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「真摯」(しんし)の多用には要注意?「真摯」の意味と使い方【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#25】

“真摯”(しんし)という言葉には、重みがありますよね。

ビジネスシーンではどんな場面で使うのが適しているのでしょうか。今回は“真摯”の意味や使い方、言い換え表現について解説します。

お話をうかがったのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「真摯」(しんし)の意味とは?

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“真摯”(しんし)は、まじめでひたむきな様子を表す言葉です。

「真摯」はどんなときに使うといい?

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ビジネスシーンにおいては、“真摯”は以下のような場面で使われます。

【想定される場面】

・大切な役を務めることが決まったとき

・所信表明をするとき

・仕事を任されたとき

・謝罪時に今後の対応を示すとき

・部下に指示を出すとき…etc

これからがんばっていくという真剣な意志を伝えたいとき、会話でよく使われる「がんばります」「まじめに取り組みます」という言い方をすると、やや幼稚に聞こえてしまう場面もあります。「まじめに取り組むのは当たり前だ」と突っ込まれるかもしれません。

そのため、あらたまった場面においては、堅い響きのある熟語“真摯”を用いて、「真摯に取り組みます」「真摯にのぞみたいと思います」というほうが、ひたむきで堅実な印象を与えることにつながります。

“真摯”は仕事のあらたまった場面で使われることが多いので、日常生活の会話で使われることは少ないかもしれませんが、敬語を使う相手に対して、メールや書面でお詫びをするときに「真摯に対応致します」という表現を使う場面もあるかもしれません。

「真摯」の例文は?

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それでは“真摯”を使った例文を通じて使い方をイメージしてみましょう。

・お客様のご指摘を真摯に受け止め、再発防止を徹底してまいります。

・弊社の真摯な対応に満足していただいたようです。

・どのような意見でも真摯に耳を傾けるべきです。

・若輩者ではありますが、可能な限り真摯に臨みたいと思います。

「真摯」の使い方の注意点は?目上の人にも使える?

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先述したように、“真摯”という言葉は、まじめでひたむきなさまを表します。

目上の相手に対しても、自分の誠実さをアピールするために使うことができますが、何度もたてつづけに使ったり、実際の態度が伴わないと、軽薄な印象を与えることがあるので注意しましょう。

「真摯」を言い換えると?

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続いて“真摯”の言い換え表現をご紹介します。

(1)「誠実」

“誠実”は、真心がこもっていて、うそ・偽りがないこと。“真摯”と同様に使えるほか、第三者を形容する際にも使われています。

【例文】

・お客様の声を誠実に受け止めます。

・彼は誠実な人柄なので、職場で信頼されています。

(2)「実直」

“実直”は、まじめで正直なこと。自分以外の相手の言動や人柄をほめるときに使うことが多い言葉です。

【例文】

実直な対応には感謝しております。

・あの人は、勤勉実直な人柄だ。

(3)「真心」

“真心”はいつわりのない心。“真心を込めて”という言い方がポピュラーです。組織ではなく、個人の行動に対して使うことの多い言葉です。

【例文】

真心のこもった贈り物をいただき、ありがとうございました。

(4)「真面目」(まじめ)

“真面目”は、真剣な態度のこと。学校生活から日常生活におけるまで、幅広い場面で使われている言葉です。ただし、職場においては“真面目であること”は当然のことですので、今後の決意を表明するときに「まじめにがんばります」などと言うと、やる気に欠けるように聞こえてしまうことがあるかもしれません。

【例文】

・彼は何事にも真面目に取り組んでいます。

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに“真摯”の使い方を解説して頂きました。

誠実に対応するという意志を伝えるためにも役立つ言葉です。取引先の相手が“真摯”という言葉を使う可能性もありますので、意味を覚えておきましょう。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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