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子どもがおかわりすると評判の「おいしくなる米の研ぎ方」を五ツ星お米マイスターが伝授【新米をおいしく食べよう♯2】

新米のおいしい季節になりました。そこで、米のプロとして活躍する「五ツ星お米マイスター」の西島豊造さんに、お米をもっとおいしく食べる方法を教えてもらいました。

米屋の3代目として約30年間、何度も何度も米を炊いては試食を繰り返し、究極の米を探求し続けてきた西島さんだからこそ辿り着いた、本当においしい「米の研ぎ方」とは?

この研ぎ方でお米を炊くと、「子どもがいつもよりごはんをたくさん食べるようになった!」という反響が大きいそう。早速、今日から試してみませんか?

研ぎ時間は約1分30秒。とにかくスピーディーに研ぐべし!

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米の研ぎ方は十人十色、みなさんなんとなく自分のやり方がありますが、果たしてそれは正解なのでしょうか? 誰でも同じように簡単においしく炊けるようにするにはどうしたらいいか……西島さんは約30年、試行錯誤を繰り返して、この研ぎ方に到達したと話します。

「研ぎ過ぎると汚れた水が出てしまい、米の表面が割れて、おいしく炊けません。何よりもスピーディーに均一に研ぐことが大切なんです。

研ぎ時間は約1分30秒。研ぐ回数は精米したばかりなら20回、精米から時間が経っている場合はさらに10回。少し水が濁った状態で終わりにするのがベストです。

よく“水が澄むまで研ぐ”と思っているかたもいますが、それは研ぎ過ぎ。表面の水が薄く濁っているのはデンプンで、つまり米の旨味成分。だから少し濁っていた方が、甘くて粘りのあるおいしいごはんに炊き上がりますよ」

この方法で炊いたごはんは、子どもたちにも大好評とのこと。

「私の店で米を買われるお客さんにこの研ぎ方を教えたところ、“子どもがいつもよりごはんを夢中で食べるようになった”、”パクパク食べておかわりしてくれた!”というお母さんたちがとても多いんです。子どもたちの方が味覚が繊細なのか、米の甘みや旨味の違いがよく分かるのかも。彼らの方が米のおいしさを知っているのかもしれませんね(笑)」

この研ぎ方、ぜひ知りたいですよね! それでは、西島流の「米の研ぎ方」を早速教えてもらいましょう。

子どもが夢中でパクパク食べる「おいしい米の研ぎ方」

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(1)薄い手袋をはめる。摩擦が増え、均一にスピーディーに研げる。

そして、米を研ぐ時の西島さんの隠しアイテムが、こちらの「薄手の手袋」。

「米を研ぐというのは、ぬかを取ること。では、どのようにするかというと、米同士の摩擦によって、ぬかを取り除きます。

そこで、薄手の手袋をはめて研ぐと、素手で研ぐ時よりも摩擦がたくさん起こり、均一にスピーディーに研ぐことができます。特に女性の指は細いので、手袋をした方が面積が広くなり、手早く研げますよ。ネイルや手荒れが気になる人にもおすすめです。

よく泡立て器でシャカシャカと米を研ぐ人がいらっしゃいますが、それでは摩擦があまり起きず、隙間から米が抜け出てしまっているので、全然研げていないんです。米を「洗うこと」と「研ぐこと」はまったく違うので、注意してくださいね」

(2)浄水器の水に氷を入れ、キンキンに冷やす。

「米は生きているので、いちばん初めに注いだ水を勢いよく吸収します。そのため、いちばん初めに使う水は、浄水器の水やミネラルウォーターを使った方がおいしく炊けます

前回の「米の保存法」の時に、米は炊く時に沸騰するまでの温度差があるほど粘りと甘みが強く出ることを西島さんから教わりました。米と同様に、炊く時に使う水も冷やしておくのがポイントです。

「浄水器の水に氷を入れて、キンキンに冷やしておきます。冷たい水を使って炊き上げることで、米の粘りや甘さを引き出せるんです

→「米の保存法」について、詳しく知りたい人はこちらをチェック!

(3)冷蔵庫で冷やした米をボウルに入れ、冷えた浄水器の水を一気に注ぐ。軽く混ぜて、すぐに水を捨てる。水を注いでから約10秒で手早く行う。

ボウルに冷蔵庫で保存していた冷たい米を入れ、冷えた浄水器の水を一気に注ぎます。

米はいちばん最初の水を吸水するので、浄水器のおいしい水を使ってください。なるべく早く均等に注いだら、軽く混ぜます。米がしっとりして、汚れが浮いてきたら、すぐに水を捨てましょう。

ここまで約10秒くらい。ここでもたもたしていると、浮き出た汚れがまた米に戻ってしまいます。そうすると、粘りと甘みが出にくくなるので、手早く行うことが重要です」

(4)水道水を注ぎ、軽く混ぜて、すぐに水を捨てる。約10秒で手早く行う。

水道水を入れて、軽く混ぜたら、すぐに水を捨てます。これも約10秒で手早く行いましょう。

「米が吸水を始める1回目の水がいちばん大切で、2回目からは汚れを取るだけなので水道水でOKです。この段階で水が白く濁り、かなり汚れが出たのが分かります。米の表面には汚れやぬかがたくさん付いているんですね」

(5)手袋をした指を広げて、米に差し込み、シャカシャカと音を立てながら、20回混ぜる。

ボールを握るようなイメージで手袋をした指を広げて、そのまま米の中に差し込みます。

「シャカシャカという音を立てながら、20回手早くかき混ぜます」

(6)水道水を注ぎ、軽く混ぜて、すぐに水を捨てる。これを2回繰り返す。

20回かき混ぜただけで白い水が下に溜まります。実はこれが米特有のニオイの元。この白い水は思った以上に濃くて粘度があるので、水道水を入れて薄め、軽く混ぜたらすぐに捨てます。これを2回繰り返します」

ここからの作業は、いつ米を精米したかによって変わります。精米したてならば、ここで終了して炊飯に進みましょう。半月、ひと月など精米から時間が経っている場合は、1回では研ぎ切れないので、この後のプロセスも行ってください。

(7)手袋をした指を広げて、米に差し込み、シャカシャカと音を立て、10回混ぜる。

精米から時間が経っている場合は、ツヤを出すためにもう少し研ぐ必要があります。同様に手袋をした指を広げて、米に差し込み、シャカシャカという音を立てながら、10回かき混ぜましょう。

(8)水道水を注ぎ、軽く混ぜて、すぐに捨てる。これを2回繰り返す。

これで研ぎは終わりですが、初めての方は静かに水を注いでみてください。すると、少しだけ薄く濁った水が残ります。

「この濁りはデンプン、つまり米のおいしさなんです。完全に澄んだ水ではなく、これくらい薄く濁った状態がベスト。上手に研げた証拠です。

この時、まだ米が見えないくらい濁っている場合は、研ぐ回数が足りていません。その場合は、研ぐ回数を最初の20回を30回に、次の10回を15回に増やしてください。研ぐ時間ではなく、状態を見ながら回数を増やせば、研ぎ過ぎることはありません」

ここまで約130秒でできたら合格!と西島さん。この段階で、米が白くなり始めていたら、吸水が始まっているサイン。米が白くなる前に研ぎ上がるようスピーディーに行うことがおいしく炊くコツですよ。

(9)炊飯器の内釜に研いだ米を入れる。

次は、研いだ米を炊飯器の内釜に入れます。

「この時、米をざるにあげて乾かすのは間違い。米は水を吸わせることで甘さと粘りが出てくるので、ざるにあげてしばらく置いてから炊くと、さっぱりした味気ないごはんになってしまいます」

(10)冷えた浄水器の水を米の合数に合わせてセットする。

おいしく炊くために浄水器の水、またはミネラルウォーターを使います。

米は炊く時に沸騰するまでの温度差があるほど粘りと甘みが強く出るので、氷を入れて冷やしておいた浄水器の水を使います。炊飯器に水をセットしてから氷を入れたのでは、水の量がアバウトになってしまいます。また、氷の周りだけ温度が下がり、炊きムラができてしまうので、冷たい水を入れるのが正解です」

新米でも古米でも、水の量は炊飯器のメモリ通りでOK。線の真上にセットしてくださいね。

(11)炊飯器に内釜を入れてセットし、ふたをして炊飯する。

「最近の炊飯器は性能がよいので、研いだらすぐに炊飯器にセットして炊いてしまってOKです。吸水時間もプログラムの中にすべて組み込まれているので、安心して炊飯してくださいね」

早速、私も試してみましたが、研ぐ回数は20回と10回だけ(精米から時間がかかっていたので10回足すやり方で研ぎました)。普段はなんとなく白い濁りがなくなるまで、おそらく20回研ぐのを34回は繰り返していたため、研ぎ時間がグッと短く感じました。また、私は祖母にギュッギュッと力を入れて研ぐように子どもの頃教わり、今もその研ぎ方をしていたのですが、今は精米の技術が進歩したのでその研ぎ方だと力が強すぎて、おそらく米の表目を割ってしまっていたのかも……。

西島さんの方法で炊いてみたら、普段と同じ米なのに噛めば噛むほど奥深い旨味を感じます。確かにいつもよりさっぱりしてなくて、甘みと粘りがもっと増したみたい。なるほど、子どもたちはこのおいしさの違いに気付いていたのですね。研ぎ方でこんなに変わるなんて……すごいっ!!

以上、五つ星マイスターが教えるおいしい米の研ぎ方でした。この時期に新米を手に入れた人は、ぜひこの研ぎ方でもっともっとおいしく味わってみてくださいね。

【取材協力】

西島豊造

五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しいお米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。

 

取材・文/岸綾香

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