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「気兼ねなく」を目上の相手に使ってもいい?意味と使い方は?

“気兼ねなく”という言葉はどのような場面で使うのでしょうか。【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#88】では、“気兼ねなく”の意味や使い方、類似の表現をお届けします。

“気兼ねなく”について解説していただいたのは、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「気兼ねなく」の意味とは?

「気兼ねなく」の意味とは?

気兼ねなく”の意味は、気を遣わずにしたいようにすること。気を遣う必要はないと相手に呼びかけたり、自分を主語にして遠慮せずにしたいことをするさまを表すときに使う言葉です。

“気兼ね”は、他人に対して気を遣ったり、遠慮したりすること。「上司に気兼ねする」「気兼ねのいらない友達」といった使い方もあります。

「気兼ねなく」はどんな場面で使う?

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“気兼ねなく”は、以下のような場面で使われています。

(1)顧客や取引先に対して、気を遣わないように伝えるとき

【例文】

・何かご不明な点があれば、気兼ねなくお尋ねください

・何かありましたらお気兼ねなくお申し付けください。

(2)自分が遠慮せずに言いたいこと、したいことをするとき

【例文】

・今日の会議では、気兼ねなく発言することができました。

(3)打ち解けた関係について言及するとき

【例文】

・同期の田中とは、気兼ねなく言いたいことを言い合える間柄です。

気兼ねなく相談できる上司が理想的だ。

尊敬語の接頭辞をつけて“お気兼ねなく”という使い方をする場合もあります。

「気兼ねなく」は目上の相手に使ってもいい?

「気兼ねなく」は目上の相手に使ってもいい?

“気兼ねなく”は、目上に相手に対しても使うことができる言葉です。“お気兼ねなく”という形で使うこともあります。

メールや文書などの書き言葉では、以下で紹介する“(ご)遠慮なく”“忌憚なく”といった熟語表現のほうがなじみがあるかもしれません。

「気兼ねなく」を言い換えると?類語は?

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“気兼ねなく”と類似の意味を持つ言葉をご紹介します。

(1)「忌憚(きたん)なく」

“忌憚”を訓読みしたときの“いみはばかる”という読み方の通り、“はばかり遠慮すること”を指します。“忌憚なく”は “遠慮せずに”という意味で使います。

【例文】

・気になることがありましたら、忌憚なくお申し付けください。

(2)「率直(そっちょく)に」

飾ったり、隠したりせずにありのままであることを指す言葉。相手に気を遣うことなく、素直な意見を伝えるときに使います。

【例文】

率直な意見をお聞かせください。

(3)「心置きなく」

“心置きなく”は、遠慮することなくの意。遠慮することなく伸び伸びと何かに打ち込んだり楽しんだりするときに使うことの多い言葉です。

【例文】

・昨日は、久しぶりに心置きなく語り合うことができて楽しかったです。

(4)「気軽に」

気持ちに負担がかからない様子。特別な準備や形式は不要であることを伝えるときに使われています。

【例文】

・これからも気軽にお立ち寄りください。

(5)「遠慮(えんりょ)なく」

“遠慮なく”は、気を遣わないこと。さまざまな場面で広く使われている言葉です。

【例文】

・不備がありましたら遠慮なくご指摘ください。

「気兼ねなく」の対義語は?

「気兼ねなく」の対義語は?

“気兼ねなく”の対の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「気を遣う」

周りの人に細かく配慮すること。

【例文】

・同席者に気を遣って思ったことが言えなかった。

(2)「顔色をうかがう」

気を遣って相手の機嫌の良し悪しを察知すること。漢字をあてると「顔色を窺う」です。

【例文】
・あの会社の社員は、いつも社長の顔色をうかがっているように見える。

(3)「配慮する」

よく考えて心を配ること。ポジティブな意味で使われることも多いのですが、しばしば気遣いが行き過ぎている場合にも使われることがあります。

【例文】

・休職から復帰した社員への過度な配慮は、勤労意欲に影響をきたす。

(4)「忖度する」

他人の心の中や意向を推しはかること。また、推しはかってそれに合わせること。目上の人の意向に関し、当人がはっきり口に出していない場合にも、部下などが想像してその意向を実現する、という意味で使われることが多いです。

【例文】

・気難しい相手なので、いろいろと忖度する必要がある。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに“気兼ねなく”という言葉について解説していただきました。

率直な意見が聞きたいときに頻出する言葉なので、使い方を覚えておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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