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子供の才能を伸ばす場に 大学講座の新たな可能性

公開講座はだれでも申し込め、受講できる講座である。そのため、その分野の門外漢であっても理解してもらえるようにわかりやすく工夫されている。そこに注目しはじめたのが、小中学生を抱える親たちだ。

中学生になったら世界史の大学講座に行かせたい

親子で参加者が楽しそうにレッスンに励んでいる様子を、しんしんと寒い体育館の隅でダウンコートにひざ掛け持参で熱心に見守っている一団。教室に参加している小学生の父兄たちだ。

横浜の自宅から八王子にある中央大学多摩キャンパスまで、フェンシング講座に通う小学6年生の息子に付き添って毎回車で送り迎えをしているというYさんは、一見スポーツとは無縁のようなエレガントな雰囲気ながら、なんと合気道のキャリア20数年というアラフィフの女性武道家。

「息子にも武道をやってほしくて、小さいころから合気道に加え、小学1年から5年生いっぱいまで剣道に通わせていたんですけど、突然、フェンシングがやりたいっていい出してびっくり。世界史が大好きなので、中世の騎士の世界に憧れたみたいですね。

インターネットで探してやっとこちらの教室を見つけ、昨年の秋期にはじめて参加したんです。講師の冨田先生は、オリンピックにも参加した経験をもつ一流の選手で、指導はすばらしく、期待どおり子どももとても楽しんでます。

フェンシングは礼儀を重んじながら、いろいろな点で自由な雰囲気も魅力です。毎回送迎で付き添うのは確かに大変ですけど、私もすっかりハマってます」

中央大学はジュニアのスポーツ教室に力を入れており、(オープンカレッジである)クレセントアカデミー事務局の話では、ジュニア野球教室は、なんと電話受付開始3分で埋まるほどの人気だ。

今、小中学生を抱える親たちが、子どもたちに受けさせたいと考える講座は、定番のスポーツ講座だけではない、幅広く教養分野まで及んできているのだ。

「じつは世界史が大好きな息子のために、中学生になったら、土日にやっている大学の世界史の公開講座に通わせたいと思っているんです。私もいくつかの公開講座に行ってみましたが、どれも丁寧に説明してくれるし、中学生なら十分理解できると思うんですよ」とYさん。

たしかに、大学の公開講座は歴史だろうと、科学だろうと、まったくその分野の専門知識を持っていない人でも理解できるようになっている。テレビの歴史情報番組や歴史バラエティーなどを楽しんでいる歴史少年なら十分に理解できるし、ますます好奇心をかき立てられることだろう。

また、親も、専門知識をもつ大学の先生の授業を受けさせたいと考えている。とくに今、小中学生を抱える親世代の多くが気になっている分野が、〈プログラミング〉である。

ついに登場! マンツーマンのプログラミング講座も

本サイト(「まななび」)では、東京理科大学の小中学生向けのプログラミング講座を過去に紹介している。その講座に小学生の子どもを連れて参加していたお父さんは、次のように語っていた。

「2020年から小学校でプログラミング教育が始まるし、なんといってもこれからはITで飯を食っていく時代だから、プログラミング講座をネットで探しまくりました。なかなか見つからなくて、やっと東京理科大学野田キャンパス(千葉県野田市)でパンフを見て、すぐ申し込んだんです。ただ、場所を確認しないで申し込んでしまって・・・。自宅近くの野田キャンパスだとばかり思っていたら、神楽坂(東京都新宿区)だったので通うのが大変です。でも、子供も喜んでいるし、がんばって通うつもりですけどね」

隣のテーブルでは、女子中学生に付き添った母親が、講師の一人の女子大生に聞いている。

「東京理科大学には女子学生は何%くらいいるんですか?」

あと数年後に確実にやってくる受験のための情報収集なのだろうか。たしかに、大学の雰囲気を今から知っておけば、大学選びにも役に立つに違いない。

こうした小中学生向けの講座にとくに力を入れているのが、芝浦工業大学だ。すでに、2016年度には、主に小学生を対象とするロボット講座や鉄道模型講座を次々と企画し、毎回抽選になるほどの人気を集めている。

さらに今年、2017年度からは、附属中学・高校のプログラミングクラブ所属の中高生が、小学生にマンツーマンで教えるプログラミング講座が開講する。小学生にとって、ちょっと年かさのお兄さんたちがマンツーマンで教える講座は、ほかにない。小学生を抱える親にとっては見逃せない講座となるだろう。

この4月、附属中学・高校も、今までの「芝浦工業大学中学高等学校」から「芝浦工業大学附属中学高等学校」へと名称変更するとともに、場所も今の板橋から、大学のある豊洲へと移転する。

子どもに早いうちからレベルの高い教育を与えたい、子どもの興味や可能性をできるだけ広げてやりたい親にとっては、ますますオプションが広がってくる。

この【まなナビ】スタッフの一人の62才になる母上は、この春から論語の公開講座に通い始める。6歳になる孫に、論語を教えたいから、というのがその理由だ。学んだことを伝えたい。これも学びの本質のひとつだろう。

(初出 まななび  2017/05/05)

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