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「往々にして」はどのくらいの頻度のこと?意味やNG例は?【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#31】

しばしば耳にする“往々にして”という言葉。意味を理解しないまま使っている方が見受けられます。今回は“往々にして”の意味や使い方、NG使用例などをお届けします。

解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「往々にして」の意味とは?

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往々にして”は、“しばしば”という意味。“往々”は繰り返し起こるさまを表す言葉です。

頻度のイメージとしては、“いつも”“しょっちゅう”よりは頻度が低く、“たまに”“まれに”よりも頻度が高いという程度でしょうか。

英語に訳す際には“often”“frequently”といった単語があてられます。

「往々にして」はビジネスシーンでどういうときに使う?

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ビジネスシーンにおいて”往々にして”は、失敗が懸念されるとき、よくない展開に陥りそうなときなど、リスクを語る場面で使われる副詞です。おもに忠告・状況分析・説明の際に使われます。

話し言葉でも書き言葉でも使うことができます。

私生活ではどう使う?

私生活においても、想定されるリスクなどを語るときに“往々にして”を使うことができます。

ただし、少々かための表現なので、類義語の“しばしば”“たびたび”など、もう少し平易な言葉のほうがよく使われています。

「往々にして」の例文は?

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“往々にして”の例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。

・そのようなケースは往々にして失敗しやすいため、対策を練るべきです。

・いったん不信感が募ると、往々にして欠点ばかり目につくものです。

・華々しく紹介した新商品ほど、往々にして売り上げが伸びないのはなぜでしょうか。

「往々にして」の使い方の注意点は?目上に使っても大丈夫?

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“往々にして”の使い方の注意点をご紹介します。目上の相手にも使うことができますが、以下のような使い方は避けましょう。

(1)二重表現(往々にしてよくある)

“往々にして”は頻度を表す副詞です。同じく頻度を表す“よく”という副詞とセットで使われていることがあります。同じような意味の言葉を重ねた“重言”となりますので、文法的には間違いです。特に書き言葉では違和感を与える可能性がありますので、留意しましょう。

【NG使用例】

・準備不足のプレゼンは、往々にして失敗することがよくある。

“往々にして”と“よく”はいずれも頻度を表す副詞なので、この場合はいずれか1つを削除する。

(2)ポジティブな文脈で使う

先述したように“往々にして”は懸念される失敗やリスクなど、いわゆる“好ましくないこと”を語るときに使われるのが一般的です。現代日本語においては、“往々にして”にはネガティブなイメージが伴うので、ポジティブな内容とセットで使うことはあまり好ましくありません。

【NG使用例】

・謙虚な新人は、往々にして成功を収めるものだ。

→「謙虚さのない新人は、往々にして間違った選択をすることがある」など、“よくないこと”を表す文章の中で使われるのが一般的。上記のNG例文は別の副詞に置き換えるか、文末のニュアンスを変えるのが好ましい。

(3)クレーム対応の状況説明時に使う

“往々にして”は、忠告・状況分析・説明で使うことが多い表現です。クレーム対応など、こちらに非がある場面で状況説明のために“往々にして”を使う場合、その使い方によっては開き直っているような印象を与える可能性があるので注意が必要です。

NG使用例

・品質保持には万全を務めていますが、往々にして不良品が一定の割合で混入することがあります。

自分の会社に非がある場合には、“往々にして”を用いることで“そういうもの”“よくあること”と開き直っている印象を与える可能性があるので、好ましくない。

「往々にして」を言い換えると?

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続いて“往々にして”の言い換え表現をご紹介します。

(1)「しばしば」

何度も繰り返されるさま。“往々にして”と同等の頻度を表しますが、文章の内容に関わらず幅広いシーンで使うことができます。

【例文】

・緊張すると、しばしばうまく話せなくなることがあります。

・このコピー機はしばしば用紙が詰まるので、何かあればお声かけください。

(2)「たびたび(度々)」

同じことが繰り返しておこなわれるさま。相手に手間をかけてしまうときなどにも使われています。

【例文】

度々お手数をおかけして申し訳ありません。

・(いったん電話を切ってから、もう一度かける際に)たびたび失礼致します。〇〇社の△△と申します。

(3)「ともすると」

“場合によってはそうなりやすい”という副詞。“往々にして”と同様に、ネガティブな文脈で使われることの多い表現です。

【例文】

・部長はともすると人の欠点ばかり指摘する。

(4)「ややもすれば」

“ともすると”の類義語。“そのような状態になりやすい”という意味。悪い展開が起きそうなときに用います。

【例文】

・新入社員は、ややもすれば言いたいことを我慢しがちだ。

(5)「えてして」

“ややもすれば”の類語。あまりよくない傾向を語るときに用います。

【例文】

・成功が続いているときほど、えてして失敗のダメージが大きいものだ。

(6)「間間ある(ままある)」

ままは“間間”と表記し、“折々”“時々”の古風な言い方です。まれに見聞きすることがあると思いますので、覚えておきましょう。

【例文】

・この時間帯は、定刻通りにバスが到着しないことが間間ある

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“往々にして”の使い方についてうかがいました。

誤った使い方をされていることが多い言葉です。“往々にして”の正しい使い方を覚えておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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