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「おせち」のお重には何を入れるのが正解?食材の意味や詰め方のルールは…【知っておきたい食の歳時記】

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おせち料理を引き立ててくれるのが「重箱」。しかし、いざ詰めるとなると、何段目のお重に何を入れるんだろう、どんな風に詰めたらいいんだろう……と迷ったことはありませんか?

お重の各段に詰める食べ物と、そのいわれ

おせちの由来をご紹介した前回続き、教えてくれたのは、料理研究家・時吉真由美さん。
重箱に詰める時のポイントや、食材に込められた意味など初めて知ることもたくさん。時吉さんから、おせち=重箱に代わる、盛り付けスタイルの新しい提案も!

前回の記事はこちら→お正月に「おせち」を食べるのはなぜ?その由来と意味って…【知っておきたい食の歳時記】

━━まず、おせちを詰める重箱は、何段の物を使うといった決まりはあるのでしょうか

時吉真由美さん(以下、時吉):お重は五段が正式とされています。重箱を使うのは、“めでたいことが重なるように”との願いが込められているからなんです。今は簡略化されて三段などが主流ですね。

五段重を例にして、それぞれに詰める食材とそのいわれについて見ていきましょう。ただし、何を詰めるかなどは地域やご家庭によって異なりますので、あくまで一例として考えてくださいね。

【五段重の詰め方一例】

「一の重」には正月らしい前菜の“祝い肴”や“口取り”

酒の肴となるのが“祝い肴”です。関東では数の子・黒豆・田作り、関西では数の子・黒豆・たたきごぼうの3種類を指します。

“口取り”はお吸い物と一緒にいただくもので、主に伊達巻きや栗きんとんなど甘く煮たものを指します。

  • 数の子…ニシンの子。卵の数が多いことから子孫繁栄を願う
  • 黒豆…丈夫で勤勉にという意味の“まめまめしく”を意味し、元気に働けるよう願う
  • 田作り(ごまめ)…カタクチイワシを干したもの。昔はコイワシを田畑の肥料に使っていたことから豊作を願う
  • たたきごぼう…豊作の象徴とされる“黒い瑞鳥”に似ている
  • 伊達巻き…華やかさを添え、大切な古書などは巻物にしていたことから知識が増えるよう願う
  • 栗きんとん…栗金団と書き、財が貯まるよう願う
  • 昆布巻き…「喜ぶ」という音にかけておめでたいものとされる

「二の重」には海の幸の焼き物

  • エビ…ひげを生やし、茹でると背が丸まることから、腰が曲がるまで長生きできるよう願う
  • タイ…福の神のえびす様が釣り上げる魚で、縁起物の象徴。「めでたい」との語呂合わせも
  • ブリ…出世魚であることから立身出世を願う

「三の重」には箸休めとなるような酢の物

  • 菊花かぶ…菊には邪気を払う力があるとされる。また、旬の食材を象って長寿を願う
  • コハダ粟漬け…出世魚であることから立身出世を、また、クチナシで染めた粟で五穀豊穣を願う
  • 紅白なます…紅白は吉事の色であり、大根や人参は根をはることから家や家業の安定を願う

「与の重」には山の幸の煮物 ※四の字は忌み数のため与の字を使われます

  • れんこん…根に穴があいているので、見通しがよいとされる
  • 里芋・八つ頭…芋がたくさんつくことから子宝・子孫繁栄を願う
  • しいたけ…長寿の象徴の亀の甲羅に見立てる
  • ごぼう…根を張ることから家業の安定を願う
  • 手綱こんにゃく…結び目のかたちから縁を結ぶとされ、良縁や夫婦円満を願う
  • くわい…大きな芽が出ることから立身出世を願う。「めでたい」との語呂合わせも

「五の重」にはなにも詰めずに

控えの重として空にすることで、繁栄の余地があることを意味します。

━━どれも縁起を担いだり、願いが込められているんですね! ちなみに、三段重の場合はどうなるのでしょうか?

時吉:三段重の場合は、次のように詰めることが多いかと思います。

一の重…祝い肴や口取り

二の重…焼き魚や酢の物

三の重…煮物

五段重を例にとってみてきましたが、詰めるものは必ず和食でなければならないという決まりはありません。洋風、中華風のおせちだってアリです。

ただ、エビを使ってエビチリとか、豆を使ってチリコンカンなど、おせちとしていただくなら、食材の縁起やいわれを意識したメニューにすると素敵ですね。

━━おせちの根本を大切にしつつ、メニューは自由に楽しんでいいんですね。

おせちの詰め方や、詰める時のコツ

━━いざおせちを重箱に詰めようとすると、バランスや料理の配置などに悩んでしまいます。どんなふうに詰めたらいいのでしょう?

時吉:基本的な手法として、お重を縦横2段の正方形に仕切る「田の字」や、仕切り数を増やした「市松」があります。

他にも、斜めにまっすぐ仕切る「手綱(升掛け)」や、中央に小鉢などを置いて、その周りを四隅に向けて末広がりに盛り付ける「末広」などがあります。

盛り付けるものによって段の幅を変えてみるなど、アレンジを楽しんでみてはいかがでしょうか。

【盛り付けイメージ】

おせちの詰め方 田の字
「田の字」
おせちの詰め方 市松
「市松」
おせちの詰め方 手綱(升掛け)
「手綱(升掛け)」
おせちの詰め方 末広
「末広」

━━お重に詰める時のポイントはありますか?

時吉:いくつかコツやルールがあります。

  • 十分に冷ましてから盛り付ける
  • 品数は、縁起がいいとされる奇数にする
  • 奥から手前の順に詰めていく
  • 見栄えをよくするため、同じ色合いのものは隣り合わせにしない
  • 魚やエビの頭は左向きにする

仕切りにバランを使ったり、小鉢や中身をくりぬいた柚子などを器として活用すると、上手に詰めていけると思いますよ。

また、“あしらい”があることでぐっと見栄えがよくなります。

あしらいには、縁起のよい植物とされる松葉や笹、“難を転ずる”として有名な南天などがよく使われますね。華やかな金箔もふりかけるだけでグレードアップしてくれます。

また、「つくばね」というビャクダン科の植物の実があるのですが、その形が羽根つきの羽根に似ているのでおせち料理のお飾りにぴったりなんですよ。

つくばね
羽根つきの羽根に似た植物の実、「つくばね」。
ちょろぎ
巻貝のような形をした「ちょろぎ」は、シソ科の植物の塊茎。梅酢に漬けた色鮮やかなものが多い。

あしらいとはちょっと違うお話なのですが……私は“赤いもの”は神様の目印になると教わりました。

黒豆の煮物に赤いものが入っているのを見たことはありませんか? あれはシソ科の植物の茎にできるもので、「ちょろぎ」という食べ物です。

「長老喜」「長老貴」「千代呂木」などめでたい漢字があてられ、長寿を願うとされているんですよ。南天やちょろぎなど、ちょっと意識して赤色のものを入れてみるのも、いいかもしれませんね。

おせちをワンプレートで!「盆盛り」スタイルの提案

おせち ワンプレート

時吉:これまで重箱への詰め方などをお話ししましたが、じつは我が家では、長らくおせちを重箱に詰めていないんです(笑)。

我が家のおせちは「盆盛り」スタイル。

「盆盛り」とは、各おせち料理をタッパーなどに保存しておいて、都度、塗りのお盆や洋風のお皿などに少量ずつ盛りつけるスタイルのこと。つまり“ワンプレートおせち”です。

お重だと2日目、3日目と日が経つにつれて中身に隙間ができ、寂しい感じになってしまうんですよね……。けれど、盆盛りなら各人好きなものを好きな量いただけますし、その都度盛り付けるので、パッと見た時の華やかさも変わりません。

━━たしかに2日目くらいから重箱のおせちは“残り物感”が出てしまいがち……。盆盛りにしてみるのも手ですね。重箱を持っていない方でも、手軽におせちが楽しめそうです!

おせち ワンプレート

時吉:お盆やお皿に盛る場合。奥に足付きグラスなどで高さを出し、手前から奥に向かって高くなるように盛り付けていくと、バランスよく、おしゃれに見えますよ。

あとは、前述の“あしらい”で、お正月らしさを演出してあげると、より特別な一皿になります。

私は「品数は奇数に」といった基本を守りつつ、リンゴのブランデー煮の“フルーツきんとん”を盛るなど、今風のアレンジおせちを楽しんでいます。

 

縁起物づくしの「おせち」には、昔から変わらない、人びとの暮らしへの願いが込められていました。重箱に詰めていただくのもよし、気分を変えて盆盛りでいただくのもよし……。おせち料理の意味や縁起をしっかり心に留めながら、思い思いのスタイルで、過ごしやすいお正月を迎えたいものですね。


【取材協力】

料理研究家 時吉真由美

(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIPMOCO’Sキッチン」「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍中。

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