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暮らしがととのう「3日でワンセットルール」。心地よい素敵な部屋作りのヒント#4

仕事、家事、育児……日々を忙しく過ごしていると、1日が過ぎるのはあっという間。「リラックスして、家でのんびり過ごしたい」そう思っていても、なかなかインテリアを素敵に整えることまで実現できていない人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、独自のスタイルで、自分にフィットする暮らしをされているイラストレーターの兎村彩野さんに、素敵な部屋作りのコツを教えてもらいました。

「暮らしは生き方の集大成」という兎村さんの言葉が伝えるように、まさに部屋はその人自身を表しているもの。そこには、たくさんの生き方のヒントも詰まっていました。今回は、兎村さんにとっての心地よい家とは一体何か? 誰かと暮らすことの大切さ、背伸びしすぎない自分にフィットした暮らしを送るための小さなルールについて、語ってもらいました。

夫も他人。だからこそ一緒に暮らすと楽しい!

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結婚して家族が増え、誰かと暮らすということは人生の中の大きなテーマです。自分ひとりで自由に暮らすことから卒業した時、二人三脚で“誰か”と暮らしていくことの難しさを実感している人も多いのではないでしょうか?

イラストレーターの兎村さんは、グラフィックデザイナーの夫とデザイン事務所を設立し、仕事も生活もほぼ一緒という環境で暮らしています。お互いが心地よく仲良く過ごすために、普段から心がけていることを伺うと……。

「ふたりとも自宅で働いているので、生活はほとんど一緒です。なので、共同スペースに相談なしで勝手に物を買うのは我が家ではしないようにしています。よく話し合って、お互いに納得した物を厳選するようにしています。ふたりにとって心地よい空間であることが何より大事なので、どちらかの苦手な物があるのは、あまりうれしくないですよね」

趣味が違ったりするとお互いに「いいね!」と思えるのは、ちょっと難しいのかも。最初から旦那さまと、好みや感性は似ていたのでしょうか?

「出会った頃から似てた部分も、違う部分もあります。なんとなく近かった部分に自然と集約していきました。自分自身でふたりで生きていくことを選んだので、私の個性を優先することはありません。もし、自分を最優先にしたいなら独身でいたと思います。

ひとりの気軽さと心地よさは好きでした。ただ、なんとなく、現在の夫に出会って、そういうものを手放しても、ふたりで暮らしを作り込んでいく面白さに身を委ねたくなりました。

思い通りにいかないことを楽しめるのはとても素敵で贅沢なことです。知らない自分に気付くことも多々あり、ひとりでは気付けなかった世界に出会えます。共同作業で最高に大好きな家を作っていく。ひとりとは違う楽しさがあり、ひとりにはない成長があります。

冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、夫はどんなに仲良くなっても他人です。他人だからこそ、一緒にいて楽しい。違うから面白いし、同じ時はとても嬉しい(笑)」

夫婦でも他人であるということ。そう感じることは寂しいことではなくて、一人の人間として自立し、お互いの個性を認め尊重するところからはじまります。“違う”ことはストレスではない。その価値観はパートナーとして生きる大切なポイントになります。

「3日でワンセット」をルール化し暮らしをリセットする

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さらに、兎村さんは自分らしく暮らすためのルールを持っていました。

「私は“3日でワンセット”をいつも意識してスケジュールを組みます。無理をして仕事をしたり、友だちと会ったり、フル活動で頑張ると身体も心も疲れます。そうなると、うまくバランスがとれなくなって回復が遅くなってしまうんです。

スケジュールを組むとき、3日をワンセットにし、1カ月を10パックにしています。

3日の内訳としては、1日は打ち合わせや人に会うなど家の外の用事を済ませる日。1日は家の中でリラックスした恰好でお仕事を頑張る日。1日は仕事を少なくし、掃除をしたり、身体を休めたり。疲れが残っていたら昼寝したり、インプットしたい知識の本を読んだりと暮らしを調える日。3日できっちり回復できるペースで暮らします。頑張る日と頑張らない日を作る事でメリハリもでます。

若い頃は仕事で自分を追い込み、頻繁に遊びに出かけていました。予定を埋めて満足していたように思います。休むことに不安もありました。若くて体力があったのからできたのかもしれませんね。

40歳を手前にして、ひとつずつの仕事のプレッシャーも大きくなってきたし、体力が衰えて頑張れなくなってきたので、自分の内面や本音と向き合える時間を大切にする生き方を変えました。私の声は私が最初に聞く。当たり前の事ですが、そういう自分を大切にする時間こそ、不安を減らしてくれる良い時間でした。

しっかり働いて、しっかり休む。上手にサボることで、暮らしも気持ちも心地よくととのっています」

子育て中の方など、なかなか自分の時間を作るのが難しい人はどうすればよいでしょうか?

「毎日、仕事も家事も育児も完璧に100%で過ごしていたら、誰でもきっと疲れてしまうので、75%や65%でOKくらいの気持ちで過ごすように心がけてみてもいいと思います。

たとえば1日目は料理も掃除も頑張る。2日目はちょっと手抜きにして上手にサボる。3日目は周りの人に素直に甘えて手伝ってもらう。毎日全力だと続けるのが難しくなります。全部頑張りすぎない工夫をしてみるのもよいのではと思います。

頑張ることが偉いわけではないですし、サボることを必要以上に罪悪感を持つ必要もない。苦しくならないように、幸せを感じながら出来ることをする。そのくらいでも十分だと、私は思います」

「もし、頑張らない日に罪悪感を持ってしまう方は“手を抜いている”のではなく、“パワーを蓄えている”と捉えてみるのはいかがでしょうか。家事や子育ては毎日続いていくもの。自分のバランスを調えるルールやルーティーンを作る事で、まずは自分が幸せになる。幸せなら家族も周りの人も自然と幸せになっていくのかなと思います。どんな人も、自分を大事にしていいんです」

兎村さんはクリエイターという仕事柄、本を読んだり、映画を見たり、自分の中に新しい情報をインプットして、感性を育てていくのも大切な時間だと話します。忙しく働きながら家事も育児もしなければならない人にとって、忙しさをコントロールしないと、自分のための時間を生み出すことは容易ではありません。

兎村さんは“3日でワンセットルール”を決めることで、若い頃に比べて、生活のバランスを整えることができるようになったと笑顔で話します。心にゆとりを持って暮らすには、完璧にこなそうと頑張りすぎず、時には自分で肩の力を抜いてあげる。これって本当に必要なことですね!

SNSの「いいね!」に振り回されなくていい

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最近はインスタグラムなどに、おしゃれで素敵な部屋の写真がSNS上にたくさん溢れています。インテリアの参考にチェックしている人も多いのではないでしょうか?

最後に兎村さんは、最近のSNSについて感じることを語ってくれました。

「自分の子どもの頃を振り返ると、遊びに行ったどこの友だちのおうちも、それなりに生活感に溢れていたように思います。家の中って、わざわざ写真を撮って誰かに見せるということがほとんどなかったんですよね。インテリアや収納が素敵じゃなくても、特に気にしないで済んだのかなと思います」

「今は、おしゃれな部屋をSNSにアップする人が増えました。メディアでもインテリア特集や収納片付け特集の記事をたくさん目にします。

そういうSNSやメディアに登場する写真は、撮影前にキレイに片付けたり、生活感あるモノをこっそり隠していたり、光がキレイに入る時間を狙って撮っていたり。補正アプリで修正したりもしています。

素敵に見せようとする努力自体は素敵なことですが、流れてくる情報を真に受けすぎて“私もやらなきゃ! みんなやってるのかも!”と焦ったり不安になると、永遠と続く日々の暮らしに疲れてしまいます。

“こういう暮らしもよさそうね〜、素敵ね〜”と一歩も二歩も引いた視線で情報を見て、楽観的に楽しむくらいがちょうどいいものです。情報に憧れて背伸びしすぎたり、補正された美しいものと現実の暮らしを比べすぎないことは大切な心構えかなと思います。

どんどん可視化される世界で、他人の目や評価を全く気にせずに生きるのは難しいことかもしれませんが、誰かと自分を比べず、自分の好きなことを大事にすることはきっとできるはず。好きという気持ちに素直になり、無理をせず楽しめたら、自然と“自分らしい心地よさ=センス”というものに育っていくのかなって思います」

SNSの普及で誰がどこでどんな暮らしをしているか、簡単に覗けるようになりました。手軽に楽しい情報はどんどん集まってきます。情報との距離感を身につけておかないと、簡単に振り回されてしまう時代になりました。兎村さんが教えてくれたのは、何よりも「自分の好きを大切にする」ということ。そこから自然と身についていく知識や経験が、心地よい暮らしを育てる“種”になっているような気がします。

最後に今一度、兎村さんの言葉に還ると、まさに「暮らしは生き方の集大成」。他人の評価に振り回されず、自分らしく暮らしや住まいを心地よく整えていくことが、幸せな生き方へと繋がっていくはずですね。

【取材協力】

兎村彩野さん

1980年東京生まれ、北海道育ち。

高校在学中にプロのイ ラストレーターとして活動を開始する。

暮らしをモチーフにしたシンプルなイラストを得意とする。

ドイツの万年筆 LAMY safari で描く「LAMY Sketch」が人気。

LAMY公認のイラストレーター。

Twitter:https://twitter.com/to2kaku

Instagram:https://www.instagram.com/ayanousam/

取材・文/岸綾香

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