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昔話や名作の絵本を嫌がる子…このままで大丈夫?【絵本ナビ編集長の読み聞かせ相談】♯4

「ねえ、この絵本読んで!」子どもの方から催促してくれるのはすごく嬉しい。でも、いつも子どもが好きな絵本ばかりでいいのかな……?

この連載では、『絵本ナビ』編集長の磯崎園子が、月に1テーマずつ、読み聞かせの悩みについておすすめの絵本と共に回答していきます。今回のテーマは「昔話や名作の絵本を読みたがらない子ども」についてです。

昔話を読みたがらない子ども…これでいいの?

Q1:目新しい、かわいらしい、目を引く絵本が増えているせいか、昔話やアンデルセンなど、王道と言われるものにあまり興味がありません(37歳・主婦)

A1:ストーリーを楽しみたい時は、読み聞かせの方法をちょっと変えてみるのも効果的です。

確かに本屋さんに並んでいる絵本を見ていると、とても可愛い絵のものや、見た事のないようなユニークな内容のものがずらりと並んでいて、大人の私でも思わず手に取ってしまいます。新しい絵本もどんどん登場して、魅力的なものも多いですよね。特に今の子ども達は、目から入ってくる情報に敏感になっていて、可愛い絵や強い絵に反応してしまうことが多いのでしょう。

もちろん、そういう選び方も大きな楽しみ方のひとつですよね。それらと比べると、昔話や民話などの絵本の表紙は少し地味に感じるかもしれません。

だからこそ「いかに興味を持ってもらうのか」がポイントです。

王道と言われるような昔話や名作の大きな魅力はやっぱりストーリー。その展開が面白いからこそ、ずっと語り継がれてきているのです。そこで、思い切って絵本以外で読み聞かせをしてみるのはどうでしょう。少しでも興味を持った物語(例えば、ももたろうやかぐやひめなど)があれば、「むかーしむかーし」と口頭で語ってあげるのです。お風呂に入りながらでもいいですし、寝る前の絵本時間のはじまりでも、おでかけ中だっていいのです。絵の少ない読み物タイプの本を使ってもいいですよね。

一度に話さずに、少しずつ語りながら「続きは明日ね」と言ってみる。そうすると、続きが気になって仕方がなくなってくれるはず!  そうやって続けているうちに、お話でも絵本でも、どちらでも聞いてくれるようになるのではないでしょうか。色々な方法を試してみてくださいね。

Q2:小1の子ども。マンガみたいな本を「読んで!」と持ってきた時に、どう読んでいいものか悩みます(49歳・その他)

A2:セリフの多い本の読み聞かせは、子どもに手伝ってもらって!

子どもって、思いもよらない本を持ってきて「読んで」って言いますよね。どんな形の本でも、ママやパパに「読んでもらうこと」が大事なのでしょう。例えそれが図鑑だっとしても、大人用の雑誌だったとしても。(読む方は困っちゃいますけどね)

私自身も、息子が小さい頃には、コマ割りが多かったり、吹き出しのセリフが沢山登場するマンガみたいな本を読んでとせがまれる事はよくありました。これ、そのまま読むのって本当に大変なんですよね。

そこで私が編み出したのは、「セリフの担当を分ける」という方法です。登場するキャラクターの何人かを子どもに手伝ってもらうのです。疲れている夜は、セリフの多い方を子どもに託したりして。絵本の読み聞かせとはちょっと違う、だけど親子で同じ“本”を楽しむ時間が味わえますよ。

子どもがまだ小さくて字が読めない場合は……ひたすら読んでください。そういう期間は短いはずなので、がんばって!

 

今月のおすすめ絵本

『ぐりとぐら』の人気コンビが贈る、明るく楽しい昔話集『ねこのおんがえし』

『ねこのおんがえし』(のら書店)作/中川 李枝子 絵/山脇 百合子

「絵本」という形でなくても、聞いて面白い、読んで気持ちいい、『ぐりとぐら』の人気コンビが贈るこんな本をおすすめします。明るく、楽しく、ゆかいな昔話を親しみやすい語り口と楽しさあふれる絵で。読みきかせにぴったりです。

とらときつね/桃太郎/さるのきも/山伏とたぬき/犬とねことうろこ玉/ねこのおんがえし/こんび太郎/かみそりぎつねなど12編収録

「ねえ、お話して!」と子どもにせがまれても、すらすらとお話が口から出てくる…何て事はなかなかできない。

でも昔話や民話などの多くが、「語り」伝えられてきたというその事実。これって凄い事だよなぁ、と思っていたら。

こんな興味深い本が出版されました。「読みたい 聞きたい」昔話を中川李枝子さんの文で書かれた、というのです。

どのような思いがあったのでしょう。(この本の後書きにその魅力的な言葉がたっぷりと語られています。)

昔話を取り上げるのはむしろ苦手だったと言う中川さん。でも、保育士時代に沢山見られたお話を聞く子ども達のきらきらした目や、幼い頃、レパートリーは少ないながらも、お父様が上機嫌に面白おかしく昔話を聞かせてもらった記憶に後押しをされた様ですね。

口に出して読んでみると、これが実に楽しいのです。誰もが知っている「桃太郎」を語っても、やっぱり中川さんらしく優しく愉快なお話に。(こんなに変わるものなのですね。)そこに同じくお父様の語りを聞いて育った山脇百合子さんの期待通りの挿絵が入ります。「語る」素晴らしさを熟知なさっているのだと、読みながら感動してしまうのです。

自分でお話を作って聞かせる、なんて離れ技は出来なくても、こんな本があると繰り返し読んであげたくなります。

子ども達が、絵本とまた違った反応を見せてくれるのも面白いですよ。繰り返し聞く事によって驚く程言い回しを覚えていたり、内容を理解しています。そんな彼らの想像力にも関心させられてしまうのです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

※絵本ナビより引用

子どもが成長すればするほど、読み聞かせの時間も様々に変化していくようです。大きくなっても絵本は読み続けてほしいけど、「読み聞かせは絵本じゃなきゃダメ」ということもありません。臨機応変に工夫を楽しんでみてくださいね。

 

【参考】

『ねこのおんがえし』- 絵本ナビ

テーマ「ちゃんと読みたい! 日本の昔話」- 絵本ナビ

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