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【2022年版】「今年買うべき新米5選」を五ツ星お米マイスターが厳選!お米の流行丸わかり

新米のおいしい季節、でも種類がたくさんあってどれを買えばいいのか迷ってしまう……という人も多いのではないでしょうか。

そこで、五ツ星お米マイスターの西島豊造さんが、今年買うべきイチ押し品種を特別に教えてくれました。

甘味、粘りのある米なら『ゆめぴりか』と『いちほまれ』

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前回の記事でも紹介しましたが、今年の新米は温暖化の影響を受け、とにかくクセが強いため、米選びは慎重に行うべきと西島さん。

さらに米は品種でいえば900以上、そのうち流通しているのは200前後もあるそう。その中からおいしい米を選ぶのは至難のワザですよね……。米のプロが太鼓判を押す今年のおすすめ、ぜひ知りたいです!

今年の新米の特徴について、詳しい記事はこちら→「2022年の新米」の特徴は?よりおいしく食べる方法を五ツ星お米マイスターが伝授します!

◆今年最強の米はコレ! 甘味、粘り、過去最高の仕上がりに

『ゆめぴりか』

今年最高の出来は『ゆめぴりか』。今年は、過去最高とも言えそうです。猛暑や台風の影響を受けた本州や西日本に比べ、北海道の米はほぼ無傷でした」(西島さん、以下「」内同)

すっかり北海道ブランドのイメージが定着しましたが、そもそも『ゆめぴりか』は、本州のコシヒカリに挑んで開発した米。おいしい米が作れないと言われ続けた北海道で、コシヒカリに負けない際立つ甘味、粘り、濃い味わいが特徴の北海道最上級ブランド米です。

「北海道は雪解けと共に田植えをして、9月中旬には稲刈りを終えなければならないため、通常の米よりも栽培期間が短い。そのため、北海道の気候と環境に合わせた独自の米を生み出さなければならなかったのです。その集大成が『ゆめぴりか』で、悲願だった「北海道ブランド」を確立しました。

しかしながら『ゆめぴりか』は、北海道全域で同品質・同食味で作れる米ではなく、どうしても産地・地域・生産者によって品質と味に偏りが生じてしまう現実があります。

そのため、購入する際は「種子更新率100%」「栽培適地での生産」「タンパク含有率基準」などの厳しい品質基準をクリアした『ゆめぴりか』にだけ付与される「認定マーク」の有無を確認する必要があります。

ところが、今年はどこの産地もレベルが高く、普通にスーパーで売っている『ゆめぴりか』でも本来の味が出ているくらいレベルが高い。すべての産地が極上品になっているんです。

いままでこんな年はまったくなかった。今年の太鼓判は間違いなく『ゆめぴりか』ですね!」

◆福井のポストコシヒカリ。安定したおいしさをキープ!

『いちほまれ』

©ふくいブランド米推進協議会

「次は福井県で誕生したポストコシヒカリと称される『いちほまれ』。

コシヒカリを生んだ福井県が、次の世代の米を作るべく、6年の歳月をかけて“コシヒカリを超える米”として開発し、’18年にデビューしました。

特に今年はコシヒカリの品質ぶれが多いなかで、『いちほまれ』は比較的安定しています。

コシヒカリのおいしさを求めて最上級品を狙うんだったら、今年は『いちほまれ』の方がウマイ! 炊飯器の反応もよく、失敗がありません」

子どもや若者に大人気!『雪若丸』と『新之助』が2トップ

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さらに近年外せないのが、この2つ。最近は米の傾向も変わってきて、次世代にバトンタッチしていると西島さんは話します。

「昭和の頃は甘味や粘りの強いコシヒカリがブランドでしたが、今の子どもたちはコシヒカリはいつも食べている当たり前の米。それよりも、おにぎりやカレー、チャーハンなど若者はしっかり粒の張っている米が好き

そういう嗜好の変化に合わせて誕生したのが、粒感があって食べ応えのある『雪若丸』と『新之助』です。唐揚げなど油っぽいおかずとの相性も抜群。この2強はいまの子どもたちや若者にとって外せない米なんです。

◆つや姫の弟君として誕生!カレーやチャーハンに合う米

『雪若丸』

「山形県が生んだ『つや姫』は、炊き上がりが美しくて上品な味わい。女性好みで日本でもっとも和食に合う米と言っても過言ではありません。

そんな『つや姫』のヤンチャな弟君として、’18年にデビューしたのが『雪若丸』です。高級路線というよりは、もっとカジュアルに楽しめる米。

なんといっても、カレーやチャーハンに合う米と売り出したのが衝撃! いままでは、カレーやチャーハンに合う米というのは、正直出来の悪い米の代名詞でした。でも時代が変わり、味の好みも変わってきた。

これは大粒で張りがあって、調味料をかけたり、混ぜたりすると普通はベタッとしてくるのに、パラパラのまま。チャーハンが本当に上手においしくできてビックリしますよ」

◆冷めてもおいしい!お弁当やおにぎりに最適

『新之助』

「先に紹介した『雪若丸』はおにぎりにすると少し固いかもしれません。そこでおにぎりやお弁当にイチ押しなのが新潟県の『新之助』。

上越新幹線のコンビニでは『新之助』で握ったおにぎりが売られているのですが、鮭の腹子おにぎりはめちゃくちゃおいしい。

米にコクがあって、時間が経っても味が全然落ちてこない。粒感が維持されて、冷めてもおいしい米なんです」

10月29日にデビュー!秋田の新ブランド『サキホコレ』

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最後は今年10月29日にデビューする『サキホコレ』。「秋田県が生んだコシヒカリと言っても良いと思います」と、西島さんも太鼓判を押しています

米の誕生には長い年月がかかるため、どうしても「コシヒカリを超える特徴を持った米を誕生させよう」とする考え方が強い中で、ここまでトータルバランスが良い大型の新しいブランド米は貴重とのこと。

◆バランス力抜群な今年デビューの新星!

『サキホコレ』

©秋田米新品種ブランド化戦略本部

「秋田県といったら、きっと真っ先に思い浮かぶ米は『あきたこまち』という人も多いのではないでしょうか。『あきたこまち』の誕生からもう37年、いよいよ秋田ブランドとして大型の新星が登場します。

『サキホコレ』は和食との相性がすごくいい。寿司や和食に合う日本で最強の米『つや姫』のライバルになりそうです。絶対的ファンがついていて不動の人気を誇る『あきたこまち』のように、バランスが非常によく秋田らしい米と言えますね。

昨年の実験販売では、年齢を問わず男女8割からおいしいと評価されました。これからの発売が楽しみな、老若男女に愛されるオールマイティ型の米ですね」

ちなみに米には「男性系」「女性系」があると西島さん。

「昔はウマイかマズイかで評価されましたが、いろいろな品種が多数生まれたことにより、米も多様化してきました。そこで、男性系、女性系と私が表現し始めたところ、これが意外としっくりきて分かりやすいと評判がいい(笑)。

たとえば、食べ応えや粒感があっておにぎりや唐揚げに合う『雪若丸』や『新之助』は男性系。和食に合う上品な『つや姫』や『サキホコレ』は女性系。お米選びのひとつのポイントになるので、特に今年のように米選びが難しい年は、自分なりの判断基準を持つと好みの米に出会える近道になりますよ」

環境に配慮した次世代注目の米は「島」にあり!

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最後に、西島さんが注目する将来性がある魅力的な産地についても聞いてみました。共通ワードは、なんと“島”!

ユネスコ世界ジオパークに認定された「隠岐島」、ユネスコ世界文化遺産への登録を目指している「佐渡島」では、環境を守りながら米作りをしています。

◆地元の藻塩をまいて丈夫な米に育てる

『島の香り 隠岐藻塩米』

「隠岐世界ジオパークで育まれる米は、なんといっても地元で作られる「藻塩」をまいているのがおいしさの秘密。普通は塩をまくと塩害になり枯れてしまいますが、地元の海藻「アラメ」を薪釜で煮詰めたミネラルたっぷりの藻塩を薄めてまくことで、適度なストレスを与えます。

そうすると、しっかり根を張り丈夫な稲に成長します。そもそも隠岐の海岸は崖が多く、その崖を駆け上がった海風は霧に変わり、霧に含まれる塩水のミネラルもたっぷり浴びています。

他にも塩をまいている産地はありますが、ブランド米として藻塩をまくことをルールにしてここまで徹底している産地はありません。島なので流通量は少ないですが、旨味や甘味は他のコシヒカリと比べてダントツです」

◆朱鷺(トキ)が安心して暮らせる環境に優しい田んぼ

『朱鷺と暮らす郷』

「この米は、佐渡島の中心地にある“トキと共生する佐渡の里山”の平野で作られています。昔ながらの佐渡の伝統的な農法を用いて朱鷺との共生を目指した農業は、世界的にも評価され、日本で初となる世界農業遺産(GIAHS)にも認定されました。

田んぼで暮らす自然の生きものとの共生も大事に考え、江や魚道を設置したり、除草剤を使わず何度も丁寧に草刈りをしたり、自然環境を第一に考えた田んぼで育む米はやっぱりウマイ!」

サステナブルな暮らしが見直されるいま、環境に配慮し、その土地ならではの農法を大事にする米作りは、次世代への可能性を秘めていますね。

 

気になる米はあったでしょうか? どれも米のプロが厳選した今年イチ押しのものばかりなので、ぜひ好みの味を見つけてみてくださいね。

取材・文/岸綾香

 

【取材協力】

西島豊造

五ツ星お米マイスター。東京・目黒区にある米店『スズノブ』の3代目。北里大学獣医畜産学部畜産土木工学科を卒業後、北海道で水路などの農業土木の設計に携わり、1988年に家業の米店『株式会社 鈴延商店』を継ぐ。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、膨大な米と土に関する知識を活かし、新しいお米の時代を作るべく産地と消費者をつなぐパイプ役として、産地の特徴を活かした地域ブランド米作りに力を注ぎ、全国を奔走する。

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