入って隠れたいということ。つまり、恥ずかしい気持ちを表す言葉です。

【「穴があったら入りたい」の例文】

・大事なプレゼンで大きな失敗が続き、穴があったら入りたい気分でした。

(3)針のむしろのよう

耐えられないようなつらいシチュエーションを“針のむしろ”(針を植えた敷物)に例えた言葉です。

【「針のむしろのよう」の例文】

・あの時は、周囲の視線が針のむしろのように感じられました。

(4)汗顔の至り

まことにもって恥ずかしいという意味。書き言葉の中で使われることがあるので覚えておきましょう。

【「汗顔の至り」の例文】

・この度の弊社の不祥事につきましては、一社員として汗顔の至りです。

(5)見るに忍びない

見ていて辛くなるような気の毒な状態を表す言葉です。

【「見るに忍びない」の例文】

・そのようなお姿は、見るに忍びなく存じます。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“いたたまれない”について解説して頂きました。

言い換え表現もあわせて覚えておくと、いざという時に役立つのではないでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載