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ゴミ袋には8分目まで!【ゴミ清掃芸人に聞く】7つの「捨て」マナーとは?

日々の生活に欠かせない“捨てる”という行動。どうせ捨てるなら、気持ちよく捨てたいですよね。そこで、お笑い芸人でありゴミ清掃員としても働くマシンガンズ・滝沢秀一さんのもとへ! 誰もが心がけたい「捨て」マナーを伺いました。

「花火は?テントは?【ゴミ清掃芸人に聞く】判断に迷うゴミの出し方」はこちらから!

袋に入れる前に、これを実践するだけで変わる!

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捨てるときに“これは本当にゴミ?”と立ち返るだけでもゴミは減る、とマシンガンズ・滝沢秀一さん。

「生まれたての赤ちゃんからも紙おむつが出るんだから、人はゴミを出さずに生活するのは不可能! だからこそ、捨てる前に『これは本当にゴミ?』って、ひと呼吸おいてみてください

ときどき新品の自転車や、開封していないお米、高級メロン丸ごとなど、ゴミとは思えないものが捨てられています。僕はもったいないって思うけど、捨てた本人には必要がない=ゴミになるんですよね。

だから、必要なものだけ買う。いらないものはもらわない。まだ使えるなら必要としている人に譲る。あとは、作り手の顔が見えるものを買うのもおすすめ。大切に使おう、残さず全部食べようっていう意識が湧きますよ」(以下「」内、滝沢さん)

 

ゴミ清掃員としての日常を綴った著書『このゴミは収集できません』(角川文庫)。滝沢さんは今や「サステナブル大使」も務め、ゴミに関する活動を積極的に行っています。

また“ゴミを清掃している人がいる”という意識を持つと、ゴミの出し方も変わるはずといいます。

「僕も自分がゴミ清掃員になって意識するようになったけど、ゴミは出したら終わりじゃない。誰かが回収して、処分しているから、街がきれいになるんですよね。そう思えば、めちゃくちゃな出し方もしないはずです」

心がけたい7つの「捨て」マナー

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さてここからは、滝沢さんに聞いた「これを心掛けてもらえるとゴミ清掃員としても嬉しい」「回収するときに助かる」という、捨てる際のマナーを紹介します。ゴミ清掃員の皆さんへ「ありがとう」の気持ちも忘れずに!

1:「決められた時間までに出す」

2トンのゴミ清掃車が一度に収集できる量は、およそ2トン=45Lのゴミ袋約900個分なのだとか。ものすごい量に感じますが「一度回収して車が満パンになったら仕事が終わり、ではないんです」と滝沢さん

とある集積場で見かけた「お願い」。「みんなの環境は、みんなの財産です。」という言葉が染みます。

「僕の場合は朝8時から夕方まで、回収→満パン→ゴミ処理場へ持っていく、という流れを6回繰り返します。清掃車のルートは決まっていて、僕ら清掃員は集積場全てが頭に入っています。

だから回収し忘れることはないはずですが、万が一『回収されていないから取りにきて!』という連絡が入ったら、もう一度そこまで行って帰ってこなければなりません。片道15分だとしても、往復で30分のロスになるわけで……。

となると、業務終了時間が伸びてしまう。これは、僕ら清掃員が大変なだけじゃなく、一つのゴミのために税金が余計に使われることにもなるんです。

なので必ず、当日の朝8時までにゴミは出してほしいです。出し忘れを防ぐために前夜に出す方もいますが、ネズミやカラスが集まる原因になるので、おすすめはしません」

2:中身が見えるビニール製ゴミ袋を使う

記者は、小さなビニール袋へ生ゴミなどを個別でまとめ、ゴミ袋へ入れています。「こういうやり方もありです」。

ゴミ袋にしていいのは、半透明もしくは透明で中身が見えるビニール製が基本です。濡れると破れてしまう紙袋や、真っ黒なビニール製の袋などは、何が入っているかわからないため回収されない場合もあるそうです(*)。

危険なものや回収できないものが入っている可能性も考えて、中身の見えない袋は『回収できません』という張り紙をして置いていきます。

個人情報など見られたくないものや、コーヒーかすなどの細かいゴミ、使用済みのティッシュやマスクなどを、個別で小さなビニール袋に包んでからゴミ袋へ入れるのはありです」

*「指定ゴミ袋制」の地域もあります。お住いの地域でご確認ください。

3:ゴミ袋に入れる量は8割、口は二重に結ぶ

中身が重い、ゴミ袋自体がもろい、口がきちんと結ばれていないなどの理由で、清掃員の方が掴んだ瞬間に袋がちぎれてしまうことも少なくないそうです。

1つの袋にパンパンに入れているのもよく見ますが、入れる量は袋の8割、口は二重に結んで出してほしいですね。袋自体に余裕がないと、ゴミ収集車へ入れた瞬間にはじける場合もあります。

はじけて道路に飛び散ったゴミは、僕ら清掃員が掃除します。コーヒーかすや発泡スチロールは掃除が特に大変なので、捨てるときに気をつけてもらえるとありがたいですね」

4:一度に出せるゴミ袋は3つまで

有料袋の地域は難しいけれど、レジ袋で出してもいい地域なら“神ゴミ”スタイルに。(写真提供:滝沢さん)

大掃除などで大量に出したい場合、一つの家庭で出せるゴミ袋の数には上限があるって知っていましたか? あまり多すぎると、持っていってもらえない場合もあるそうです。

基本的には、一家庭で3つまで。だから、たくさん捨てるものがある場合は、まとめてどさっとじゃなく、小出しにしてくださいね」

レジ袋を再利用する場合は「結び目同士を結んでつなげてもらえると助かる」とのこと。

「僕ら清掃員は “神ゴミ”と崇めているんですが(笑)、袋を掴んで収集車へ入れてという繰り返しは重労働。一つ掴んだら全部がくっついてくるこの捨て方は素晴らしいと思います」

5:生ゴミは水気を絞る

においを防ぐ意味でも「生ゴミは、捨てる前に一度ギュッと水気を絞ってほしい」と滝沢さん。

コーヒーをドリップした後のパック。流しに置いて水分をある程度流した後、ギュッと握るとまだまだ水分が出ます。

「いやなにおいの原因は、水で雑菌が繁殖するからです。ほうれん草のヘタを切り落としただけならにおわないでしょ? 洗ったり湯がいたりしたときの水気が残っていることが原因なんです。

水気があると、袋が重くなってはじける原因にもなったり、焼却に時間がかかるので余計なエネルギーも必要になってしまいます。つまり、お金もかかるし、地球環境にもよくないんですよね。

中には生ゴミを冷凍しておいてゴミに出す方もいますが、僕らが回収するころには溶けています。結局、においも出るし、焼却にも時間がかかる。だから一度ギュッと水気を絞る作戦でお願いします!」

6:危険なゴミとその出し方を知る

滝沢さんはゴミ清掃員になって以来、何度も危ない目にあっているそうです。

厚手のボール紙などで包むのも手。(写真提供:滝沢さん) 
必ず刃先などが飛び出ないように、ガムテープなどでしっかり固定を。(写真提供:滝沢さん)

「回収したゴミ袋から包丁が飛び出してきて、足のうえに落ちたことがあります。その時は柄が下だったからよかったものの……アイスピック、剣山、大量の竹串など、尖っているものが不意に出てきたり知らずに掴んだりして、清掃員がケガをすることは少なくないんですよ。

大前提として、包丁、アイスピック、剣山、割れたお皿などは、不燃ゴミに出す。そのとき、尖った箇所はそのままにせず、不要な紙や布でしっかり包んでください。そのうえで、袋に『包丁が入っている』など注意書きしてもらえると安心です」

充電式バッテリーには、ほとんどリチウム電池が使われています。(写真提供:滝沢さん)

また、清掃車火災の原因になる危険物もあります。それは、充電式のモバイルバッテリーや夏場に人気の携帯扇風機、充電式たばこなど、リチウム電池を使用しているものです。

可燃ゴミに混ぜるのは絶対にやめてください。リチウム電池は加圧されると発火するので、ゴミを加圧しながら回収していく清掃車の車内に入ると危険なんです。

清掃車火災の何が怖いって、回収してすぐではなく、例えば40分後に出火したりするんですよ。その頃には、原因になっている危険物は取り出せない奥深く、しかも収集車の中は燃えやすいものでいっぱい……。清掃員は燃える車を見ているしかありません」

清掃車火災は決して少なくなく、滝沢さんが働く地域だけでも、1年に数回は起こるそうです。うっかり捨てが危険を招かないように、捨てるときはもちろん、まずは捨て方を調べてから買うのも大事です

7:中身は全て使い切るか、出してから捨てる

危ない目といえば、中身入りのゴミも油断大敵なのだとか。

怖いのは、中身が入った漂白剤や農薬などの劇薬。ゴミ収集車に投げ入れた瞬間に、容器が圧縮されてブシャッ!と飛び出てくることも……基本的に、液体はゴミに出してはいけません

使いきれなかったピクルスやジャム、ソース類などの調味料なんかも、引越しシーズンに増えがちです。あと、ちょっとだけ飲み残したペットボトルや、灰皿代わりにした缶、使い切っていないスプレー缶……とにかく中身入りは困ります

そもそも何が入っているか分からない恐怖もあるし、資源の場合はリサイクルされなかったり、回収に余計なお金がかかったり。知ってます? 資源は回収すると、一つひとつ人の手で分別しているんですよ

「たくさんのゴミを通して、人間性や生き方まで見えてきた」と滝沢さん。

自治体によって、ゴミの出し方は違いますが、この7つは誰もが心がけられるマナーばかり。基本を知って、買ったものの最後まで責任をもちましょう!

撮影/五十嵐美弥(小学館)


 

【取材協力】

滝沢秀一(たきざわしゅういち)

1976年生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ『マシンガンズ』を結成。
『THE MANZAI 』 2012、2014年認定漫才師。
2012年より定収入を得るため、ゴミ収集会社に清掃員として勤務を始める。
現在、SNSや執筆、講演会等にて、ゴミ清掃中に気がついたことを発信している。
著書に『このゴミは収集できません』(白夜書房)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)などがある。
滝沢ごみクラブ」というゴミを減らすためのオンラインサロンを開催中。

ニイミユカ
ニイミユカ

兵庫県出身、浅草在住。一児の母。主に食や体のことなど、生活にまつわる地に足のついた企画を、雑誌や書籍、WEBメディアなどで編集・執筆する

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