子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

えっ!「ぼたもち」と「おはぎ」の違いはそこなのか。お彼岸に食べる理由も!

知ってると誰かに話したくなる【食べ物の違い豆知識】を紹介するこのシリーズ。26回目は、お彼岸の時季によく目にする「ぼたもち」と「おはぎ」について。なぜお彼岸に食べるの?そもそも違いは……料理研究家・時吉真由美さんが解説してくれました。

まずは「ぼたもち」と「おはぎ」について調べてみると…

null

【ぼたもち】

糯米(もちごめ)と粳米(うるちまい)とをまぜてたき、軽くついたものを、ちぎって丸め、あずき餡、きなこなどをまぶしたもの。萩のもち。おはぎ。やわやわ。隣知らず。

【出典】精選版日本国語大辞典 小学館

【おはぎ】

もち米、またはもち米とうるち米とをまぜて炊き、軽くついて丸め、小豆餡・きな粉・すりごまなどをまぶしたもの。彼岸に作る。ぼたもち。はぎのはな。

【出典】デジタル大辞泉 小学館

「ぼたもち」と「おはぎ」材料や作り方はほとんど同じ。でも…

もち米やうるち米、あんこやきなこなど材料において大きな違いは見られません

炊きあがったお米は、どちらも“軽くつく”と、作り方も同じです(今では、しっかりとついて滑らかなお団子状態のものも売られていますが、お餅部分はお米の粒感が残るくらいが基本スタイルなんですね)。

辞典には「ぼたもち」の別名として「おはぎ」が、「おはぎ」の項目にも「ぼたもち」が別名として記されてもいて、もはや両者は同じもの(ぼたもち=おはぎ)という認識?

では、違う呼び名があるのはなぜなのでしょう。

ズバリ、「ぼたもち」と「おはぎ」の違いは季節にあった!

null

「ぼたもち」と「おはぎ」、呼び名の由来は?

料理研究家・時吉さんによると……

「一般的に、春のお彼岸に作られるのが“ぼたもち”、秋のお彼岸では“おはぎ”と呼ばれます。

そもそも、お彼岸は年に2回あり、それぞれ春分の日と秋分の日を中日として前後3日間がお彼岸期間となります。お彼岸とはご先祖さまを供養する期間のことで、ぼたもち・おはぎはお供え物なんです(ちなみに、今年は9月20日9月26日が秋のお彼岸)。

春のお彼岸は、牡丹の花が咲くシーズンであることから“ぼたもち”と呼ばれるようになったのが由来と考えられています。一方の“おはぎ”は、萩の花が咲くころにお彼岸を迎えることからこう呼ばれるようになったようです」(以下「」内、時吉さん)

ぼたもち
牡丹の花
おはぎ
萩の花

同じお供え物でも、作られる季節によって呼び名を変えていたんですね。しかも、花の名前にちなんで名付けていたとは、風流です。

「ちなみに、神さまに収穫を感謝して捧げたのが、ぼたもち・おはぎのはじまりとも言われます。

古来、あずきの赤色には、魔除けの力があると考えられていました。

そのあずきと、五穀豊穣の象徴であるお米を取り合わせたものを供え、ご先祖さまに収穫を感謝しつつ、さらなる豊穣もお祈りしてきたんですね。

昔はどちらも貴重な食べ物。込められた想いの大きさがうかがえます」

今は気軽にいただけるようになって……ありがたい限りです。

「“暑さ寒さも彼岸まで”という言葉がありますが、本当にその通りですよね。春のお彼岸である3月20日頃を過ぎると暖かくなりはじめ、秋は9月20日頃になるとすっかり暑さも和らぎます。こうした季節の境をひとつの節目として、ご先祖さまへの供養と祈りを捧げるためにぼたもち・おはぎをお供えする習慣が生まれたんじゃないかな、と私は思います」

ぼたもち・おはぎは、日本の季節と暮らしに深く根付いた食べ物だったんですね。

形状や、粒あん・こしあんの違いは?

「諸説ありますが、ぼたもちは牡丹の花のように丸く、おはぎは萩の花、あるいはあずきを模した俵型などと言われています。

粒あん・こしあんについては、あずきの収穫時期と関わります。秋の“おはぎ”は、あずきの新豆がとれたてで豆が柔らかいので、豆そのものを生かした粒あん。春の“ぼたもち”は冬を越した固い豆を使うので、皮を除いたこしあんで作る、なんて言われているんですよ」

より美味しくいただくために作り方を変えていたとは!

「その他にも、もち米で作ったのが“ぼたもち”、うるち米で作ったのが“おはぎ”とする説や、あんこが“ぼたもち”で、きなこが“ぼたもち”とまぶすものの種類によるなど、両者の違いにはさまざまな説があります。

地域によっても違いますし、一概には言えなくなっているのが現状です」

「ぼたもち」「おはぎ」だけじゃない!じつは夏と冬の呼び名も…

「ちなみに、お彼岸シーズン以外に作られる場合はまた違う呼び名があることをご存じですか? 諸説ありますが、夏は“夜船”、冬は“北窓”と呼ぶんだそうです」

えっ!初耳です!

「ぼたもちやおはぎのお餅は、お米を臼と杵でつかないで作られるため、ペッタンペッタンと餅をつく音がしません。これを、いつ“着いた”か分からない夜の船になぞらえて、夏は“夜船”と呼ばれるようになったそうです。

また、冬は北にある窓から月が見えることはありません。こうした“月知らず”と“(お米)をつき知らず”をかけて“北窓”と呼ばれるようになったとか。ユニークですよね」

なんて洒落のきいたネーミング! 花になぞらえたり、風流な言葉遊びによる呼び名がつけられていたり……。こんなにも奥深い食べ物だったんですね。

今まで何気なく食べていた和菓子ですが、季節よって呼び方を変えて、味わいたいなと思いました。

 

構成/kufura編集部

時吉真由美
時吉真由美

料理研究家。(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表

土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIP!MOCO’Sキッチン」(放送終了)「有吉ゼミ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍。

Instagram(@cooking_clocca)では、日々のお料理や季節の和菓子といったレシピを中心に、オススメの調理器具やロケ先で出合った食材などを発信中。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載