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黄金時代のパリにトリップ!華やかで深いフレンチアニメ「ディリリとパリの時間旅行」は大人に近づく子どもと観たい

新海誠監督作『君の名は。』(2016年)や片渕須直監督作『この世界の片隅に』(2016年)で、日本のアニメ映画の素晴らしさに目覚めた人も多いのではないでしょうか。

現在公開中の新海誠監督の最新作『天気の子』を子どもと一緒に観に行った人も少なくないと思います。8月24日に公開されるフレンチアニメ『ディリリとパリの時間旅行』も小学生高学年以上の子どもなら親子で鑑賞できる傑作。6月に開催されたフランス映画祭2019横浜でエールフランス観客賞を受賞した本作の見どころを、映画ライターの此花わかがご紹介します。

『ディリリとパリの時間旅行』あらすじ

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© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

時代は1900年。南太平洋にあるフランスの海外領であるニューカレドニアに住むディリリは、どうしても外国に行ってみたくて密かに船に乗り、パリにやって来ました。パリはベル・エポックが花咲いていた頃。第5回万国博覧会でニューカレドニアの「カナック村」という人間動物園に出演していたディリリは、配達人のオレルという青年と知り合い、彼にパリを案内してもらうことに。

ところが、ディリリを誘拐しようとする男が現れます。この頃、少女たちを誘拐する「男性支配団」と呼ばれる集団がパリの人々を脅かしていました。ディリリとオレルはベル・エポックをけん引する有名人たちの助けによって、男性支配団を追いかけ、少女たちを救う冒険へと旅立ちます……。

登場するベル・エポックの偉人は、なんと100人以上!

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© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

オレルが案内人の役割を務め、ディリリとオレルは、パリが繁栄した華やかな時代である“ベル・エポック”の中心で活躍していた著名人たちにヒントをもらい、「男性支配団」と対峙していきます。モンマルトルの芸術家たちが活動の拠点としていたアトリエ兼住宅「洗濯船」では若かりし日のパブロ・ピカソから男性支配団のアジトの手がかりを得、オレルが狂犬病に噛まれてしまったときはワクチンの予防接種を発見したルイ・パスツールにワクチンを打ってもらう……。

そして、希代の舞台女優サラ・ベルナールと一緒に犯人たちを追い詰めていくのです。

画家のアンリ・ルソーやクロード・モネ、作曲家のサティやクロード・ドビュッシー、作家のアンドレ・ジッドやオスカー・ワイルドなど、ディリリが織りなす冒険劇に登場するベル・エポックの偉人たちは、なんと100人以上。はらはらドキドキする冒険劇を通して、1900年から第一次世界大戦が勃発する1914年まで、フランスの国力が最も栄え、政治・経済・文化すべての面で歴史に残る才能を輩出したベル・エポックの時代を改めて知り、学ぶことができます。(1)

また、映像の美しさも格別! 当時にタイムトリップしたかのような気分になれます。

華やかな時代の影…植民地主義なども描かれる

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© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

とはいえ、ベル・エポックの時代は明るい面ばかりがあるわけではありませんでした。1900年当時、フランスの植民地主義は最も拡大しており、本作の万国博覧会でディリリが出演する人間動物園とは、フランスの植民地から現地人を呼び寄せて“レプリカ村”で彼らがどのような生活を送っているかを見物客に見せるもの。(1)

現代の価値観では非人道的なこの人間動物園は万国博覧会の至るところに設置されており、欧米の近代社会とは対極に、植民地に住む現地人は原始的生活を送っているという印象を人々に植え付けて、植民地主義や帝国主義を正当化していたようにも考えられます。

男女不平等にも問題提起

© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

フランス文化を高らかに謳い上げたように見える本作では、他にも、社会規範を超えて性の自由自分らしさを追求した女性作家コレットやフェミニストの教育者を登場させたり、女の子を誘拐して男尊女卑思想を洗脳する男性支配団をモチーフにしたりすることによって、男女不平等に対しても問題提起しています。

例えば、生まれ故郷のポーランドで、性別が原因で大学に入学できなかったマリー・キュリー夫人(物語にも登場します)はソルボンヌ大学で学び、科学者として放射能の発見の功績が認められて史上初の女性ノーベル賞受賞者という快挙を成し遂げました。(1) しかしながら、この時代のフランスでは、上流階級の女性以外、離婚や子供の養育権、そして、財産の管理権も許可されていなかったのだとか。

加えて、ディリリの衣装を作る人物にファッション・デザイナーのポール・ポワレが顔を出しているシーンも女性解放を象徴しているよう。この時代、女性を窮屈なコルセットから解放し、ゆったりとしたウエストラインのドレスを発表したのが彼なのです。

© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

体制に抗う人々を描き続けるフランス・アニメーション

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『キリクと魔女』『夜のとばりの物語』などで知られるフランスアニメーション界の巨匠ミッシェル・オスロが監督した本作

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アニメ産業の規模はハリウッドや日本と比較すると小さいとはいえ、アニメーション専門のフェスティバルとしては、世界でもっとも長い歴史をもつ「アヌシー国際アニメーションフェスティバル」を開催するフランス。リュミエール兄弟の発明による映画を生んだフランスはアニメーションに対する芸術的・文化的関心がとりわけ高い国としても有名で、商業的に成立しないアニメーションを援助してきた歴史があり(2) 、体制に抗う人々を題材に物語性の高いアニメーションを輩出してきました。

 

ベル・エポックの光と影を映し出しながら、人種的・宗教的マイノリティ、女性や子どもなどの社会的弱者を抑圧から解放する物語を描いた『ディリリとパリの時間旅行』は、2D3DCGが融合した美しいアートアニメーションとしてだけではなく、現代社会でも見受けられる様々な問題についても考えさせられる傑作アニメーション。

小さいお子さんですと、ちょっと難しい点もあるかもしれませんが、大人になっていくお子さんと、ぜひ親子で鑑賞してほしい1本です。

 

【参考】

1…『ディリリとパリの時間旅行』プレス資料

2…フィルムアート社「ユーロ・アニメーション 光と影のディープ・ファンタジー」

【上映情報】

■タイトル:『ディリリとパリの時間旅行』

『ディリリとパリの時間旅行』公式サイト

■コピーライト表記:

© 2018 NORD-OUEST FILMS STUDIO O ARTE FRANCE CINEMA MARS FILMS WILD BUNCH MAC GUFF LIGNE ARTEMIS PRODUCTIONS SENATOR FILM PRODUKTION

■配給:チャイルド・フィルム

824日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

 

 

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