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出産した年の「医療費控除」ガイド!領収書仕分けから還付金受け取りまで【医療費控除をもっと知ろう・4】

妊娠がわかってから出産後までは、通院の回数が増え、医療費や交通費がかかるようになります。そのため、出産した年は、医療費控除の申告をすることで、所得税が還付される可能性があります。

今回は、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生に、出産した年の医療費控除のポイントについて詳しく伺いました。

医療費控除とは?その仕組みを簡単におさらい

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まずは、医療費控除について簡単におさらいしておきましょう。

医療費控除とは、所得控除の一種で、申告をすることで、納めた所得税の一部が還付される制度です。医療費控除が適用されると、6月から新しい年度に切り替わる住民税も減額されます。

詳しくは、「医療費控除の申告に必要な書類は?“医療費控除費の明細書”の書き方は」を参考にしてみてくださいね。

妊婦健診~出産までに医療費控除の対象となるもの・ならないもの

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以下の費用は、医療費控除の対象となります。

○妊娠中の定期健診の自己負担分

○分娩、出産に関わる費用(出産育児一時金を差し引いた負担額)

○通院にかかった交通費(バス・電車代)

○通院時に必要と認められたタクシー代

一方、例えば、以下のような費用は医療費控除対象外となります。

×里帰り出産の帰省費用

×産後の美容のための骨盤矯正の整体費用

×入院中のテレビ視聴代

×本人の都合で個室に入院したときなどの差額ベッドの料金

【参考】

医療費控除の対象となる入院費用の具体例 – 国税庁

定期健診のための交通費は医療費控除の対象となりますが、実家で出産するために実家に帰省するための交通費は医療費控除の対象にはならないので、注意が必要です。

出産した年の医療費控除額のよくある間違いは「出産育児一時金」

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例えば、1月1日から12月31日までの定期検診の自己負担額が5万円で、入院費が45万円で合計50万円だった場合。

「医療費が10万円を超えたから医療費控除ができる」と勘違いするケースが見受けられます。正しくは、健康保険組合から支給される出産育児一時金を差し引いた金額が対象の医療費となりますので注意が必要です。

近年、出産育児一時金の制度が手厚くなっているのに加え、自治体から妊婦健診の補助が出るようになっており、出産した年であっても医療費控除される額に満たないケースも多々あります。

所得400万、医療費62万円ならかえってくる所得税はいくら?

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それでは、所得が400万円の女性が出産の年に医療費を60万円支払い、加入する保険組合から42万円の出産育児一時金を得た場合のシミュレーションをしてみましょう。

ステップ1:医療費控除額を計算

医療費60万円 - 出産育児一時金42万円 - 10万円 = 医療費控除額8万円

(総所得200万円未満の人は、10万円でなく総所得金額等×5%を差し引く)

ステップ2:還付される金額を計算

医療費控除額8万円 × 所得税率20% = 還付される金額1万6,000円

※ 実際の減税額は、復興特別所得税や累進課税の影響で若干異なります

「医療費控除の申告に必要な書類は?“医療費控除費の明細書”の書き方は」でも解説したように、所得税率は所得額によって異なります。

出産から退院まで年をまたぐ場合はどうなる?

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例えば、2018年12月28日に分娩を控えて入院し、2019年1月4日に退院した場合、医療費は“実際に支払った年の医療費”として加算されます。領収書の日付が2019年1月4日になっているのならば、それは2019年分の医療費として計上されます。

申告から還付金を受け取るまでの流れは?

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1月1日から12月31日までにかかった医療費は、該当する年の確定申告書を入手して必要が一式そろえば、翌年の1月から申告することができます。2月16日から通常の確定申告が始まるので、税務署の繁忙期が訪れる前に申告をすませておくと、還付金が早めに還付される可能性が高くなります。

還付金の振込までは、時期や地域によってバラつきがありますが、3週間~4週間程度を見込んでおきます。

 

今回は、出産した年の医療費控除の申告についてお届けしました。

確定申告の時期に、医療費控除の申告のために税務署に並んでいる方が見受けられますが、医療費控除の申告は該当の年から5年間行うことができます。

出産直後のあわただしい時期に、無理にあわせる必要はありません。「確定申告の期間中にやらなきゃ!」と焦らずに、自分のペースで着手してみてはいかがでしょうか。


 

【監修】

ファイナンシャルプランナー

畠中雅子

約20年続いている『たまごクラブ』(Benesse)の連載のほか、新聞、雑誌、web上に多数の連載を持ち、セミナー講師、講演業務などで全国各地を飛び回る。主に教育資金アドバイスをおこなう「子どもにかけるお金を考える会」主宰。著著は『結婚したらすぐ考えるお金のこと』(KADOKAWA)ほか、60冊を超える。

 

※情報は2018年10月現在のものです

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