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「ごめんあそばせ」の意味と使い方…どう返すのが正解!?

【仕事も人間関係も円滑にする大和言葉#21】

ドラマやアニメの中で、お嬢様風の女性が「ごめんあそばせ」と言うシーンがあっても視聴者はさほど違和感がないのでは? でも実際に「ごめんあそばせ」と言ったことがある方は少ないと思われます。それでは、もし誰かに「ごめんあそばせ」と言われたら、何と返すのが正解なのでしょうか。

解説して頂いたのは、『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「〜あそばせ」の意味は?「〜あそばせ」は他に何がある?

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「ごめんあそばせ」は、“お許し”を意味する”ごめん”(御免)に、尊敬語で“~しなさってください”という意の“あそばせ”がついています。ですから「お許しください」「ごめんなさい」という意味です。こうした言葉は、“あそばせことば”といって、丁寧で上品な雰囲気を出すために使われていました。「ご覧あそばせ」「お通りあそばせ」というような使い方をします。

「ごめんあそばせ」は、明治・大正期の婦人には自然に使われていた言葉です。昭和初期の生まれの女性には「ごめんあそばせ」を自然に使いこなしている方も見受けられますが、現在ではレトロな印象です。『kufura』読者の皆さんの日常会話においては、ほとんど使われることはないでしょう。

「ごめんあそばせ」はどんな時に使う?

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ビジネスシーンにおいては、「失礼しました」「申し訳ありません」といったお詫びの言葉が多くありますから、「ごめんあそばせ」をあえて使う機会はないと断定しても良いでしょう。もし、あえて使うのなら、気位の高いお嬢様のような雰囲気を出しながらちょっと冗談めかして使うくらいではないでしょうか。ただし、同期同士のような親しい間柄に限った話です。

私生活においても同様で、「ごめんなさい」の代わりに「ごめんあそばせ」を使う機会はほとんどありません。

【「ごめんあそばせ」の使用例】

(親しい間柄で、冗談めかして)「ごめんあそばせ。そこ、通らせてくださる?」

ビジネスシーンで使う機会はほとんどない

「ごめんあそばせ」と言われたらどう返す?

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ビジネスシーンや私生活では「ごめんあそばせ」を自ら使う機会がないと説明しましたが、相手から言われる機会はあるかもしれません。もし、相手が「ごめんなさい」という意味で使っているのであれば、「お気になさらず」「構いませんよ」と返すと会話の流れが自然です。

【「ごめんあそばせ」と言われたときの例】

A:遅れてしまい、ごめんあそばせ

B:どうぞ、お気になさらず。

もし、相手が冗談めかして使っているのであれば、その雰囲気に便乗してもいいのかもしれませんが、あくまでも2人の関係性の中でご判断ください。

「ごめんあそばせ」の使い方の注意点は?

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意味としては、「ごめんなさい」「失礼します」と同じではあるのですが、日常会話で使われることがほとんどないので、相手に違和感を与える可能性があります。

【「ごめんあそばせ」のNG使用例】

・今回の件では、ご迷惑をおかけしてごめんあそばせ

まじめに謝るべき場面に使うと、ふざけていると思われてしまう可能性がある。

「ごめんあそばせ」を言い換えると?

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(1)申し訳ありません

元々は「言い訳ができない」という意味から、謝罪の気持ちをあらわす言葉となりました。ビジネスシーンから私生活まで幅広い場面で使われています。

【「申し訳ありません」の例文】

・ご迷惑をおかけし、申し訳ありません

申し訳ありませんが、来週の火曜日はお休みを頂きます。

(2)すみません

謝罪だけでなく、軽いお詫びや、感謝の気持ちを表す時にも使うことができます。ちなみに、「すいません」は「すみません」が言いやすいよう音便化した(音が変化した)もので、少し軽い印象になるため、あらたまった場面では避けた方がいいでしょう。

【「すみません」の例文】

・遅れてしまい、すみません

すみませんが、ペンを貸して頂けますか?

(3)ご容赦ください

“容赦”は許すこと。謝罪時に「どうか許して欲しい」という意味でも用いますが、あらかじめ断っておくために使われる例が多いようです。もしかしたら迷惑をかけるかもしれないときや、相手の期待に添えないかもしれないときなどに一言、先に言っておくのです。

【「ご容赦ください」の例文】

・至らない点があるもしれませんが、どうぞご容赦ください

・失礼の段、ご容赦ください

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに「ごめんあそばせ」という言葉について解説して頂きました。

現代ではあまり使うことがないレトロな言葉ではありますが、もし誰かに「ごめんあそばせ」と言われた時にはきちんと対応したいものです。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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