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空間も作品! 人気作家「ボルタンスキー」大回顧展は五感で観る【ふらり大人の美術展#9】

この夏、六本木で開催されている現代美術展「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」。現代を代表する人気作家の大回顧展とあって、開始直後から注目を集めています。五感に訴える必見の展覧会を、早速ご紹介しましょう。
(上記写真: 「クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime」展 2019年 国立新美術館展示風景)

フランスの現代美術の巨匠、ボルタンスキー

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クリスチャン・ボルタンスキーは、1944年生まれのフランスを代表する現代美術家。歴史や記憶、人間の生と死の痕跡などをテーマに制作する、日本での人気も非常に高い作家です。

新潟県十日町市の廃校をまるごと使った『最後の教室』や、瀬戸内海の豊島にある、人々の心臓の鼓動で構成した『心臓音のアーカイブ』など、日本でも代表作が何点か展示されており、その土地の観光スポットにもなっています。

美術館の特徴を活かし、空間そのものがひとつの作品に

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「クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime」展 2019年 国立新美術館展示風景

ボルタンスキーの作風は非常にダイナミックで、その場所の特徴を活かして作った世界でひとつだけの作品(美術用語では「インスタレーション」と呼びます)であることも多いため、都心ではなかなか展示される機会がありませんでした。

だからこそ、「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」の開催は画期的なこと。ボルタンスキーの50年にも及ぶアーティスト生活を振り返る大回顧展で、初期作から最新作まで47点の作品が展示されています。

『モニュメント』(1986)と『皺くちゃのモニュメント』(1985)/「クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime」展 2019年 国立新美術館展示風景

展覧会場の『国立新美術館』は、展示スペースの天井がとても高いのが特徴。ボルタンスキーはその高さを活かして作品を展示しています。

今回の「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」展はすでに大阪の『国立国際美術館』でも開催されましたが、東京での展示は全く雰囲気が違うものになっているのだそう。『国立新美術館』の後は長崎に巡回するそうですが、そこでもまた異なる見え方になるとのこと。会場ごとに展示の仕方が変わるとは、おもしろいですね。

「クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime」展 2019年 国立新美術館展示風景
「クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime」展 2019年 国立新美術館展示風景

そして「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」展は、“展覧会をひとつの作品として見せる”こともコンセプト。作品の配置はボルタンスキー自身が考え、新旧の作品を組み合わせて作り上げた空間そのものが、ひとつの新しい作品のようにも見えます。

自分の感覚を頼りに「彷徨いながら鑑賞」してみて

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床に置かれたたくさんの電球が光る『黄昏』は、人生が死に向かって進んでいくことを暗示した作品。光っている電球は、会期中に1日3個ずつ消灯していき、会期終了時には真っ暗になる予定です。

『黄昏』/「クリスチャン・ボルタンスキー −Lifetime」展 2019年 国立新美術館展示風景

ボルタンスキーの作品は、五感すべてを刺激するものが多いこともポイント。会場内には心臓音や風鈴の音が常に響き渡り、ときおり懐かしく感じる藁(わら)の匂いも漂ってきます。

さらに、会場にはキャプションが一切置かれず、入場時に渡される作品名と配置図が記載されたマップだけが頼り。視覚情報以外にも音や匂いなどいろいろなものが混ざり合う混沌とした空間は、現代美術を見慣れていない人には戸惑いも多いかも。

「どうやって観たらいいのか分からない」と迷ってしまったら、入り口から出口直前まで感覚のおもむくままに彷徨いながら観てみることをオススメします。
「自分は、この空間のどこに混乱しているのかな?」「何に戸惑っているのかな?」「一番心地いいと思ったのは、どの作品でどの場所かな?」と自問自答しながら観ていくうちに、今まで知らなかった自分の感覚や意識に気づくことができるかもしれませんよ。
作品の美しさや雰囲気を楽しみながら、その奥にある何かを感じとってみてください。

 

7月〜8月の金曜日は、開館時間が21時まで延長される「クリスチャン・ボルタンスキー ―Lifetime」展。週末の始まりに、ふらりと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

【展覧会情報】

クリスチャン・ボルタンスキー ―Lifetime

会場:『国立新美術館』企画展示室2E

東京都港区六本木7-22-2

会期:2019年6月12日(水)~9月2日(月)

開館時間:10:00〜18:00/7・8月の金曜・土曜は21:00まで(最終入館は閉館の30分前まで)

休室日:火曜

最寄り駅:東京メトロ千代田線「乃木坂駅」改札6出口直結、東京メトロ日比谷線「六本木駅」4a番出口より徒歩5分、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」7出口より徒歩4分

問い合わせ:03−5777−8600(ハローダイヤル)

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