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「先般」とはいつを指す?間違いやすい使い方は?【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#22】

ビジネスメールでしばしば使われている“先般”は、時を表す言葉。いったい、いつのことを指すのでしょうか。今回は“先般”という言葉の意味や使い方、言い換え表現について解説します。

”先般”という言葉について解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「先般」の意味とは?

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“先般”は“この前”“この間”という意味。現在に近い過去のある時点を指します。

「先般」はどんなシーンで使う?目上に使っても大丈夫?

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“先般”は、主に書き言葉で使われる言葉です。

やや硬い表現なので話し言葉ではほとんど使われておらず、ビジネスシーンにおいては書面やかしこまったメールの中で使われています。

プライベートにおいては、自治会など、地域の組織から配る書類の中で使われることがあります。

目上の相手にも使うことができる語ですが、一方で、同僚や友人といった身近な人とのやりとりの中ではほとんど使うことはありません。

「先般」の例文は?

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“先般”を使った例文を通じて、使い方をイメージしていきましょう。

先般の打ち合わせの決定事項をお知らせします。

先般の会議の議事録を添付いたしますので、ご査収のほどお願い申し上げます。

先般お知らせした通り、本件は本日をもって終了いたします。

先般ご案内した会合の件、ご都合はいかがでしょうか?

「先般」の使い方の注意点は?「昨今」「今般」との違いや使い分けは?

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“先般”は、現在に近い過去の“ある時点”を指します。ある時点から現在に至るまでの“一定の期間”を示す言葉ではありません。“昨今”“近頃”“先日来”といった時間的な幅をもった言葉と混同している例が見られます。

【NG例文】

・先般、A社との良好な関係が続いている。

→“この頃”“昨今”と同様に使うことはできない。

また、“先般”に対して、“このたび”を意味する“今般”という単語もあります。混同しやすいので注意しておきましょう。“今般”は「今般、営業部に移動となりました」というように、書き言葉の中で使います。

「先般」を言い換えると?

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続いて“先般”の言い換え表現をご紹介します。

(1)「先日」

“先般”の類義語ですが、“先日”は話し言葉、書き言葉、いずれの場合も広く使われています。

【例文】

先日ご相談いただいた件をご回答いたします。

(2)「過日」

“先般”と同様に“この間”という意味を持つ言葉。話し言葉ではほとんど使わず、手紙やメールの中で使われることの多い言葉です。

【例文】

過日お知らせした通り、明日、オンライン会議を行います。

(3)「以前」

現在より前のことを指す言葉。“先般”や“過日”が現在に近い過去の一時点を指すのに対し、“以前”はかなり前のことを指すこともあります。幅広い場面で使われる言葉です。

【例文】

以前お会いした際にお話しした通りです。

・じつは以前、御社の部長にお会いしたことがあります。

(4)「先だって」(せんだって・さきだって)

“先日”“この前”という意味。あまり耳慣れない言い方かもしれませんが、年配のかたなど“せんだって”という言葉を使う人もいるので覚えておきましょう。

【例文】

先だってA社との会食で使った店の名前を聞いてもいいかな。

 

今回は国語講師の吉田裕子さんに“先般”という言葉について解説して頂きました。

書き言葉の中で“この前”というのがはばかられるときに、かしこまった印象のある“先般”という言葉を使ってみてはいかがでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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