子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「過渡期」の意味と使い方は?注意が必要な点は?

変化のスピードが早い昨今では、さまざまな場面で“過渡期”という言葉が使われています。【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#87】では、“過渡期”という言葉の意味や使い方などをご紹介します。

“過渡期”について解説していただいたのは、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「過渡期」の意味とは?

「過渡期」の意味とは?

過渡期”は、あるものから別のものへと移り変わっていく中間期のことを意味する言葉です。

古いものが新しいものへと移っていく途中の時期を意味していますが、ただ単に“移行期”という意味ではなく、価値観や方法などの変化にともない、物事が確立せずにぐらついているような、不安定なイメージを伴う言葉です。

「過渡期」はどんな場面で使う?

「過渡期」はどんな場面で使う?

“過渡期”は、ビジネスシーンにおいて、以下のような場面で使われています。

・社会の価値観や制度が変化していることを伝えるとき

・組織内の仕事の進め方や制度の変化に言及するとき

変化の最中にあるものの、新しいものは完全には確立されておらず、まだ安定していない状態を表す際に使います。社会の変化にともない、これまでのやり方では社会に通用しない難しい事態に置かれていることを周知するような場面でも使うことがあるでしょう。

プライベートにおいても、社会の価値観の変化のほか、入試や年金、PTA活動など、組織や制度の変化について言及する際に使われています。

「過渡期」の使い方の注意点は?

「過渡期」の使い方の注意点は?

“過渡期”の使い方の注意点は以下の2点です。

(1)「変革期」と「過渡期」の意味は微妙に異なる

過渡期と混同しやすい言葉に“変革期”という言葉があります。“変革”とは社会・制度などを変え“改める”という意味。改善や進歩、また主体的に切り開いていくイメージを伴うこともあります。

“過渡期”は、よくも悪くも移り変わっていく途中の時期を指し、“改める”というニュアンスを含んでいません。

(2)読み方に注意

現代日本語では、“過渡期”は“かとき”と読むのが一般的です。会話の中で使うときには注意しましょう。

「過渡期」の例文は?

「過渡期」の例文は?

“過渡期”の例文を通じて使い方をイメージしていきましょう。

・その時期は、弊社にとっては過渡期だった。

・私たちの業界は今、過渡期に立たされています。

・「足で稼ぐ」という営業手法は、過渡期を迎えつつある。

・コロナ禍で、PTA活動は過渡期に直面している。

「過渡期」の類語や関連語は?

「過渡期」の類語や関連語は?

“過渡期”と類似の意味を含む言葉をご紹介します。

(1)「転換期」

物事が移り変わろうとしている時期。従来とは別のものに変える・変わる時期のこと。

【例文】

・経営環境の急速な変化により、当社は転換期を迎えています。

(2)「ターニングポイント」

“ターニングポイント”は、これまでの方向性が大きく変わる転換点や分岐点を指します。物事がガラっと変化するようなきっかけを指して使われています。

【例文】

・若手社員が参加したことがターニングポイントとなり、プロジェクト内に前向きな機運が生まれた。

(3)「曲がり角を迎える」

物事の変わり目、転機のこと。ややネガティブな意味合いで使われることの多い表現です。

【例文】

・このビジネス手法は、そろそろ曲がり角を迎えている

(4)「VUCA(ブーカ)

経済産業省のウェブサイトによれば、“VUCA”とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、 Complexity(複雑性)、 Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の略語。確実で予測困難な経済・社会情勢を表す言葉です。コロナ禍以降、国内外で「VUCA」という言葉の注目度が上がっています。

【例文】

・「VUCA」と呼ばれる不確実な時代を生きる私たちには、揺るがない生き方の軸が必要だ。

「過渡期」の対義語はある?

「過渡期」の対義語はある?

“過渡期”とちょうど逆の意味という言葉はありません。しかし、対照的であったり対になったりする言葉はいくつかありますので、ご紹介していきます。

(1)「安定期」

物事が落ち着いて激しい変化のない時期を表します。

【例文】

・我が社もようやく安定期に入ったようだ。

(2)「爛熟期(らんじゅくき)」

“果実が熟しすぎている”という意味から、”物事が極限まで成熟する“の意でも使われるようになりました。文化や社会制度などを指して、書き言葉の中で使われることがあります。

【例文】

・文化の爛熟期を迎えた。

 

以上、国語講師の吉田裕子さんに“過渡期”という言葉を解説していただきました。

以前の成功体験が通用しなくなるような難局を“過渡期”と呼ぶ場面が多く見受けられます。

類似の意味を持つ言葉との違いに着目しながら使い方を覚えておきたいですね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載