子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

意外と知らない和食のマナー。お椀の扱いに、和食店での振る舞い…写真で分かりやすく解説!

「毎日和食は食べているし、食べ方には問題ないよね」と思っていても、結婚式や七五三などの家族のお祝いごとの席や、ビジネスでの会食など、きちんとした和食のお店で食べるようなときは意外と戸惑うことも多いものです。魚料理の食べ方や、箸の扱いなど、ポイント別に和食のマナーを確認していきましょう。マナーにかなった食べ方は、見た目にも美しいもの。男女問わず、しっかり身につけたい知識です。マナーアドバイザーの松本繁美さんによる、食事のマナーシリーズです。

和食を食べる際に間違いやすいポイント5

「手皿」はしない!

手皿とは料理を箸で口に運ぶ時、空いた側の手を小皿のように食べ物の下に添えることです。
こぼれた時に受け止めたい気持ちはわかりますが、その手のひらに実際にこぼれた時、どうするのでしょう。おしぼりで拭くのも、汚れたまま食事を続けるのも美しい所作とはいえません。

どうしてもこぼれるのが心配であれば、小皿を受け皿として使うか、懐紙を用意しておいて、受け皿代わりに使います。

テレビなどでも手皿をしている人をよく見かけるので、正しいマナーだと勘違いしがちです。注意してくださいね。

魚はひっくり返さない!

焼き魚や煮魚など骨付きの魚が出されたときは、以下の順番で食べます。

  1. 魚の中央から中骨に沿って箸を入れていきます。尾頭付きの魚の場合、頭が左、お腹の部分が手前になるように出されます。
  2. 上半分の身から食べます。頭から尾に向かって、切り身は左端から右に向かって食べ進めます。続けて下半分まで食べたら、中骨をはがしてお皿の上の方に置き、同様に下側の身を食べていきます。
    上側の身を食べ終えたら、ついついひっくり返したくなるのですが、これは和食に限らず洋食でも良くないとされる所作です。
  3. 食べ終わったら、残った皮や骨を集め、皿の向こう側にまとめておきます。あれば懐紙で隠すとよいでしょう。

串ものを手に持って食べない

串をそのまま口に運び、頬張って食べがちですが、先に串から食材を外しましょう。器の上で、左手で串を持ち、右手で箸を使って串から外します。外しにくい場合は、くるくると串を回しながら外すと抜きやすくなります。

また、食材を外すときはまとめて外さず、ひと口分ずつ食べるごとに外しましょう。

食べ終わった皿を重ねない 

片付けながら食事をするのは家庭内だけです。和食に限らず、外食では皿は重ねません。とりわけ高級店などでは、器も繊細な高級品が使われていることが多いもの。重ねると傷の原因にもなりかねませんので、食べ終わった器はそのままにして、お店の人におまかせします。

食べかけの物は皿に戻さない

口に運び、食べかけた物を皿に戻すのはマナー違反です。食べかけの物は、噛み切った跡が露骨で見た目が良くありません。

一口で食べきれる量に切ってから口に運びましょう。

おしぼりは手を拭くときだけ

おしぼりは手をきれいにするためで、それ以外の用途に使ってはいけません。顔を拭くのはもちろん、テーブルも拭きません。おしぼりは右手で取り上げて左手に持ち替え、開いて両手を拭った後、使った部分を内側に入れてたたんで、定位置に戻しましょう。

【料理別】気を付けたいポイント

刺身を食べるとき

刺身は、基本的に白身魚のような味が淡白なものから食べ始め、最後に赤身魚を食べます。先に味が濃厚なものから食べると後の刺身の味がよく分からなくなるからです。

わさびは醤油に溶かさず、刺身の上に少しのせます。そして刺身を醤油皿の醤油に少しつけて口元まで運びます。

この時、醤油がたれそうであれば、用意されている小皿をもう片方の手で持ち、口元まで近づけながら食べます。

汁物のお椀の扱い

お椀の蓋を取る時は必ず左手(左利きの場合は右手)をお椀の脇に添えながら取りましょう。

取った蓋は膳(盆・折敷)の外の右側へフタを裏返して置きましょう。フタの内側の結露が垂れて、テーブルが濡れるのを避けるためです。蓋に傷をつけないように静かに置きます。

食べ終わった後の蓋は、元通りにかぶせて戻します。ひっくり返して置いてはいけません。

手に持っていい器、持ってはいけない器

持ち上げてよいとされている器は、概ね直径12cm以内が目安です。

  • 小皿
  • 小鉢
  • しょうゆ皿

また、うなぎ、天丼などの入っている重箱やどんぶりも、持ち上げて食べてもかまいません。

持ち上げるとき、器は胸と顎の間ぐらいまで引き寄せて持ちます。

持ってはいけないとされている器は、平たいもの、大きいものなどです。

  • 刺し身や焼き魚がのった器
  • 揚げ物の器
  • 大鉢の皿

通常、並べて置かれている料理のうち、手に持って食べる器は手前に、持ち上げずに食べるものは奥側になるように配置されています。持ち上げてはいけない器の料理を口に運ぶ時、こぼれ落ちるのが心配であれば懐紙や小皿を受け皿として使用します。

和食に欠かせない箸のマナー

和食を食べる際に欠かすことのできない箸は、食事のマナーの最大のポイントでもあります。箸の持ち方や使い方については「知らないと恥をかく!美しい所作で食事を楽しむために覚えておきたいお箸のマナー」で詳しく述べていますので、参考にしてみてくださいね。

覚えておきたい和食店での振る舞い

畳の縁(ヘリ)や敷居を踏まない

ふすまや障子を開けて入室するときには、敷居や畳の縁を踏まないよう気を付けましょう。

座布団には、すすめられるまで座らない

座布団には、勝手に座らないようにします。座布団の下座側に正座して挨拶をしたら、相手に促されるまで待ちましょう。

素足で入室しない

和室では素足はNGです。相手への気遣いとして、男性なら靴下、女性なら靴下かストッキングを履いていくのがおすすめですが、素足の場合はすぐに履けるフットカバーなどを持参します。初めてのお店で様子がわからないときは、各種用意しておくと安心です。

【参考】家庭での和食の配膳方法

null

参考までに、お店で食べる場合だけでなく、家で食べる場合でも知っておきたい配膳の基本をご紹介します。品数やお皿の位置を知っておくと、ちょっとしたお客様のときなどにも慌てずに済みますね。

  1. 主食:白飯、具入りのご飯など(左手前)
  2. 汁物:味噌汁、お吸い物など(右手前)
  3. 主菜:揚げ物、蒸し物、焼き物(右奥)
  4. 副菜1:香の物、和え物(中央)
  5. 副菜2:煮物やサラダなど(左奥)

酒類を出す場合は、ご飯は後からになるので、茶碗の位置に酒類を置きます。左利きの人に和食を配膳するときは、箸の向きを逆にする気遣いがあるといいでしょう。

 

和食のマナーは、箸の使い方から食べる順番、食べ方までが決まっているので堅苦しく感じるかもしれませんが、一度学んでしまえば、それほど難しい所作はないはずです。自信のない部分は再度マナーを確認し、毎日の食事でも意識してみましょう。

現在はなかなか会食をする機会もないですが、そうやって日々意識して美しく食事をする姿勢を養うことで、いざという時に余裕をもって和食の美しい盛り付けや味、素晴らしい器などを楽しむことができるようになり、食事の楽しみが広がります。

ユネスコ無形文化遺産に登録された和食。美しく食べるマナーも次世代に繋げていきたいものです。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載