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夜景も楽しめる!「森美術館」で現代美術を体感【ふらりと大人美術館】vol.3

残業ばかりで平日は美術館になかなか行けない、混雑した美術館はちょっと苦手……。そんな方は、いっそのこと20時を過ぎてから美術館を訪れてみてもいいかもしれません。

美術ライターの浦島茂世が働く大人の女性に美術館をおすすめする【ふらりと大人美術館】、vol.3の今回は現代美術の企画展を多く開催している六本木の『森美術館』をご紹介します。“現代美術を楽しめるようになるポイント”も要チェックです!

<上写真:『森美術館』内観(センターアトリウム) 画像提供:森美術館>

六本木ヒルズの最上層にあるアートの空間「森美術館」

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2018年で開業してまもなく15年になる六本木ヒルズは、オフィスビルやショッピング・モール、映画館にレジデンス、ホテルなどを擁する大規模複合施設。いまや、東京を語るうえで欠かせない存在になりました。

そのシンボルが高さ238mの超高層ビル、六本木ヒルズ森タワー。そして最上層にある『森美術館』です。

『森美術館』は、現代性と国際性を軸にすえた企画展を行う美術館。ジャンルにとらわれることなく、いつもワクワクするような展覧会が行われています。

外観(ミュージアムコーン) 画像提供:森美術館

『森美術館』の嬉しいところは、なんといっても火曜日を除いて22時まで開館していること。さらに、展覧会の会期中は原則として無休であること。とくに、20時以降になると館内のゆったりした雰囲気は増していきます。

ですので、軽くご飯を食べたり買い物を済ませてから1日の締めくくりとして美術館に足を運ぶのがオススメ。52Fにはコインロッカーも完備されているので、ノートPCを持った仕事帰りでも軽やかな気分で鑑賞できます。

そして『森美術館』では、著作権の都合や展覧会の性質によって難しい場合を除き、可能な限り館内でも撮影がOKだそう。展覧会によっては、全作品撮影が可能なことも。

撮影OKの場合は、鑑賞中に気になるものがあったら作品の写真だけでなく、キャプション(作者の名前や原材料・作品解説が書いてあるボード)もカメラに収めておきましょう。
家に帰って、作者の名前をインターネットで検索してみたり、撮影した作品解説を読んだりして余韻に浸るのも楽しいものです。

美術館だけじゃない! 夜景&パブリックアートも充実

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さらに『森美術館』のよいところは、展望台『東京シティビュー』も併設されていること。

高さ11メートルを超える吹抜けガラス張りの開放的な空間から、東京を一望でき、東京タワーやスカイツリーがライトアップされる夜間はとくにドラマティック。

美術館に興味のない友人や夫には、「展望台に行こうよ」と誘ってみるのもいいかもしれません。(そして美術館の楽しさに気づいてもらえると本当に嬉しい!)

ちなみに、六本木ヒルズのコンセプトは「文化都心」。多彩な都市機能や様々な文化装置を集約し、人々の出会いや交流、対話を育むことを試みています。
そのため『森美術館』だけでなく、六本木ヒルズ全体にパブリックアートにあふれています。美術館を訪れたあとにちょっと時間があるようでしたら、“パブリックアート散歩”もおすすめです。ガイドマップも用意されていますよ。

夜、ちょっと時間に余裕があるときに、都心の美術館にふらっと立ち寄って現代アートに触れる“大人の時間”を満喫してみてはいかがでしょうか。

現代美術、そんなに身構えなくてもいいんじゃない?

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今回ご紹介した『森美術館』は、現代美術の企画展を中心に開催している美術館です。

現代美術は世界中で「ちょっとむずかしい」「わかりづらい」と思われていたりもするジャンル。そのため、現代美術を扱う世界中の美術館は「もっとわかってもらえるようにしなくては」と日夜考えています。

企画展にも鑑賞者との距離を縮めるようなさまざまな工夫がされていることが多く、観る人がちょっとだけ美術館の試みや作家に歩み寄れば、敬遠しがちな現代美術をかなり楽しく感じられるはず。

ここでは、“現代美術を楽しめるようになるポイント”を2つお伝えしましょう。

(1)入口の「ご挨拶」をしっかり読んでおく

展覧会の入口には、美術館からの“ご挨拶”の文章が掲げられています。素通りしてしまう方も多いかもしれませんが、ここはしっかり読んでおきましょう。

・なぜ、その展覧会をやるのか

・(とくに個展の場合)どうして該当作家が選ばれているのか

・(グループ展の場合)選ばれた作家たちは、どのようなくくりなのか

・作家たちはどんなことを表現しているのか

・展覧会で鑑賞者にわかってもらいたいこと

展覧会冒頭のご挨拶には、上記のような内容が手短にまとめられています。展示を観る前に少しだけでも読んでおくと、鑑賞する作品がもっと面白く思えてくるはずです。

ちなみに個人的には、作品の横などに設置されている作品名やキャプション(解説文)を、作品を観る前に読むことはあまりおすすめしません。
まず先入観を持たずに作品を観たあとに作者名やタイトル・キャプションを読んだほうが、「なるほど」と感じて納得したり、びっくりしたり、じつは皮肉たっぷりの作品であることなどがわかってきます。いわゆる“ネタバレ”防止ですね。

2018年4月1日まで『森美術館』で開催されていた展覧会「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」を例にお伝えしましょう。

レアンドロ・エルリッヒは、アルゼンチン生まれの現代美術アーティスト。
作家の名前は知らなくても、石川県 金沢市の『金沢21世紀美術館』にある作品≪スイミング・プール≫は、現地のポスターや雑誌・WEBなどで、その作品を見たことがある方も多いのではないでしょうか。水がたっぷり満たされたプールに見えるこの作品は、じつはガラス板の上に水がわずかに張られているだけのもの。ガラスの下は自由に人が動ける空間です。

プールだと思って見下ろしてみたら、自由に人が動いている!

レアンドロ・エルリッヒは、このような“普通とはちょっと違う感覚のズレ”を作品に取り込み、固定観念を打ち破る作品を多く作っています。

同展覧会の入口の挨拶文には、

彼の作品は、現実とは私達が見たとおりのものなのか、幻影なのか、あるいは事物に対する認識が根本的に間違っているのかといった、科学的であると同時に哲学的な疑問を問いかけます

と書かれていました。

このことを意識して作品を観ていくと、上述の≪スイミング・プール≫以外の作品にも同じような意図が含まれていることがわかってくるのです。レアンドロ・エルリッヒは鑑賞者に、自分たちや世の中について“普段とは違うものの見え方や考え方”を持つきっかけを与える作品を多く制作しています。

作品を観て全部を“わかる”必要はありません。鑑賞することで、自分のなかで何か味わったことがない感覚が生まれる体験ができたら、それで大成功なのです。

(2)「ギャラリートーク」や「ワークショップ」に参加してみる

挨拶文とキャプション以外にも、美術館はさまざまな工夫を行っています。
展覧会や作品を解説するギャラリートークや、実際にいろいろな手法や技法を用いて“自分の作品”を作るワークショップなども一例。

美術館が美術好きな人のためだけの施設だったのは、もう昔の話。
義務教育が週休2日制になったころ、つまり1990年代から、美術館はお休みの日の受け皿になるべく“教育普及活動”を充実させるようになっています。お近くの美術館でも、いろいろなイベントが行われているはず。

なかでも、『森美術館』はイベントが豊富で非常に充実しています。展覧会ごとに、作品や作者への理解を深めるために解説を交えて展示を観てまわる“ギャラリーツアー”や、子どものためのワークショップなども頻繁に開催。視覚や聴覚に障がいがある方を対象としたギャラリーツアーなども行われています。

「現代美術について知りたいけれども、どこからどうしていいのかわからない」という方から、「もっと深くアートを知りたい」と感じている方まで、きっと楽しめるはず。

まずは参加してみましょう!

※ 画像の転載は一切禁止させていただきます

(※情報は2017年12月現在のものです)

 

【参考】

六本木ヒルズパブリックアート&デザイン – 六本木ヒルズ

【施設情報】

森美術館

東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階

開館時間:10:00〜22:00/火曜 10:00〜17:00
※入館は閉館30分前まで

休館日:展覧会会期中は無休

最寄り駅:
東京メトロ日比谷線「六本木駅」コンコースにて直結
都営地下鉄大江戸線「六本木駅」徒歩4分

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